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貧血②<鉄の働き>

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掲載日:2016.10.12
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鉄の働き

貧血の素となる鉄欠乏、その鉄は体内でどんな働きをしているのでしょう。

①赤血球を造る
赤血球はヘモグロビンから造られています。ヘモグロビンはヘム鉄とグロビンというたん白質が結合して造られます。赤血球の中には多くのヘモグロビンが存在します。

②体内に酸素を運ぶ
赤血球は体の隅々までめぐり、酸素を運搬しています。酸素はエネルギーの素となります。

③骨、皮膚、粘膜の代謝に必要
骨、皮膚、粘膜の材料となるのがコラーゲンです。コラーゲンはたん白質の細い糸でできています。このままでは弱いのですが、これを絡ませ、部分的にくっつけ、編んだ縄のような状態を作り上げます。この様に、コラーゲンを絡ませて強化するのが鉄とビタミンCです。

コラーゲンは体内の至る所にあります。例えば、血管の周りをコイル状に巻いて、血管の弾力性を保っています。コラーゲンが不足すると血管の弾力が保てませんから、アザが出来易くなります。

血管をホース、心臓を蛇口に例えて説明しましょう。ホースの口を潰して蛇口を開けば、水力が増して水が出ます。これは息を止めて瞬間的に力を入れた状態ですね。蛇口(心臓)から大量の水(血液)が送り出され、遠くまで水(血液)を運べます。

でも、ホースが古くて途中でヒビ割れていたらどうでしょう?そこから水がピューッと漏れるかもしれません。これが内出血、すなわちアザ、です。

私がパワーリフティングの選手だったころ、ヘビーの練習日に、顔にアザが出来ることがありました。初めは何だかわからなかったのですが、一度出来ると次の練習の時も出来る様になるのです。

痛くはないし、数日で消えるので気にしていませんでした。

しかしそれは、毛細血管のコラーゲンが弱くて壊れていた状態です。顔によく見られたのは、顔は表皮が薄いからで、見えないところでは体のあちこちで起きていたに違いありません。人によっては「ヘビースクワットの練習の後に頭痛がする」と言っていたのも、脳の血管のどれかが壊れていたのでしょう。

知らないとは怖いことです。

何なのか知りたくて皮膚科に行ったところ、「ひきつけを起こした赤ちゃんに出る症状」と言われました。「思い当たる事は?」と聞かれ、パワーリフティングをやっている事を告げると、「じゃあそれは止めなさい」と言われました。はぁ~?選手続けたいから来てるのに~!?その時は「アホか!」と思いましたが、西洋医学では治す術が無かったのでしょう。

分子整合栄養医学を勉強してからこのメカニズムを知り、驚きました。顔に出るのは、顔の表皮が薄いから、そこだけ見えるのです。見えない深部でもコラーゲン破壊は起こっている筈です。そこで、ヘビーの練習の日には、練習前にヘム鉄4mgとビタミンC 1,000mgを摂ってから臨む様にしたところ、アザは出なくなりました。

コラーゲンは骨の弾力を保ったり、骨と腱、腱と筋肉を繋いだりもしています。

また、コラーゲンを造る栄養と、赤血球を造る栄養は同じ材料です。貧血であるという事はコラーゲンも不足しているという意味であり、コラーゲンの不足は怪我をし易くします。筋や腱の断裂、疲労骨折などはその例でしょう。
  • 星 真理(ほし まり)
    栄養整合栄養医学協会認定 分子栄養医学管理士
    栄養学の専門家として老若男女を問わず、一般人からトップアスリートにいたるまで、あらゆるニーズにも対応した栄養指導/栄養セミナーを個人、競技チーム、学校、企業を対象に行っている。
    著書「アスリートのための分子栄養学」(体育とスポーツ出版社)

    分子栄養学(正式名称:分子整合栄養医学)
    Ortho-Molecular Nutrition and Medicine
    ノーベル賞を2つ受賞した米国人生化学者ライナス・ポーリング博士(1901〜1994年)が、栄養学と医学とを融合させて研究し、分子整合栄養医学として確立した栄養医学。

  • アスリートのための分子栄養学
    2014年3月31日初版1刷発行
    著者:星 真理
    発行者:橋本雄一
    発行所:(株)体育とスポーツ出版社


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