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マグネシウムとトレーニング効果

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掲載日:2020.09.24
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マグネシウムは亜鉛と同じように、体内における300種類以上の酵素反応に関係しています。生体内には25g程度のマグネシウムが存在し、その50%以上が骨に、40%が筋肉や軟部組織に存在し、細胞外にはわずか1%しか存在しません。
カルシウムと同じように、マグネシウムが不足すると骨に貯蔵されたマグネシウムが遊離して利用されます。では、マグネシウムの働きについて解説していきましょう。

リラックス作用

筋肉が収縮するときは筋小胞体からカルシウムイオンが放出されるということを、カルシウムの項で説明しました。

カルシウムイオンを筋小胞体に戻すときは、「カルシウムポンプ」が働きます。このポンプはATP依存性であり、これを働かせるためにマグネシウムが必要となるのです。筋肉が攣ったり、肉離れをしたりするときは、筋肉が過度に収縮しています。
これはマグネシウムが足りず、放出されたカルシウムイオンが筋肉を「収縮させっぱなし」にしているために起こっている可能性があります。マグネシウムを補給することによってカルシウムイオンが筋小胞体に正常に戻れば、筋肉の痙攣を防ぐことができます。

タンパク合成

タンパク質の合成はリボゾームという細胞内小器官で行われます。DNAの情報、つまりアミノ酸の配列の情報をmRNAがリボゾームまで伝え、リボゾームの表面(粗面小胞体)で翻訳、つまりアミノ酸を並べてタンパク質をつくる作業が行われます。
このときはtRNAがアミノ酸を粗面小胞体まで運んできますが、この運搬作業はATPのエネルギーによって行われます。このときにもマグネシウムが必要となります。

骨を強くする

カルシウムの項でパラソルモンについて解説しましたが、マグネシウムにはパラソルモンを低下させる作用があります。成人男性に経口でマグネシウムをサプリメンテーションしたところ、骨重量損失が軽減され、骨が強くなることが分かりました。(※61)また8~14歳の女性120名を対象にマグネシウムを一日300mg摂取させたところ、12ヶ月後に股関節の骨密度が上昇しました。(※62)

心臓血管系疾患や糖尿病を予防する

血中マグネシウムレベルが高いと心血管疾患のリスクが低く、またマグネシウム摂取量が多いと虚血性心疾患のリスクが低いことが報告されています。(※63,※64)また高血圧患者を対象に、経口マグネシウム摂取により血圧の低下がみられ(※65)、インスリン抵抗性の改善や総コレステロール低下、LDLコレステロール低下、HDLコレステロールの増加、中性脂肪の低下などが起こっています。(※66)
6ヶ月間に渡って経口マグネシウムを摂取させたところ、空腹時血糖値とインスリン抵抗性の改善も起こっています。(※67)β細胞の機能を改善するという報告もあります。(※68)

炎症を減らし、腹部の脂肪を減らす?

マグネシウムには体内の炎症を抑制する作用があります。また運動時のストレスによるコルチゾル分泌を低下させる作用もあります。(※69)コルチゾルが増えると内臓脂肪が増加するのですが、マグネシウムの摂取により、それを防ぐことができるかもしれません。(※70)またマグネシウムとビタミンDを同時に摂取することで、肥満を防ぐことができるという可能性もあります。(※71)

※61: Daily oral magnesium supplementation suppresses bone turnover in young adult males. J Clin Endocrinol Metab. 1998 Aug; 83( 8): 2742-8.

※62: A randomized controlled study of effects of dietary magnesium oxide supplementation on bone mineral content in healthy girls.J Clin Endocrinol Metab. 2006 Dec; 91( 12): 4866-72. Epub 2006 Oct 3.

※63: Circulating and dietary magnesium and risk of cardiovascular disease: a systematic review and meta-analysis of prospective studies. Am J Clin Nutr. 2013 Jul; 98( 1): 160-73. doi: 10. 3945/ ajcn. 112. 053132. Epub 2013 May 29.

※64: Magnesium and the risk of cardiovascular events: a meta-analysis of prospective cohort studies. PLoS One. 2013; 8( 3): e 57720. doi:10. 1371/ journal. pone. 0057720. Epub 2013 Mar 8.

※65: The effect of magnesium supplementation on blood pressure: a meta-analysis of randomized clinical trials. Am J Hypertens. 2002 Aug; 15( 8): 691-6.

※66: Beneficial effects of oral magnesium supplementation on insulin sensitivity and serum lipid profile. Med Sci Monit. 2010 Jun; 16( 6): CR 307-312.

※67: Oral magnesium supplementation reduces insulin resistance innon-diabetic subjects - a double-blind, placebo-controlled, randomized trial. Diabetes Obes Metab. 2011 Mar; 13( 3): 281-4. doi: 10. 1111/ j. 1463-1326. 2010. 01332. x.

※68: Magnesium improves the beta-cell function to compensate variation of insulin sensitivity: double-blind, randomized clinical trial. Eur J Clin Invest. 2011 Apr; 41( 4): 405-10. doi: 10. 1111/ j. 1365-2362. 2010. 02422. x. Epub 2011 Jan 17.

※69: On the significance of magnesium in extreme physical stress.Cardiovasc Drugs Ther. 1998 Sep; 12 Suppl 2: 197-202.

※70: Magnesium, inflammation, and obesity in chronic disease. Nutr Rev. 2010 Jun; 68( 6): 333-40. doi: 10. 1111/ j. 1753-4887. 2010. 00293. x.

※71: Obesity induced magnesium deficiency can be treated by vitamin D supplementation. J Pak Med Assoc. 2009 Apr; 59( 4): 258-61.
  • 山本 義徳(やまもと よしのり)
    1969年3月25日生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。
    ◆著書
    ・体脂肪を減らして筋肉をつけるトレーニング(永岡書店)
    ・「腹」を鍛えると(辰巳出版)
    ・サプリメント百科事典(辰巳出版)
    ・かっこいいカラダ(ベースボール出版)
    など30冊以上

    ◆指導実績
    ・鹿島建設(アメフトXリーグ日本一となる)
    ・五洋建設(アメフトXリーグ昇格)
    ・ニコラス・ペタス(極真空手世界大会5位)
    ・ディーン元気(やり投げ、オリンピック日本代表)
    ・清水隆行(野球、セリーグ最多安打タイ記録)
    その他ダルビッシュ有(野球)、松坂大輔(野球)、皆川賢太郎(アルペンスキー)、CIMA(プロレス)などを指導。

  • アスリートのための最新栄養学(上)
    2017年9月9日初発行
    著者:山本 義徳


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