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イソフラボンについて ~大豆の栄養と効果的な摂取~

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掲載日:2018.12.06
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イソフラボンについては厚生労働省のQ&Aに詳しく書かれています。https://www.mhlw.go.jp/houdou/2006/02/h0202-1a.html

要約すると、一日に大豆イソフラボン(アグリコン)としてトータル75mgまでなら問題なし。サプリメントとして食事に追加して摂取する場合は、一日に30mgまでなら大丈夫ということです。

処理により栄養価が大きき変わる

ある資料によればSPCの大豆プロテインに含まれるイソフラボンは水で処理した場合、100g中102mgです。対してアルコールで処理した場合は100g中12mgに過ぎません。(※42)

SPIの場合はさらに少なくなるようです。
ただしメーカーによってはSPIであってもイソフラボンが多く含まれるような製造方法にしているところもあります。(ピューリタンプライドなど)
心配でしたら大豆プロテインを飲む場合、どちらの処理がされているか、またどれくらいのイソフラボンが含まれているか、メーカーに問い合わせてみると良いでしょう。

ゴイトロゲンについて

これはヨウ素(ヨード)の取り込みを阻害して甲状腺の肥大を起こすものの総称で、非常に多くの種類がありますが、大豆にもこれが含まれます。
しかしヨウ素は海水中に多く存在し、昆布やワカメ、ヒジキなどに大量に含まれます。日本人はむしろヨウ素の摂取量が過剰なため(厚生労働省:日本人の食事摂取基準)、ゴイトロゲンが問題になることはないと思ってよいでしょう。もちろん甲状腺に問題がある人は話が別です。
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フィチン酸について

フィチン酸はリンの貯蔵形態であり、キレート作用が強いため多くのミネラルと結合し、体外に排出する作用があります。
フィチン酸により大豆プロテインが鉄の吸収を妨げるという報告(※43,※44)は、確かにあります。しかしフィチン酸は次の表の通り、大豆プロテインだけでなく多くの食物に広範に含まれます。
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オートミールやパン、トウモロコシなどに含まれる量を考えると、それほど大豆プロテインからの摂取を気にしなくても良いようにも思えます。

むしろ中年以降の男性の場合、体内の「鉄」が多くなると心臓血管系疾患のリスクが高くなることや、肉や魚、卵には大量の鉄が含まれることから、これらを多く食べる人は逆に大豆プロテインを摂取してフィチン酸をとり入れることが、心臓血管系リスクの低下にも結び付くのではないかという推論もなりたちます。

大豆の問題点

他にも大豆には問題があります。それは「トリプシンインヒビター」です。
トリプシンはタンパク消化酵素、インヒビターというのは邪魔するという意味で、大豆にはタンパク消化酵素を邪魔する物質が含まれているのです。

余談ですが、植物にはこのように「動物に食べられてしまわないように」代謝を阻害する物質が含まれていて、ジャガイモの芽にあるソラニンやホウレンソウに含まれるシュウ酸などが代表的なものです。
人参に含まれるアスコルビナーゼはビタミンCを壊し、ワラビやゼンマイなどの山菜類にはビタミンB1を壊すアノイリナーゼが含まれます。

大豆のトリプシンインヒビターもその一つで、多くの動物は生の大豆を食べると下痢してしまいます。
ただしこれは加熱で壊されます。大豆プロテインを製造するときには加熱されますので大丈夫です。
なお大豆製品のトリプシンインヒビター残存率は、木綿豆腐で2.5%、絹ごし豆腐で4.3%、豆乳で13%、納豆で0.7%だそうです。(※45)

豆乳でプロテインを割る人もいますが、これは避けたほうが良いかもしれません。また「きな粉」はタンパク含有量が多いということでプロテインの代わりにきな粉を、と考える人がたまにいますが、これも、避けたほうがいいでしょう。

卵も万能ではない ~加熱せよ~

なお卵にもトリプシンインヒビターとしてタンパク分解酵素を阻害する物質(オボムコイド)が含まれます。
日本の栄養学の開祖、小柳達男氏の実験によれば、生の卵白を3個食べたとしても、1.3個分は吸収されずに排泄されてしまうとのことです。

加熱すればオボムコイドは破壊されるので大丈夫ですが、生卵は他にもアビジンやサルモネラ、アレルゲンなどの問題が含まれるため、食べるときは加熱するようにしたいものです。

なおホエイにアルギニンが少なく、大豆にアルギニンが多いということで、この二つのプロテインをミックスするという方法も悪くありません。
消化吸収速度が問題にならない就寝前などは、この二つを混ぜて飲むのもいいでしょう。

ちなみにこの考え方で筆者が開発したプロテインもあり、「コンプリートWS」という名前で商品化されています。
またWPIにシトルリンやベタインを配合した最高級プロテインとして「ホエイクエストアルテマ」という商品も開発しました。ご興味のある方は検索してみてください。
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WHEYQUEST ULTIMA

42:USDA-Iowa State University Isoflavones Database. United States Department of Agriculture

43:Soy protein, phytate, and iron absorption in humans. Am J Clin Nutr. 1992 Sep;56(3):573-8.

44:Inhibitory effect of a soybean-protein--related moiety on iron absorption in humans. Am J Clin Nutr. 1994 Oct;60(4):567-72.

45:Trypsin inhibitor activity in commercial soybean products in Japan. J Nutr Sci Vitaminol (Tokyo). 1997 Oct;43(5):575-80.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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