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脂肪を燃やせ‼PQQ に脂肪燃焼の作用が!?

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[ 月刊ボディビルディング 2013年10月号 ]
掲載日:2017.08.15
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ほとんどの人はPQQ という名前を聞いたことがないでしょう。たとえ聞いたとしても、PQQ というのは不自然な化合物であるとか、薬剤であるとか思うかもしれません。しかし事実、両方とも正しくありません。PQQ は自然な物質で、様々な食べ物に含まれています。そして、このPPQ は脂肪燃焼効果が期待できる物質なのです。
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PQQを高濃度で含むのは納豆(61ng/g)です。それに続いて多量に含まれているのはパセリ(34ng/g)、緑茶(30ng/g)、キウイフルーツ(27ng/g)などです(ng=ナノグラム・10億分の1グラム)。その他の食べ物にも微量に含まれています。このことからPQQは私たちにとって非常に身近な物質であることが分かります。
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新種ビタミンとして期待されたPQQ

PQQ(Pyrroloquinoline Quinone・ピロロキノリンキノン)は1979年にメタノールを栄養源として利用する細菌から発見された物質です。PQQを含まない餌を与えたマウスは、成長が悪く、皮膚がもろくなり、また繁殖能力が低下するなどの異常を示し、栄養学的な知見からビタミンの候補として考えられてきました。しかし、生体内における生化学的な役割が不明のためにビタミンとして認識されることはありませんでした。
その後、転機が訪れて、PQQがヒトを始めとする哺乳動物の生体内でビタミンとして機能していることを理化学研究所の笠原らが世界で初めて実証し、英国の科学雑誌『Nature( 2003年4月号)』に発表しました。その報告で、PQQは生体内の酸化還元反応の補酵素であり、アミノ酸代謝のうち、リシンの分解過程における酵素の補酵素として必須であることが示唆されました。補酵素は酵素と結合して、自身は変化せず化学反応の速度を変化させる物質で、生体内の多くの化学反応で必要とされています。しかしながら、この補酵素としての必要性は完全には認められておらず、現時点ではビタミンと認め七られていません。もし14番目のビタミンとして認定されれば、1948年のビタミンB12から数えて55年ぶりとなるはずでした。

ビタミン様物質バイオファクター

ビタミンとは、「生体の構成材料でもエネルギー源でもないものの、正常な生体機能の維持に微量ながら必要な有機化合物(炭素を含む化合物)で、ヒトの体内では合成できないか不足しがちであるため、食物から摂取しなければ欠乏症を引き起こす物質」と定義されています。それに対して、食事成分のなかには、ビタミンとはいえないものの、ビタミンと同様に生体内で重要な生理活性をもつものが知られており、これらを〝ビタミン様物質〟と呼びます。近年では、食品の第三次機能(生体機能調節作用)が着目されるようになり、ビタミン様物質への関心が高まっています。ビタミン様物質は、〝バイオファクター(biofactor)〟と呼ばれることもあります。ビタミン様物質は、今後、ヒトでの欠乏症の存在が明らかになれば、ビタミンの仲間に入る可能性のある〝ビタミン候補物質〟ということになります。
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PQQはビタミンとは認められていませんが、ビタミン様物質の一つに挙げられています。PQQはピロロキノリン「キノン」という名の通り、キノン化合物です。キノン化合物とは、「ベンゼン環に結合する2つの水素原子が2つの酸素原子に置き換えられた構造を有する化合物の総称」です。このキノン化合物のなかにはビタミンKやCoQ10があります。CoQ10は体内で合成することができますが、加齢とともに確実に減少することが明らかにされているため、ビタミン様物質として扱われています。他のビタミン様物質としては、カロテノイド、フラボノイド、α‐リポ酸、カルニチン、コリンなどがあります。これらはサプリメントとして非常に人気があるものです。生体内で合成できても、加齢とともに減少するため、それを補う目的でサプリメントを摂取することは好ましいといえます。
HALEO VIVO であれば、ビタミンも含めてビタミン様物質を容易に補給することができます。また、バルクスポーツLIQUID(リキッド)CoQ10も合わせて摂取するのがおすすめです。
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PQQが働く仕組み

