酵素とはいったい?
掲載日:2019.01.17
最後に「酵素」について簡単に紹介しておきましょう。詳しくはビタミンの章で解説します。
「一遺伝子一酵素説」という仮説がありましたが、それは一つの遺伝子はそれぞれ一つの酵素を指定するものだとする考え方です。
実際には例外が多いため完全に正しいとは言えないのですが、遺伝子と酵素の対応関係を明らかにし、分子生物学の進歩に大きく役立った説です。
基本的に一つの遺伝子は一つの酵素の生成に関与しており、私たちの生命の実体はDNAによる酵素のコードであるということもできます。では、酵素とはなんなのでしょうか?
角砂糖にライターの火を近づけても、燃えません。しかしタバコの灰を角砂糖にまぶすと、簡単に燃えます。タバコの灰が反応を助けるわけですが、このように化学反応を助けるものを「触媒」と呼びます。酵素は体内において、反応を助ける触媒となるのです。
牛肉を水に漬けたり、100°Cの熱を加えたりしても、分解してアミノ酸になることはありません。
しかし消化酵素を使うと、牛肉は体温で簡単に分解されてアミノ酸になります。つまり酵素は「反応速度が早く」、「高温を必要とせずに」反応を起こすことができるのです。
人間の体内には数千種類の酵素があると言われていますが、大きく次の6種類に分けることができます。
「一遺伝子一酵素説」という仮説がありましたが、それは一つの遺伝子はそれぞれ一つの酵素を指定するものだとする考え方です。
実際には例外が多いため完全に正しいとは言えないのですが、遺伝子と酵素の対応関係を明らかにし、分子生物学の進歩に大きく役立った説です。
基本的に一つの遺伝子は一つの酵素の生成に関与しており、私たちの生命の実体はDNAによる酵素のコードであるということもできます。では、酵素とはなんなのでしょうか?
角砂糖にライターの火を近づけても、燃えません。しかしタバコの灰を角砂糖にまぶすと、簡単に燃えます。タバコの灰が反応を助けるわけですが、このように化学反応を助けるものを「触媒」と呼びます。酵素は体内において、反応を助ける触媒となるのです。
牛肉を水に漬けたり、100°Cの熱を加えたりしても、分解してアミノ酸になることはありません。
しかし消化酵素を使うと、牛肉は体温で簡単に分解されてアミノ酸になります。つまり酵素は「反応速度が早く」、「高温を必要とせずに」反応を起こすことができるのです。
人間の体内には数千種類の酵素があると言われていますが、大きく次の6種類に分けることができます。
酵素の種類
1.Hydrolase(加水分解酵素)
タンパク質や炭水化物、脂肪を消化するときに作用する酵素。作用するときに水分子を与えるため、Hydro~という名前が付く。消化酵素もHydrolaseの一種。
2.Isomerase(異性体酵素)
ブドウ糖を果糖に変えるグルコースイソメラーゼなど、異性体(分」式は同じだが、原子の結合状態や立体配置が違うため、異なった性質を示す化合物)に変化させる働きをする酵素。
3.Ligase(合成酵素)
二つの異なる分子を結合させて別の分子を作ったり、結合している分子を切り離してそれぞれ別の分子に結合させたりする酵素。DNAリガーゼと言えば、二本のDNA鎖をつなぐ酵素である。
4.Lyase(付加脱離酵素)
二つの原子の間で化学基を引き離して(脱離反応)二重結合を作りだしたり、逆に二重結合に作用して化学基を付け加えたりする反応(付加反応)を引き起こす酵素。
5.Oxidoreductase(酸化還元酵素)
ある原子が、別の原子から電子を引き抜くことを可能にする酵素。つまり物質が酸化したり、逆に酸化物から酸素を奪ったりしてもとの物質に戻る(還元)作用のときに働く酵素。体内で活性酸素を除去する抗酸化酵素(グルタチオンペルオキシダーゼやカタラーゼなど)も、この一種。
6.Transferase(転移酵素)
