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ハイカロリーダイエット

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掲載日:2017.09.19
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ハイカロリーダイエットという考えは、一体どこから出てきたのでしょうか?ここ5年ほどの間に、サプリメント会社のほとんどが、何らかの超ハイカロリーなドリンクミックス(飲料に溶かして飲むパウダー状の補給食品)を生産、販売しています。これらのサプリメントを使うにしても、普通の食物で取るにしても、ハイカロリーダイエットというのは、ほとんどの人にとって不向きであると言えるでしょう。たとえ、それが、低脂肪、高複合炭水化物から成っていたとしてもです。

しかし、ハイカロリーダイエットの恩恵を受ける人がいる、というのも事実です。例えば、ウェイトを使ったトレーニングを行っているティーンエージャーたち。彼らは、多くのカロリーを必要としています。なぜなら、一般に新陳代謝がとても速く、ウェイトトレーニングで多量のカロリーを消費するからです。また、筋量豊富な男性ビルダーにも、通常ハイカロリーダイエットが必要です。しかしながら、月刊ボディビルディングの読者の皆さんで、除脂肪体重が225ポンド(101kg)以上ある人はおそらくいないのではないかと思われます(僕がここで筋量豊富と言っているのはこれ以上ある人のことです)。そして、最後に、外胚葉の人、または生まれつき非常に痩せている人です。これらの人は代謝が異常に速いため、筋肉をつけるために大量のカロリーを必要とするのです。

■ハイカロリーダイエットのマイナス面
僕がハイカロリーダイエットを試した結果はこうでした。瞬く間に脂肪が蓄積し、そして怠惰な気分になったのです。つまり、良い結果を得るどころか、マイナス面の方が大きかったという訳です。そのマイナス面を三つ述べてみましょう。

まず、あまりにもたくさんカロリーを取ることは、それがどんな食品であれ、脂肪を蓄積させます。特に、過剰な炭水化物は脂肪の蓄積を促すのです。2つ目は、大食いは消化器系に負担をかけるので、消化に多くのエネルギーが必要となり、体全体が疲れ、消耗してしまいます。さらに、炭水化物には、鎮静効果のある脳内物質の分泌を促す働きがあるのです。

最良のダイエットというのは、脂肪を増やさず、いやむしろ減らしながら、筋肉を作るものです。最悪なのは、炭水化物やカロリーを取り過ぎて、脂肪蓄積作用のある酵素やホルモンをコンスタントに働かせてしまうダイエットです。僕がハイカロリーダイエットを試してみた時には、トレーニングが悪影響を受けました。多分、常に疲労を感じていたのと、余計な脂肪がついていたせいだと思います。脂肪の蓄積は、回復、筋発達にとってマイナスです。なぜなら、それは新陳代謝を鈍らせてしまうからです。つまり、筋肉をつけるのに最も適した代謝のスピードよりも、ずっと遅くなってしまうのです。

とは言っても、僕はハイカロリーダイエットを最初から否定してきた訳ではありません。実際、その方法をなんとか活かせないものかと考え、脂肪の蓄積を相殺するようなトレーニングを組んだこともありました。つまり、一日に2回、一週間に6回、そして、全ての部位が週に2回は回ってくるようにしたのです。しかし、このようなやり方でも、やはり脂肪は増えてしまいましたし、その一方、筋発達は微々たるものでした。ハイカロリーダイエットの信奉者たちは、僕にこうアドバイスしました。脂肪を燃焼させるためにエアロビクスをすればいいじゃないか、と。しかし、これもさほど効果はありませんでした。それに、ただ大量のカロリーを取るためだけに、なぜ有酸素運動をしなくてはならないのでしょう。脂肪を増やさないようにと、オフシーズンにも有酸素運動を取り入れてみたのですが、効果はなく、より疲れるようになっただけでした。

■ハイカロリーダイエット理論のからくりを暴く
ハイカロリーダイエットを広めたがっている者のほとんどが、こう主張します。

「これは非常に有効な方法だ。なぜなら、ハイカロリーを取ることにより、ボディビルダーが回復と成長に必要とするすべての栄養素が満たせるからだ」

そういうことなら、僕は食品の種類を増やした方がいいのではないかと思います(たいていのビルダーの食事は単調なものでしょう?)。そして、さらにマルチビタミンとミネラルを補ってみてはどうでしょうか。確かに、筋肉を増やすには十分なカロリーが必要ですが、それが過剰だったり、多すぎたりする場合、無駄であるだけでなく、結果的には脂肪となって蓄積されるのです(特に腹回りに)。

ちょっとトレーニングの事を考えてみてください。あなたは一回にどのくらいトレーニングしますか。一日に1時間のトレーニングで十分な筋発達が得られると、何度も雑誌で読んだのではありませんか。ミスター・オリンピアであるドリアン・イエーツなど、たったの30分です。それなのに、なぜ一日に5000キロカロリーから10000キロカロリーも取らなければならないのでしょうか。以前、ドリアン・イエーツに、ウェイトアップのために最大どのくらいまでカロリーを増やしたことがあるか、と尋ねたところ、約4000キロカロリーという答えが返ってきました。多く見積もっても、5000キロカロリー以上取ったことは、いまだかつてないそうです。なのに彼は、その時282ポンド(127kg)もありました。

ハイカロリーダイエット主義者たちが主張することが、もう一つあります。

「ハイカロリーダイエットは代謝を上げるので、減量に入った時が楽だ。それほどカロリーを下げなくても、カットが得られる」

さて、このからくりを暴くとしましょうか。第一に、代謝を上げると言っても、ある程度で、そんなに大きく変わりはしません。それに、この理論に従うならば、長期間にわたって、非常にゆっくりとカロリーを上げていった場合、肥満体になることなしに、一日10000キロカロリー取ることが理論上は可能になります。でも、実際は、そんなことはあり得ません。

第二に、普段大食いしている人、例えば、一日に5000キロカロリー取っている人が3500キロカロリーに減らした場合、確かに多くの脂肪を減らすことはできるでしょう。しかし、5000キロカロリー取ることにより、増えた体重のほとんどが脂肪だったら、これはほとんど意味がありません。超ハイカロリーダイエットによって、誤ってつけてしまった脂肪を削るために、貴重な時間を無駄に使うなんて、コンテストビルダーのする事ではありません。しかし、多くのボディビルダーが犯している過ちです。それに、今日のコンテストで必要とされているレベルのカットを出すには、いずれにしても、カロリーを下げざるを得ません。例えば、バルクアップのために5000キロカロリー取っていた人が、ハードに仕上げるためには、2000キロカロリーに落とさなくてはいけません。これは、もう飢餓状態です。普段3000キロカロリー取っていた者が1200キロカロリーに下げた場合にも同じことが言えます。

  • ■究極の筋肉を作り上げるためのボディビルハンドブック
    2013年6月20日第6版発行
    著者:クリス・アセート
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社

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