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ホエイプロテインのメリット ~筋肥大も減量も~

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掲載日:2018.11.22
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さて、ホエイプロテインのメリットとしては、次のようなものがあり
ます。
・筋肉を増やす
・免疫を高める
・ダイエットに役立つ

では一つずつみていきましょう。

ホエイプロテインは筋肉を増やす

ホエイプロテインにはBCAAが多く、またインスリンの反応を強く引き出すためアナボリック作用が強くなります。
10週間に渡ってトレーニングしながらWPIあるいはカゼインを摂取したところ、WPI群のほうが除脂肪体重と筋力において大きな改善をみせていました。(※25)

またトレーニング前にホエイプロテインを飲むことにより、筋肉を分解する作用のあるコルチゾルを減らすことができ、同時にテストステロンのレベルを高くすることができています。大豆プロテインではこの作用は得られませんでした。(※26)

また高齢者を対象に135日間に渡ってホエイまたはカゼインを摂取しながらトレーニングしてもらったところ、やはりホエイのほうが筋力向上効果を示しています。(※27)
WPHとカゼイン、大豆プロテインを比較した研究でも、やはりWPHが最大の筋タンパク合成効果を示しています。(※28)

ホエイプロテインは免疫を高める

ホエイプロテインには免疫グロブリンやラクトフェリンなど、免疫を向上させてくれるものが多く含まれていると書きましたが、特に大きく作用するのがホエイに多く含まれるアミノ酸である「システイン」です。

グルタミン酸とグリシン、そしてシステインからなるトリペプチドの「グルタチオン」という物質があります。
グルタチオンはチオール基(2.1:タンパク質の「構造」の項を参照)を用いて活性酸素を除去したり、重金属を排出したり、過酸化物を消去したりします。

さらにマクロファージなどの免疫細胞にグルタチオンが十分存在すると、免疫力が高まることがわかっています。(※29)
グルタミン酸やグリシンは体内に大量にありますが、メチオニンからつくられるシステインは不足しがちです。
そのためシステインを多く含むホエイプロテインを飲むことによって、免疫が高まるのです。(※23,※24)

ホエイプロテインはダイエットにも役立つ

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30人の健康な男性を使って行われた研究で、6週間に渡って「エクササイズ+ホエイ」と「エクササイズのみ」、「なにもしない」グループに分けて調べました。

その結果「エクササイズ+ホエイ」のグループは抗酸化能力が高まり、グルタチオンのレベルが増え、コレステロール値が改善されていました。ホエイの摂取量は一日に22gです。

この研究はエクササイズやホエイの免疫に対する効果を調べるのが目的だったのですが、実はホエイを摂取したグループは実験終了後に8.7%の体脂肪が減少していることが確認されたのです。エクササイズのみのグループは7.9%の減少です。(※30)

またBMIが平均31、平均年齢51歳の男女90人を対象とした研究で、エクササイズは全く行わず、「ホエイ摂取群」と「ソイ摂取群」、「炭水化物摂取群」とに分け、食事も好きに食べさせました。

その結果、ホエイ摂取群は炭水化物摂取群に比べ、体重と体脂肪、ウエストサイズが顕著に減り、その減少率はソイ摂取群よりも大きかったのです。(※31)
なお空腹感のシグナルを送るグレリンのレベルが、ホエイでは小さかったことが報告されています。

さらにEPOCもホエイを摂取することで増やすことができます。EPOCはExcess Post Exercise Oxygen Consumptionの頭文字を取ったもので、運動後も疲労物質の除去やグリコーゲンの回復、筋タンパクの合成などにエネルギーが使われることで、消費カロリーが増加することを指します。

トレーニングの20分前に18gのホエイプロテインを摂取してEPOCを調べたところ、比較対象群が3.5%の代謝向上だったのに対し、ホエイ群は8.5%の代謝向上が認められました。(※32)なお、両群において一日のタンパク摂取量は変わりません。つまりトレーニング前にホエイを飲むというタイミングが大事だということです。


またホエイプロテインを飲むことによりCCKやGLP-1、PPYなどの満腹を示す指標が高まることが示され、空腹感を和らげることも分かっています。(※33,※34)

5~40gのホエイプロテインを300mlの水に溶かし、食事の30分前に飲むようにしたところ、食べる量が明らかに減り、食後の血糖値上昇やインスリン反応を減らすことができたという報告もあります。(※35)


※23 Effect of whey protein isolate on intracellular glutathione and oxidant-induced cell death in human prostate epithelial cells. Toxicol In Vitro. 2003 Feb;17(1):27-33.

※24 The influence of dietary whey protein on tissue glutathione and the diseases of aging. Clin Invest Med. 1989 Dec;12(6):343-9.

※25 The effect of whey isolate and resistance training on strength, body composition, and plasma glutamine. Int J Sport Nutr Exerc Metab. 2006 Oct;16(5):494-509.


※26 The effects of soy and whey protein supplementation on acute hormonal reponses to resistance exercise in men. J Am Coll Nutr. 2013;32(1):66-74. doi: 10.1080/07315724.2013.770648.

※27 Effect of cysteine-rich whey protein (immunocal®) supplementation in combination with resistance training on muscle strength and lean body mass in non-frail elderly subjects: a randomized, double-blind controlled study. J Nutr Health Aging. 2015 May;19(5):531-6. doi: 10.1007/s12603-015-0442-y.


※28 Ingestion of whey hydrolysate, casein, or soy protein isolate: effects on mixed muscle protein synthesis at rest and following resistance exercise in young men. J Appl Physiol (1985). 2009 Sep;107(3):987-92. doi: 10.1152/japplphysiol.00076.2009. Epub 2009 Jul 9.

※29 Role of glutathione in macrophage activation: effect of cellular glutathione depletion on nitrite production and leishmanicidal activity. Cell Immunol. 1995 Aug;164(1):73-80.

※30 Changes in antioxidant status and cardiovascular risk factors of overweight young men after six weeks supplementation of whey protein isolate and resistance training. Appetite. 2012 Dec;59(3):673-8. doi: 10.1016/j.appet.2012.08.005. Epub 2012 Aug 10.

※31 Whey Protein but Not Soy Protein Supplementation Alters Body Weight and Composition in Free-Living Overweight and Obese Adults1 J Nutr. 2011 Aug; 141(8): 1489–1494.

※32 Timing protein intake increases energy expenditure 24 h after resistance training. Med Sci Sports Exerc. 2010 May;42(5):998-1003. doi: 10.1249/MSS.Ob013e3181c12976.

※33 Dietary whey protein influences plasma satiety-related hormones and plasma amino acids in normal weight adult women. Eur J Clin Nutr. 2015 Feb;69(2):179-86. doi: 10.1038/ejcn.2014.266. Epub 2015 Jan 7.

※34 Mechanism of action of pre-meal consumption of whey protein on glycemic control in young adults. J Nutr Biochem. 2014 Jan;25(1):36-43. doi: 10.1016/j.jnutbio.2013.08.012. Epub 2013 Oct 5.

※35 Effect of premeal consumption of whey protein and its hydrolysate on food intake and postmeal glycemia and insulin responses in young adults. Am J Clin Nutr. 2010 Apr;91(4):966-75. doi: 10.3945/ajcn.2009.28406. Epub 2010 Feb 17.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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