ある化合物を別の化合物のところに運ぶ酵素。たとえば「アスパラギン酸アミノ基転移酵素」はグルタミン酸のアミノ基をオキサロ酢酸に転移し、アスパラギン酸のアミノ基を2-オキソグルタル酸に転移させる。そしてこの反応は逆方向にも起こる。それによって、「グルタミン酸とアスパラギン酸」⇒「オキサロ酢酸とaケトグルタル酸」という相互変換が可能になる。
タンパク質や炭水化物、脂肪を消化するときに作用する酵素。作用するときに水分子を与えるため、Hydro~という名前が付く。消化酵素もHydrolaseの一種。
2.Isomerase(異性体酵素)
ブドウ糖を果糖に変えるグルコースイソメラーゼなど、異性体(分」式は同じだが、原子の結合状態や立体配置が違うため、異なった性質を示す化合物)に変化させる働きをする酵素。
3.Ligase(合成酵素)
二つの異なる分子を結合させて別の分子を作ったり、結合している分子を切り離してそれぞれ別の分子に結合させたりする酵素。DNAリガーゼと言えば、二本のDNA鎖をつなぐ酵素である。
4.Lyase(付加脱離酵素)
二つの原子の間で化学基を引き離して(脱離反応)二重結合を作りだしたり、逆に二重結合に作用して化学基を付け加えたりする反応(付加反応)を引き起こす酵素。
5.Oxidoreductase(酸化還元酵素)
ある原子が、別の原子から電子を引き抜くことを可能にする酵素。つまり物質が酸化したり、逆に酸化物から酸素を奪ったりしてもとの物質に戻る(還元)作用のときに働く酵素。体内で活性酸素を除去する抗酸化酵素(グルタチオンペルオキシダーゼやカタラーゼなど)も、この一種。
6.Transferase(転移酵素)
ある化合物を別の化合物のところに運ぶ酵素。たとえば「アスパラギン酸アミノ基転移酵素」はグルタミン酸のアミノ基をオキサロ酢酸に転移し、アスパラギン酸のアミノ基を2-オキソグルタル酸に転移させる。そしてこの反応は逆方向にも起こる。それによって、「グルタミン酸とアスパラギン酸」⇒「オキサロ酢酸とaケトグルタル酸」という相互変換が可能になる。
鍵と鍵穴の関係
さて、酵素のこういった働きは、どのようにして起こるのでしょうか。簡単に流れを追ってみると、次のようになります。
酵素がある物質(基質)に結合する→酵素-基質複合体ができる→生成物ができて、酵素が離れる
そして酵素が基質に結合するときは、酵素にある「鍵穴」に、基質という「鍵」が入り込むといったイメージになります。つまり、どんな酵素と、どんな基質が結合できるかは、最初から決められているのです。それは当然のことで、そこら中の基質と酵素が結合してしまっては、代謝がメチャクチャになってしまいます。
なお酵素が働くときには、「至適温度」というものがあり、一般に「体温よりやや高い」くらいとなります。ですからウォームアップによってカラダを温めることは、酵素の働きをスムーズにして代謝が上手くいくようにするという意味もあります。
また「至適pH」もあり、たとえば乳酸が溜まって筋肉のpHが下がったりすると、酵素が上手く働かなくなって、筋肉が疲労するというわけです。
「酵素は一生のうちで作られる量が決まっている」とか、「食事から生きた酵素をとる必要がある」とか「死んだ食品には酵素が含まれていない」などといった大ウソを言う人がいます。ここまで読んでくれた読者には一目瞭然ですが、どこがおかしいのかを説明していきましょう。
DNAとはなにか。これは「タンパク質の設計図」です。アミノ酸を組み合わせて、ホルモンや筋肉、コラーゲン、血中タンパクなどさまざまなタンパク質をつくっていきます。そして「酵素」も、DNAによってつくられるタンパク質です。
つまりDNAが存在している限り、つまり生きている限り、酵素はつくられ続けるのです。
一生のうちでつくられる決まった量など存在しません。
ただし主酵素の材料となるタンパク質や補酵素の材料となるビタミンやミネラル類をしっかり摂取しておくことが前提です。
