塩分と血圧の関係
掲載日:2020.05.21
レニン活性がポイント
しかしもともと、レニン・アンジオテンシン系は貴重な塩分を体内に保持し、有効に使うために私たちの身体に備えられたものです。つまり“身体にとって必要である”ナトリウムの摂取量が少ないと、それに応じてレニンが分泌されるというのが、本来の働きです。ナトリウムを大量に摂取すると、それに応じてレニンの分泌は減ります。そして血圧は下がります。
このシステムが正常に働いていれば、血圧の変動は起こらないはずなのです。
では、なぜ塩を摂ると血圧が高くなると言われているのでしょうか。ここではレニンの活性がポイントとなります。
正常な状態では、前述の通り体内のナトリウムが多いとレニンの分泌が減って、体内のナトリウムを減らすように働きます。しかしレニン分泌機構が上手く働かない(レニンが減らない)と、体内のナトリウムが上手い具合に減ってくれないのです。そのためレニン活性が低い人は、心臓血管系のリスクが高くなってしまいます。(※1)
いっぽうでレニン活性が正常な人は、後述のとおり常識的な範囲でしたら塩を摂取しても全く問題ありません。ただしレニン活性は30~40歳から低下し始めるため、血圧が高めの中年以降の方はレニン活性を計測したほうが良いかもしれません。
このシステムが正常に働いていれば、血圧の変動は起こらないはずなのです。
では、なぜ塩を摂ると血圧が高くなると言われているのでしょうか。ここではレニンの活性がポイントとなります。
正常な状態では、前述の通り体内のナトリウムが多いとレニンの分泌が減って、体内のナトリウムを減らすように働きます。しかしレニン分泌機構が上手く働かない(レニンが減らない)と、体内のナトリウムが上手い具合に減ってくれないのです。そのためレニン活性が低い人は、心臓血管系のリスクが高くなってしまいます。(※1)
いっぽうでレニン活性が正常な人は、後述のとおり常識的な範囲でしたら塩を摂取しても全く問題ありません。ただしレニン活性は30~40歳から低下し始めるため、血圧が高めの中年以降の方はレニン活性を計測したほうが良いかもしれません。
食塩感受性高血圧とは
ただし日本人の場合、食塩を多く摂ると高血圧になりやすいという説があります。食塩によって高血圧になりやすいタイプのことを、特に「食塩感受性高血圧」と呼びます。
食塩感受性高血圧の作用機序はやや複雑な流れなのですが、ここで解説しておきましょう。
まずナトリウム過多によってノルアドレナリンが増加し、β2アドレナリン受容体が活性化します。その刺激がエピジェネティクスとしてWNK遺伝子の発現を抑制し、これがNa-Cl共輸送体の活性を高めてナトリウムを貯留させるというメカニズムになっています。(※2)
分かりやすく言い換えると、食塩を摂取することで交感神経が興奮し、それが遺伝子を修飾してナトリウムの排出が抑えられ、血圧が高くなるということです。逆に考えると、ナトリウムが足りないときは交感神経が興奮しにくくなるはずです。
江戸時代には「塩抜きの刑」というものもあったそうで、この刑を受けた罪人は次第に目の力が喪われ、無気力になっていったそうです。スポーツ選手がナトリウムを制限すると、てきめんにパワーが喪われるのが体感できるはずです。
なお国立循環器研究センターの調査によれば、日本人の食塩感受性高血圧は高血圧患者の40%程度を占めるとのことです。この調査では、一日0.5gの食塩を1週間続けた後、一日14.5gの食塩を摂取させ、血圧上昇が10%以上だったものを食塩感受性だとしています。しかし一日0.5gというのは、あまりに非現実的で、食塩感受性患者の割合が高くなるよう、研究内容を操作したのではのではないかという批判を受けても仕方がないかもしれません。
ちなみに「※2」の発見をした藤田教授の研究(1995年)では、日本人で食塩感受性の遺伝子を持つ人は20%だとのこと。
そして50%の人は塩分を摂取してもしなくても血圧に影響しないということです。高血圧以外にナトリウムが問題になりやすいのが、腎臓病です。腎臓が悪いとナトリウムの排泄が悪くなり、体内のナトリウムが増えて高血圧になると言われます。
しかし腎臓ではナトリウムの「再吸収」が行われています。腎臓が悪くなるとこの再吸収が減るため、ナトリウムの排出がむしろ増え、逆に低ナトリウムになることが多いのです。
そのため、腎臓が悪くても最近では極端にナトリウムを制限することはなくなりました。腎臓が悪い場合、むしろカリウムの制限が必要になります。
※1: Association of the renin-sodium profile with the risk of myocardial infarction in patients with hypertension N Engl J Med. 1991 Apr 18;324( 16): 1098-104.
※2: Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic-WNK 4 pathway in salt-sensitive hypertension. Nat Med. 2011 May; 17( 5): 573-80. doi: 10. 1038/ nm. 2337. Epub 2011 Apr 17.
食塩感受性高血圧の作用機序はやや複雑な流れなのですが、ここで解説しておきましょう。
まずナトリウム過多によってノルアドレナリンが増加し、β2アドレナリン受容体が活性化します。その刺激がエピジェネティクスとしてWNK遺伝子の発現を抑制し、これがNa-Cl共輸送体の活性を高めてナトリウムを貯留させるというメカニズムになっています。(※2)
分かりやすく言い換えると、食塩を摂取することで交感神経が興奮し、それが遺伝子を修飾してナトリウムの排出が抑えられ、血圧が高くなるということです。逆に考えると、ナトリウムが足りないときは交感神経が興奮しにくくなるはずです。
江戸時代には「塩抜きの刑」というものもあったそうで、この刑を受けた罪人は次第に目の力が喪われ、無気力になっていったそうです。スポーツ選手がナトリウムを制限すると、てきめんにパワーが喪われるのが体感できるはずです。
なお国立循環器研究センターの調査によれば、日本人の食塩感受性高血圧は高血圧患者の40%程度を占めるとのことです。この調査では、一日0.5gの食塩を1週間続けた後、一日14.5gの食塩を摂取させ、血圧上昇が10%以上だったものを食塩感受性だとしています。しかし一日0.5gというのは、あまりに非現実的で、食塩感受性患者の割合が高くなるよう、研究内容を操作したのではのではないかという批判を受けても仕方がないかもしれません。
ちなみに「※2」の発見をした藤田教授の研究(1995年)では、日本人で食塩感受性の遺伝子を持つ人は20%だとのこと。
そして50%の人は塩分を摂取してもしなくても血圧に影響しないということです。高血圧以外にナトリウムが問題になりやすいのが、腎臓病です。腎臓が悪いとナトリウムの排泄が悪くなり、体内のナトリウムが増えて高血圧になると言われます。
しかし腎臓ではナトリウムの「再吸収」が行われています。腎臓が悪くなるとこの再吸収が減るため、ナトリウムの排出がむしろ増え、逆に低ナトリウムになることが多いのです。
そのため、腎臓が悪くても最近では極端にナトリウムを制限することはなくなりました。腎臓が悪い場合、むしろカリウムの制限が必要になります。
※1: Association of the renin-sodium profile with the risk of myocardial infarction in patients with hypertension N Engl J Med. 1991 Apr 18;324( 16): 1098-104.
※2: Epigenetic modulation of the renal β-adrenergic-WNK 4 pathway in salt-sensitive hypertension. Nat Med. 2011 May; 17( 5): 573-80. doi: 10. 1038/ nm. 2337. Epub 2011 Apr 17.
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