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ナトリウムとカリウム

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掲載日:2020.05.07
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ヒトの身体を車に例えると、車体はタンパク質です。そしてガソリンは炭水化物です。脂肪は車体でもありガソリンでもあります。
そしてビタミンは「エンジンオイル」です。
代謝をスムーズに行わせるビタミンは、エンジンを潤滑に動かすのに必要となるエンジンオイルに例えられます。

ではミネラルは何かというと、主に車体になります。カルシウムと骨や、鉄とヘモグロビンの関係をイメージすると分かりやすいでしょう。
ただしそれだけではなく、ミネラルの中にはビタミンのように補酵素(補因子)として働くものもあります。ミネラル(Mineral)という言葉は「Mine(鉱山、鉱石など)」に由来しており、ほとんどは金属です。
例外は硫黄やリン、ヨウ素、塩素など。なおビタミンは有機物なので「補酵素」となりますが、無機物のミネラルは補酵素ではなく、「補因子」と呼ばれます。

ミネラルは人間の体内でつくることができません。そのため、食事から摂取する必要があります。現時点でヒトの必須ミネラルは次の16種類となります。

・ナトリウム
・カリウム
・カルシウム
・鉄
・亜鉛
・マグネシウム
・銅
・マンガン
・セレニウム
・ヨウ素
・モリブデン
・リン
・クロミウム
・硫黄
・塩素
・コバルト

この16種類にバナジウムを加えた17種類のミネラルについて、本書で解説していきます。

ではもっとも身近である「ナトリウム」と、その相棒である「カリウム」からいきましょう。

ナトリウムポンプとは

ナトリウムはドイツ語(Natrium)で、英語だとソディウム(Sodium)です。カリウムもドイツ語(Kalium)で、英語だとポタシウム(Potassium)になります。この二つが相棒というのは、どういうことでしょうか。

この二つのミネラルは生命の主役たる「ナトリウム‐カリウムポンプ(略してナトリウムポンプ)」を働かせるのに必要なのです。身体のエネルギーはATPによるものですが、実はその3分の1から4分の1が、ナトリウムポンプに動力を提供するために使われています。

ATPの大部分を使うナトリウムポンプ。この働きはなんでしょうか。それは主に「情報伝達」です。細胞内はカリウムが多く、細胞外はナトリウムが多くなっているのですが、その状態はナトリウムポンプの働きによって保たれています。
ナトリウムポンプはナトリウムイオン3個を細胞外に運び出し、カリウムイオン2個を細胞内に運び入れます。この働きによってイオン濃度差が起こり、電気的な勾配が発生します。この電気勾配の変化により、「活動電位」が発生し、情報が伝達されていくのです。
ナトリウムポンプは神経の興奮伝達や細胞の浸透圧調節のほか、小腸や尿細管で栄養素が吸収されるときにも働きます。 
ナトリウムポンプ

ナトリウムポンプ

つまりナトリウムやカリウムがないと、情報を伝達することができません。また細胞の浸透圧が調整できないため細胞が膨れ上がって破壊されてしまいますし、栄養素も吸収できないことになります。ミネラルというとカルシウムや鉄が真っ先に思い浮かぶと思われますが、それ以上に重要なのが、ナトリウムとカリウムなのです。

  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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