フィジーク・オンライン

炭水化物とは何か

この記事をシェアする

0
掲載日:2018.03.02
記事画像1

※はじめに※

「バランスの良い食事を心がけましょう」。医師も栄養士も、この言葉を金科玉条のように振り回します。でも、バランスが良いとは、具体的にどんな食事を指すのでしょうか?
犬や猫はペットフードばかり食べているのに、昔と比べて非常に長生きするようになりました。長寿で知られるクジラやサメも、口に入れるのはいつも同じものばかりです。さまざまな種類の食物を食べる=バランスが良い、と考える人もいますが、ヒトのように多彩な種類の食材を食べる生き物は、他に見当たりません。

また「バランス」を本来の意味でとらえるなら、白米100グラムと肉100グラム、野菜を100グラム、水を100グラム・・・となるはずです。しかしこれがバランスの良い食事だとは、誰も思わないでしょう。
重要なのはバランスではなく、栄養素それぞれの「絶対量」です。「バランス」そのものに意味はありません。では、私たちの健康レベルを高めたり、パフォーマンスを高めたりするのに必要な栄養素それぞれの絶対量はどれくらいなのでしょうか。その問いに対する解を求めるために必要な情報を、この書で提供していきたいと思います。

この書は2016年10月から2017年2月にかけて刊行された電子書籍「山本義徳業績集1~7」を上下巻にまとめ、加筆修正したものです。五大栄養素とスカベンジャーについて最新の知識を得たいアスリートやトレーナーのために。そして、筆者に生涯学習の扉を開けてくれた故三石巌氏のために。

2017年 9月
山本義徳

■第一章:炭水化物とはなにか

記事画像2
炭水化物とは「炭水化物は肥るから、控えめにしないとね~」、「運動する人は吸収の早い炭水化物、たとえばバナナなんかを食べるとイイよ」。こんな感じで、少し前まであまり口に出されることのなかった「炭水化物」という言葉。それが今では普通に使われるようになってきました。
また「糖質制限」もブームになってきました。過激なところでは、「糖質は毒である」と主張する医者まで出てきています。一方で「朝バナナダイエット」とか、「おにぎりダイエット」など、炭水化物を摂取してダイエットに役立てようとする流派も存在します。また数多くの管理栄養士は、「糖質をしっかり摂取しましょう!」と言っています。
いったいどちらが正しいのか。また「炭水化物」と「糖質」の違いとはなにか。炭水化物について詳しく学び、正しい知識を身につけることができれば、怪しいダイエットにダマされることもありません。では、しっかりと勉強していきましょう!

○炭水化物ってなに?

「炭素と水を含む化合物」。これを略すと、「炭水化物」になります。なんだか難しい専門用語みたいですが、実はコレ、たんに「糖分」のことなのです。昔は「含水炭素」とも呼ばれていました。お菓子や果物が甘いのは、糖分である炭水化物が入っているから。ゴハンなども、口の中でずっと噛んでいると甘くなってきますが、これは唾液でご飯のデンプンが分解されて、甘みのあるブドウ糖になるからなのです。ゴハンだけでなく、パンやパスタ、うどんなど「主食」となるものは、殆どが炭水化物をいっぱい含んでいると思ってください。

では、なぜ主食に炭水化物が多く入っているのでしょうか。それは、「炭水化物は良質のエネルギー源となる」からなのです。タンパク質や脂肪もエネルギーとなることができますが、とりわけ炭水化物は消化吸収が良く、胃腸に対する刺激も少ない。そして一時的に大量に摂取して筋肉や肝臓に溜め込むこともできる。さらには余計な老廃物を出すこともないというクリーンなエネルギー源なのです。

なお、「食物繊維」も炭水化物に含まれます。一般的には消化吸収されるものを「栄養素」と呼びますが、食物繊維は消化吸収されません。ですから食物繊維は本来、栄養素の仲間には入らないのです。しかし食物繊維には後述の通り、様々な効用があります。そこで、吸収される「糖分(糖質)」と、吸収されない「食物繊維」を合わせて、「炭水化物」と呼ぶことになっています。

食物繊維については別に解説しますので、この章では「糖質」に絞って話を進めていくことにしましょう。


続きは近日公開!
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


[ アスリートのための最新栄養学(上) ]

Recommend