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第五十回 新サプリメント・トピックス
バランス

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[ 月刊ボディビルディング 2014年3月号 ]
掲載日:2017.09.05
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 ボディビルダーに限らずアスリートと呼ばれる人たちは、ある種規格外の肉体を目指している側面があるので、食事の面においても敢えてバランスの崩した状態を作ることがあります。

 脂質をほぼカットしてみたり、標準の何倍ものタンパク質を補給したり。必要な栄養素は何倍も増やし、不要と思われる栄養素は極端に絞っていきます。規格外の肉体を作るのですから、規格外の栄養摂取も当然と言えば当然であります。

 しかし、人の体としての機能は根本的に同じでありますから、オフの時期にはオンの偏りを補い是正する意味においても、適度にバランスに気を付けた栄養摂取を目指す必要が生まれてきます。ただ、減量の反動から一気にドカ食いを始めて、やがてそれが通常となってしまうパターンや、逆に来年の減量の負担を減らすために通年減量に近い状態を続ける人も少なくありません。

 そもそも体内で使われなかったアミノ酸は、まずアミノ基(NH2)が切り離されます。そして切り離されたアミノ基はアンモニア(NH3)へと変換していくのですが、アンモニアは体内において有害な物質ですので、すぐに肝臓で解毒して尿素へと変換されていきます。

 これは体内での当たり前の流れですが、この負荷が長期間続くことになると当然肝臓は疲れていきます。また尿素はスムースに排泄をしなくては尿酸の材料となってしまい、尿酸ナトリウムとなって炎症を起こす危険性があります。いわゆる痛風です。そうならないために、大量の水分の摂取が必要になります。プロテインやアミノ酸を大量に摂取する人は水分も大量に必要となる理由のひとつであります。

 また大量の水分を取って尿素をどんどんと排泄すると、水分と一緒にカルシウムも排泄されてしまいます。その結果としてカルシウムが不足するという事態が生じてくるわけです。

 多量のアミノ酸が分解されると、その際に血液が酸性に傾きます。それを中和するためにもカルシウムが必要となるため、カルシウムの貯蔵庫である骨や歯から血液中に流出するという状況になります。

 骨の組織からのカルシウムに関しては、比較的出入りがやりやすいため、流出後に再び流入という出入りが行われますが、高タンパク食を長期間にわたって続ける場合は流出が続いてしまうことになるというわけです。

 さらに個人的には肉好きで、サプリメント以外でのタンパク質は肉から摂取することが多いのですが、ここにも少し気を付けるべきポイントが隠されています。

 いわゆる動物性のタンパク質をあまり摂取していない発展途上国の人たちは、野菜など草食からのカルシウムが中心であるはずですが、実際は丈夫な骨をしています。

 一方で私たち日本含め先進国の人たちは骨粗鬆症に悩んでいるという、少し不思議な現象が起きています。実はこれは肉や加工食品からタンパク質を多量に摂取しているという理由でもあるのです。

 血液中では様々な栄養素がバランスをとっています。血液中のカルシウムはリンとバランスをとっています。約1:1の比率で存在しているのが通常の状態です。リンが増えすぎてしまうと、リンを排泄するのではなく、このバランスを維持しようとして血液中のカルシウムを増やすように作用します。この場合も同様に骨などからカルシウムが流出することになるのですが、肉や加工食品を主体にしている場合は、常にリンが優位な状態に立つため、いつまで経ってもカルシウムの借りを骨に返すことができなくなるというわけです。

 どんどんと肉類を食べて、タンパク質を補充して、肉体が強くなっているはずのものが、一方でバランスを崩すことでカルシウム不足に陥る危険性があるという皮肉なことにもなりかねません。

 またアミノ酸も血液中でのバランスが大切です。肝機能が低下した際にはアミノ酸の代謝が阻害されるので、結果として血中のアミノ酸の量が増えていきます。とくに芳香族アミノ酸とよばれるトリプトファン、フェニルアラニン、チロシンの増加が激しく、筋肉で代謝されるBCAAとのバランスが崩れることになります。これをフィシャー比と呼んでいますが、このフィッシャー比が崩れるとアミノ酸のインバランスという状態に陥り、血中のタンパク質であるアルブミンやグリコーゲンの合成が低下していきます。いわゆる栄養が足りない状態です。また脳内へのアミノ酸の取り込みとして芳香族アミノ酸が増加するため、脳内のアミノ酸バランスにも変化が生まれてしまいます。

 規格外を目指すためには規格外の栄養補給が必要であることは一理ありますが、オンとオフを上手に使い分けて、バランスを是正する期間を作る必要があります。

 今回は、敢えてサプリメント含め過剰摂取や偏りへの警鐘を鳴らしましたが、縮こまる必要はありません。どんどんと運動強度をあげて、それに見合った各種栄養素を補ってください。

 ただし、オフにはこういったバランスを是正しておく役割があることも認識しておくといいでしょう。


江崎グリコ株式会社スポーツフーズ営業部
桑原弘樹
[ 月刊ボディビルディング 2014年3月号 ]

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