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鉄と筋肉4

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掲載日:2020.08.27
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摂取量は?

厚生労働省の調査によれば、食事で男性は一日に7.9mg、女性は7.0mgの鉄を摂取しています。(平成25年調査)推奨摂取量は成人男性で7.0~7.5mg、成人女性(月経あり)で10.5~11.0mgですので、男性は今のままでOK、女性は足りていないということになります。ところで最近のマルチビタミンミネラルは、「鉄抜き」のものが多くなっています。これは鉄の過剰摂取が心臓血管系疾患を引き起こすという調査結果が出てくるようになったからです。

日本人男女110792名(40~79歳)を対象にした調査(※31)では、食事からの鉄摂取量が多い男性は脳卒中および心臓血管系疾患での死亡リスクが優位に高くなっています。ただし女性の場合、関連は見られていません。女性は月経による出血により、鉄が自然に排出されることが関係していると考えられます。

この研究で重要なのは、ヘム鉄と非ヘム鉄とに分けてリスクを調査したところです。実はヘム鉄の場合、リスクは全く上昇していません。非ヘム鉄だと、リスクが急上昇しているのです。

逆にインディアナ大学によるメタ・アナリシスでは、ヘム鉄のほうが吸収が良いため、鉄による心臓血管系疾患のリスク増加が顕著にみられるとしています。(※32)

この二つの研究は矛盾しているようですが、日本人の食生活と欧米のそれとでは、肉の消費量が大きく違うため、鉄全体の総量が問題となっているのでしょう。つまり鉄摂取の総量が少なければ、ヘム鉄は問題ないが、非ヘム鉄はダメ。鉄摂取の総量が多ければ、ヘム鉄も悪者になってくるということです。

さて、総量が多い場合、鉄はなぜ問題となるのでしょうか。簡単な説明としては、鉄がLDLコレステロールを酸化させ、それが動脈硬化を引き起こすということになっています。しかし筆者の著作をお読みの方だったら、もう犯人はわかっているのではないでしょうか。そう、「フェントン反応」なのです。

活性酸素の一種である「過酸化水素」は毒性は弱いのですが、寿命が非常に長く、生体内に存在し続けます。そして他の物質との反応性も高く、これが「一価銅イオン」や「二価鉄イオン」と反応すると、ヒドロキシルラジカルを生じます。この反応を「フェントン反応」と呼びます。ヒドロキシルラジカルは活性酸素の中でも最強の毒性を持ち、体内で様々な悪さをします。

では過酸化水素はどのようにして生じるのでしょうか。運動をして一番発生しやすい活性酸素は「スーパーオキサイド」です。これはSODという酵素によって除去されるのですが、流れとしては「スーパーオキサイドにSODが働いて過酸化水素になる。そして過酸化水素にカタラーゼやグルタチオン・ペルオキシダーゼが働いて無害化される」となります。

このとき、カタラーゼやグルタチオン・ペルオキシダーゼがすぐに働けば問題ありません。しかしそこに一価銅イオンや二価鉄イオンがあってフェントン反応が起こってしまうと、ヒドロキシルラジカルが発生してしまうのです。つまり鉄の過剰摂取は二価鉄イオンを増やし、フェントン反応を起こしてヒドロキシルラジカルを発生させ、活性酸素による害を受けやすくしてしまうということなのです。

一価銅イオンや二価鉄イオンを減らすにはどうすれば良いのでしょうか。ここでは「セルロプラスミン」という銅結合タンパク質が活躍します。セルロプラスミンは一価銅イオンを補足するとともに、二価鉄イオンを三価に変えてくれます。そしてできた三価鉄イオンはトランスフェリンやフェリチンが補足してくれます。

なおトランスフェリンと同じような効果を持つのが、「ラクトフェリン」です。実はラクトフェリンはトランスフェリンよりも遥かに鉄を補足するパワーが強く、ヒドロキシルラジカルの発生を抑制してくれることが分かっています。(※33)

またビタミンCも鉄の吸収を促進するほか、ヘモグロビンをつくるときに重要な役割を果たすため、貧血の人はビタミンCも十分に摂取することが必要です。

子供の場合は活性酸素の害を心配する必要はなく、鉄欠乏による問題を防ぐため、積極的な鉄摂取が望まれます。5~12歳の児童を対象に鉄を摂取させたところ、認知機能やIQテストの結果が改善しています。(※34)また女性も月経によって鉄が喪われるため、鉄の摂取は効果をもたらすことがあります。18~35歳の女性を対象に鉄サプリメントを16週間摂取させたところ、認知機能の改善に効果が見られました。(※35)

この書籍を読んでいる方の多くはアスリートあるいはトレーナーだと思われますので、食事で肉や魚、卵を十分に食べており、すでにヘム鉄の摂取量が多いため、特にサプリメントで鉄を摂取する必要はないと思われます。

また40歳以上の男性は「鉄抜き」のマルチビタミンにすることをお勧めします。筆者が良く勧めているエランバイタルも、鉄抜きです。

ただし女性や子供の場合は、積極的に肉や魚、卵を食べるほか、ヘム鉄の入っているマルチビタミンを選ぶようにするといいでしょう。お勧めとしてはSourceNaturalsのWomen’sLifeForceです。これはアミノ酸キレートの鉄が一日3錠あたり6mg含まれています。また、ときどきはフェリチンを測定しておくことをお勧めします。

  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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