そもそも酵素は自前でつくられるものですので、外来の酵素がそのまま作用したとしても、間違いなく代謝を攪乱するだけでしょう。
また酵素はタンパク質であり、酸や高温によって変性してしまいます。そして「消化酵素」によってアミノ酸あるいは細かいペプチドにまで分解されてしまいます。だから「生きた酵素食品」なるものを食べたとしても、胃酸で変性・分解してしまい、小腸ではアミノ酸かペプチドにまでなり、酵素としての活性は既に留められていません。
つまり「生きた酵素」は、小腸にまで届いた時点でただのアミノ酸かペプチドになってしまっているのです。
ダーゼンやキモタブといったタンパク分解酵素の薬剤が、消炎鎮痛剤として昔は販売されていました。
しかしダーゼンはプラセボとの間に差がなくて自主回収され、キモタブも「原材料が確保できなくなった」として持田製薬は販売中止したようです。ただし消化酵素剤については胃の中で直接食物に対して働くため、もちろん効果はあります。
酵素がある物質(基質)に結合する→酵素-基質複合体ができる→生成物ができて、酵素が離れる
そして酵素が基質に結合するときは、酵素にある「鍵穴」に、基質という「鍵」が入り込むといったイメージになります。つまり、どんな酵素と、どんな基質が結合できるかは、最初から決められているのです。それは当然のことで、そこら中の基質と酵素が結合してしまっては、代謝がメチャクチャになってしまいます。
なお酵素が働くときには、「至適温度」というものがあり、一般に「体温よりやや高い」くらいとなります。ですからウォームアップによってカラダを温めることは、酵素の働きをスムーズにして代謝が上手くいくようにするという意味もあります。
また「至適pH」もあり、たとえば乳酸が溜まって筋肉のpHが下がったりすると、酵素が上手く働かなくなって、筋肉が疲労するというわけです。
「酵素は一生のうちで作られる量が決まっている」とか、「食事から生きた酵素をとる必要がある」とか「死んだ食品には酵素が含まれていない」などといった大ウソを言う人がいます。ここまで読んでくれた読者には一目瞭然ですが、どこがおかしいのかを説明していきましょう。
DNAとはなにか。これは「タンパク質の設計図」です。アミノ酸を組み合わせて、ホルモンや筋肉、コラーゲン、血中タンパクなどさまざまなタンパク質をつくっていきます。そして「酵素」も、DNAによってつくられるタンパク質です。
つまりDNAが存在している限り、つまり生きている限り、酵素はつくられ続けるのです。
一生のうちでつくられる決まった量など存在しません。
ただし主酵素の材料となるタンパク質や補酵素の材料となるビタミンやミネラル類をしっかり摂取しておくことが前提です。
そもそも酵素は自前でつくられるものですので、外来の酵素がそのまま作用したとしても、間違いなく代謝を攪乱するだけでしょう。
また酵素はタンパク質であり、酸や高温によって変性してしまいます。そして「消化酵素」によってアミノ酸あるいは細かいペプチドにまで分解されてしまいます。だから「生きた酵素食品」なるものを食べたとしても、胃酸で変性・分解してしまい、小腸ではアミノ酸かペプチドにまでなり、酵素としての活性は既に留められていません。
つまり「生きた酵素」は、小腸にまで届いた時点でただのアミノ酸かペプチドになってしまっているのです。
ダーゼンやキモタブといったタンパク分解酵素の薬剤が、消炎鎮痛剤として昔は販売されていました。
しかしダーゼンはプラセボとの間に差がなくて自主回収され、キモタブも「原材料が確保できなくなった」として持田製薬は販売中止したようです。ただし消化酵素剤については胃の中で直接食物に対して働くため、もちろん効果はあります。
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