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食物繊維の働き ~断食の真実~

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掲載日:2018.06.28
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食物繊維の働き

食物繊維の種類

食物繊維には大きく分けて二つの種類があります。
一つは水に溶ける繊維で、これを「水溶性食物繊維」と言います。これは消化器の中でゲル状になって、食べ物の移動を遅くしてくれます。具体的には果物や野菜類に含まれるペクチン、こんにゃくや山芋に含まれるグルコマンナンなど。他に昆布やワカメ、寒天などにも含まれます。

水溶性食物繊維には健康面でのメリットもあって、コレステロールを減らしたり、動脈硬化を予防したりする効果があります。またプロテインなどに溶かし、寝る前に飲むことによってプロテインをゆっくり消化吸収させることもできます。


二つ目は水に溶けない繊維で、これを「不溶性食物繊維」と言います。こちらは水には溶けないものの、水を吸って数倍~数十倍にも膨れ上がり、満腹感をもたらしたり、腸を刺激して便秘を予防してくれたりします。具体的には野菜や豆類、穀類(ふすま)に含まれるセルロースやヘミセルロース、亜麻やココアに含まれるリグニンなどが代表的なものです。ただしこちらは必要な脂肪やミネラルの吸収を邪魔してしまう作用もあるため、多く摂れば良いというものでもありません。また水分摂取が少ないと、かえって便秘になってしまうこともあります。

なおダイエット用サプリとして良くみかける「オオバコ」は不溶性と水溶性両方の繊維をバランス良く含みますので、特にダイエット中などに空腹感を紛らわせるのにも有用なサプリメントとなるでしょう。
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食物繊維と腸内環境

腸内細菌と断食の関係は

「腸をキレイにする」といった名目で、「デトックス」とか「断食療法」などが良く宣伝されています。これらの宣伝で常に強調されることとして、「宿便を出すだけで健康になり、体重が減る」というものがあります。確かに断食すると、黒い便が出てきたあと、しばらく下痢が続き、そのときは体調が悪いのですが、さらに時間が経つとだんだん楽になってきて、健康なカラダを取り戻すことができる・・・なんてことがあるようです。

しかし何百件もの腸の手術を経験した医師に言わせれば、「宿便などは存在しない」とのこと。最初に出てくる黒い便は、実は腸内細菌の死核です。栄養が入ってこなくなったことにより腸のエネルギーが枯渇し、腸内細菌は死滅してしまうのです。宿便などではありません。
なお腸のエネルギーとは、酪酸や酢酸などの短鎖脂肪酸(※次回後述)を作り出すことにも使われます。これらの短鎖脂肪酸は、エネルギー(ATP)の材料として利用されます。

断食により腸のエネルギーが足りなくなると、腸で水分を吸収することもできなくなります。それが断食で下痢をする理由です。デトックスされているわけではありません。この時点では体内のエネルギーが完全に枯渇してしまい、体調も優れません。しかし徐々にケトーシスとなり、ケトン体をエネルギーとしで使うことができるようになると、体調が改善されてきて、なんだか健康になってきたような気がするという仕組み。

これが断食やデトックスの真実です。食事をもとに戻し、ケトーシスでなくなれば、カラダの状態も元通りになるだけです。少々の脂肪と多くの筋肉が減ってしまい、しばらくしたらリバウンド。実際のところ、断食にはなんの意味もないのです。飽食により胃腸が疲れていたり、肥満していたりする人は、断食によって一時的に調子が良くなることもありえますが・・・。
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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