補酵素から抗酸化物質まで、多くの生理学的特性がPQQにはあります。PQQはビタミン様物質として細胞の信号に重要な役割を果たしています。これはPQQを含まない餌を与えたマウスの実験などの結果から確かだといえるでしょう。最近の研究では、PQQがミトコンドリアの呼吸調節を改善したり、ミトコンドリアの新生を刺激したりすることが分かっています。ミトコンドリアは好気呼吸(酸素を用いる呼吸)の場であるだけでなく、熱産生にも関与しています。しかし、ストレスにさらされた細胞のミトコンドリアでは、活性酸素種の過剰産生、ミトコンドリアDNAの損傷など様々な障害が起こります。
活性酸素種は、反応性に富む不安定な酸素分子種のことで、好気呼吸下のミトコンドリアで発生します。活性酸素種が増えすぎると細胞膜や組織細胞が破壊され、病態や疾患を引き起こすと考えられています。また、ミトコンドリアの障害は、がん、代謝疾患、神経変性疾患などさまざまな疾患の原因となると考えられています。よって、ミトコンドリアで活性酸素種が増加しすぎないようにミトコンドリアの呼吸を調節したり、ミトコンドリア自体を新生させることは多くの健康問題にとって重要な解決策だと考えられます。
PQQが働く仕組みは、PGC|1α(peroxisome proliferator-activatedreceptor-gamma coactivator-1 alpha) という転写共役因子を抜きにして語ることはできません。転写共役因子とは転写因子と結合して、遺伝子発現を増加させるタンパク質のことです。PGC|1αは「適応性熱産生、ミトコンドリア新生、グルコースや脂肪酸の代謝、骨格筋における筋線維の再構成を含む多様な生化学的反応」に関わる転写因子と相互作用します。PGC|1αはもともと寒冷により誘導される適応性熱産生の転写共役因子として発見されました。適応性熱産生とは、寒冷ストレスや過食のような環境状態に応じてエネルギーを熱として浪費するという生理学的変化のことです。つまり、PGC|1αはエネルギー代謝において重要な調節役だといえます。
そのため、PGC|1αは肥満、糖尿病、心筋症のような疾患と深く関係している可能性が高いと考えられています。そして、PQQはそのPGC|1αの発現を増加させることで、ミトコンドリアの新生を刺激することが分かっています。PGC|1αを通して、PQQが体熱産生を高め、エネルギー代謝を促進するかもしれないことが分かってきたのです。
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PQQは“イリシン”の分泌を促進する!?

イリシンは2012年1月に『Nature』に発表された新しいホルモンです。どうして運動が溜まった脂肪を燃やすのか。この問いに対して、イリシンは運動の利益を体系的に説明するキーになるホルモンとなりそうです。では、PQQがなぜイリシンと関係があるのでしょうか。それはイリシンの分泌にもPGC|1αが関わっているからです。
まず、運動により筋中でPGC|1αの発現が誘導されます。次に、PGC|1 α は膜タンパク質であるF N D C 5(fibronectintype Ⅲ domain containing5)の発現を増加させます。FNDC5が切断されて、イリシンがホルモンとして血中に放出されます。血中に放出されたイリシンは全身の白色脂肪細胞にたどり着きます。そして、ここからがイリシンの驚くべき作用で、イリシンは白色脂肪細胞を褐色化(browning)するというのです。今まで脂肪細胞は白色脂肪細胞と褐色脂肪細胞の2種類のみと考えられていました。白色脂肪細胞は脂肪を溜め込む細胞で、それが過度になると肥満の一因となります。
一方、褐色脂肪細胞は寒さから身を守るために体熱を産生する目的でカロリーを燃やしてくれます。しかし、イリシンが白色脂肪細胞を褐色化していることから、さらに〝ベージュ脂肪細胞〟という種類があることが分かってきました。このベージュ脂肪細胞は褐色脂肪細胞の特徴に近い性質を持っており、カロリーを消費し、体熱を産生する方向に働きます。貯まった白色脂肪細胞をベージュ脂肪細胞に変えられれば、体脂肪の減少が期待できるでしょう。
イリシンはPGC|1αの発現が増加することにより、産生されます。また、PQQはPGC|1αの発現を増加させるのです。よって、PQQを摂取することでイリシンの分泌を促進できる可能性が考えられるのです。イリシンは抗肥満、抗糖尿病のために役立つと考えられるため、PQQを摂取することにも同様の効果が期待できます。

イリシン・ブースター

PQQは様々な食べ物に微量ずつ含まれていますが、サプリメントとして補うことも可能な物質です。新しいファット・バーナーであるHALEOUSA 製ONPOINT(※)にはPQQが含まれています。※ ONPOINT はHALEOUSA 製で、海外からの輸入代行商品です
【参考文献】
・R o b e r t R u c k e r e t a l . P o t e n t i a l p h y s i o l o g i c a l i m p o r t a n c e o f pyrroloquinoline quinone. Alternative medicine review 2009;14(3):268-277.
・K a t h r y n B a u e r l y e t a l . A l t e r i n g pyrroloquinoline quinone nutritional status modulates mitochondrial, lipid, and energy metabolism in rats. Plos One 2011;6(7):1-13.
・W i n y o o C h o w a n a d i s a i e t a l .Pyrroloquinoline quinone stimulates m i t o c h o n d r i a l b i o g e n e s i s t h r o u g h c A M P r e s p o n s e e l e m e n t - b i n d i n g protein phosphorylation and increased P G C - 1 α e x p r e s s i o n . J B i o l C h e m 2010;285(1):142-152.
・Huiyun Liang et al. PGC-1 α : a key regulator of energy metabolism. Adv Physiol Educ 2006;30:145-151.
・P o n t u s B o s t r m e t a l . A P G C 1 - α -dependent myokine that drives brownfat- like development of white fat and thermogenesis. Nature 2012;481:463- 469.


text by Yuko Sakuyama
記事提供=(株)ボディプラスインターナショナル
著者◎作山 悠子(さくやま・ゆうこ)
現・東北大学大学院医学系研究科 運動学分野 修士2年順天堂大学スポーツ健康科学部(2012 年度 卒業)主な研究テーマは" 高強度インターバルトレーニング"
所有資格:NSCA C.S.C.S
[ 月刊ボディビルディング 2013年10月号 ]

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