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カリウムを摂取しよう!

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掲載日:2020.06.11
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もともと腎臓が正常であれば、一日に20~30gの塩分を排出できますので、減塩にこだわる必要はありません。
また減塩によって血圧を少々下げたとしても、それが心臓血管系疾患や死亡率を下げることにはつながらないという報告もあります。(※9)

それでも塩分摂取がコワイ人は、「カリウム」を積極的に摂取するようにしましょう。もともと塩分と高血圧の関係は、日本の東北地方(塩分摂取が多い)での調査から導き出されたものです。
つまり論理ではなく、疫学(統計)から導き出された結論です。

しかし秋田県では概して血圧が高かったものの、青森の特に弘前地方では、血圧は正常だという結果で、これはリンゴを食べているかどうかに拠るものでした。
またリンゴの生産地は中年期の脳卒中が起こりにくく、死亡率も低いことが判明しています。

なお統計をとるときに、血圧が正常だった地域のことは省かれ、血圧が高い地域だけデータに入れられた・・という裏話もあります。

昭和32年に弘前大学の佐々木教授が行った研究では、リンゴを食べていたグループは食べていなかったグループに比べ、明らかに血圧が低くなっていました。

リンゴにはカリウムが大量に含まれますが、カリウムにはナトリウムの腎臓における再吸収を抑制し、体外に排出する働きがあるのです。復習になりますが、ナトリウムは細胞外に多く存在し、細胞内にはカリウムが多く存在します。

細胞内にナトリウムが入ってくると、「ナトリウムポンプ」の働きにより、余分なナトリウムを細胞外に排出します。カリウムを摂取するとナトリウムポンプが強く働き、細胞外にナトリウムと水分を汲みだします。

すると血液量が増えます。血液量が増えるとアルドステロンが抑制され、レニンも抑制されます。そして腎臓のナトリウムポンプも活性化されて、ナトリウムの再吸収が抑制されます。
実際にカリウムを摂取することにより、血圧が下がったというメタ・アナリシスがあります。(※10,※11)
またカリウムの多い食事をしていると、高血圧や脳卒中のリスクが減るという報告もあります。(※12)

ただし日本人のカリウム摂取は減少傾向にあります。(※13)WHOの基準によれば脳卒中や心筋梗塞などの予防に望ましい摂取量としては一日に3510mgなのですが、日本人の平均的な摂取量としては一日に2201mg程度です。(日本人の食事摂取基準2015年度版)
なおカリウムの多い食品は野菜や果物なのですが、意外に「イモ類」に多いのです。また野菜などは調理によってカリウムが流出してしまいますが、イモ類は大丈夫です。

サツマイモやジャガイモを食べるように心がけていれば、ナトリウム過剰摂取の心配はありません。また海藻類や切り干し切り干し大根にもカリウムは多く含まれます。

※9: Lower sodium intake reduces blood pressure in adults and children, but is not associated with a reduced risk of all CVD or all cause mortality.
Evid Based Med. 2014 Feb; 19( 1): 33-4. doi: 10. 1136/ eb-2013-101385. Epub 2013 Jul 1

※10: Effects of oral potassium on blood pressure. Meta-analysis of randomized controlled clinical trials. JAMA. 1997 May 28; 277( 20): 1624-32


※11: Daily potassium intake and sodium-to-potassium ratio in the reduction of blood pressure: a meta-analysis of randomized controlled trials.
J Hypertens. 2015 Aug; 33( 8): 1509-20. doi: 10. 1097/ HJH. 0000000000000611.

※12: Are low intakes of calcium and potassium important causes of cardiovascular disease? Am J Hypertens. 2001 Jun; 14( 6 Pt 2): 206 S-212 S
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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