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ブラジルが誇る二人の偉大なアマチュアビルダー 「ホセ・カルロス・サントス」「エドソン・ルイス・デ・ソウザ」独占インタビュー

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[ 月刊ボディビルディング 2013年10月号 ]
掲載日:2017.01.18
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アーノルドクラシック・ブラジルの1日目が無事に終わったので、早速ホセ・カルロス・サントスのアポをとることにした。一昨年に知り合った相棒のカメラマンであるジルソンが事前に連絡してくれていたので、彼は愛想良く「今夜でもOK、夕食後にしよう」と言ってくれた。相棒と食事に出かけることにして、ホテルルームに荷物を置きに立ち寄ると、NABBAマスタークラスの偉大なチャンピオン、密かにブラジルで最も尊敬していたエドソン・ルイス・デ・ソウザが上半身裸で料理をしているではないか!同僚カメラマンと同室だったのだ。

エドソンはバスキュラリティにあふれ、今回もバリバリのコンディションだ。昨年はなんとシニアも含めて国際大会で総合優勝するという、日本にもいたなあと思わせるような高齢でも常に躍進し続けるボディビルダーでもある。許可を貰って早速そのまま撮影させてもらい、ついでにインタビューのアポにもこぎつけることができた。

食事から帰って、サントスに電話を入れてみる。すると彼は痙攣が始まったらしく、「明日の朝にしてくれ」とのこと。戦いを終えたばかりでは無理はない。

ということで、まずはエドソン・ルイス・デ・ソウザ選手からインタビューすることにした。
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――初めてのタイトルはいつですか。

エドソン(以下EL) 1975年で17歳(19歳)の時。IFBB主催のミスターサンパウロ、身長別クラスで優勝した。当時はIFBBも身長別だったんだよね。翌年は国際大会と地方のオーバーオールもとったよ。

――現在の身長と体重を教えてください。

EL 皆が実際より高く見えると言ってくれるのだけど、174cmの94kgだ。

――確かに190cmくらいに見えますね。

EL オフでも100kgを超えることはないよ。日ごろから100kgを上限に定めているんだ。

――最初のタイトルをとったときのトレーニング頻度と、現在のそれと両方教えてください。

EL トレーニングを始めた頃は3時間ぶっ続けでトレーニングしたこともあった。でもすぐにそのトレーニングでは筋肉が萎縮し始めたのを確認して、雑誌などから情報を探し始めた。そして見つけたのがイギリス人のロイ・デュバルのトレーニング法で、なるべく短い時間で終わらせることを始めた。それは後にメンツァー兄弟が提唱したヘビーデューティにつながる考え方だったんだ。今もそのまま続けているよ。

トレーニングでは筋肉になるたけ休みを与えないことを注意しているんだ。ジムではしゃべらない、休まない。いつも身体と相談する。3セットを多用し、インターバルは30秒から40秒、1セット内では最低12レップス、大体15から20レップス行なっている。疲労困憊して疲れが溜まりそうだと思ったら打ち上げさ。それで必ず1時間以内に終わる。そしてスプリット法で朝と夕方の2回トレーニングしているよ。疲れを感じたら酸化防止と疲労回復のためにサプリを摂る。でも人間の身体は学習する。サプリを摂り続けると、あたかもそれが食べ物のように反応するんだ、「サプリが足りない、サプリが足りない」ってね。このような状態にならないためにも、サプリは1年のうちコンテストの準備期間である6ヵ月にとどめて、水を大量に飲むようにしているよ。

――各セットの最後のレップスには補助を使いますか。

EL 普段はネガティブで追い込むので必要ない。そうだな、コンテスト前に1ヵ月だけ補助を入れるかな。

――年齢を増すにつれ、腹まわりの脂肪がとれにくくなるといったことは感じますか? その対処法も教えてください。

EL 腹筋のトレーニングは土日以外、毎日4~5種目やっているよ。各々のレップス数は500回からはじめて減らしていき、2500レップスに達したらおしまい。
アーノルドクラシック・ブラジルのマスターズ部門に出場したルイス。

アーノルドクラシック・ブラジルのマスターズ部門に出場したルイス。

バリバリの仕上がりだったが惜しくも3位

バリバリの仕上がりだったが惜しくも3位

――バスキュラリティが目立ちますが、いつごろから発達して来ましたか。

EL もともと皮膚は薄い方だったんだけど、20年前から実践していることは、料理に塩を使わないこと。スパゲッティのマカロニも塩が多いから食べない。その代わりご飯を食べるのだけど、例えばカーボローディングはやらないね。炭水化物の食べすぎは、吐き気がするから。とにかく水を大量に飲んで、フルーツも酸化防止のために食べる。でもりんご、パイナップル、レモン、トマト以外は避けているよ。またプレコンテストで体重を大きく下げることが行なわれているけれど、あれはただ単に水が増えたり減ったりしているだけで、循環器系や、特に関節に悪影響があると思うよ。ボディビルは精神スポーツ。精神に不安定をもたらす行為はご法度。自分の目指すのはモンスターになることではなく、ギリシャ彫刻のように、服を脱いでも、服を着ていても格好良くあること。ズボンだろうが、バミューダパンツだろうが、短パンだろうが海パンだろうが、何を身に着けていても格好良いスタイルを作ることを目指しているんだ。

――最後にトレーニングとサプリの使い方を詳しく教えてください。

EL 先にも言ったように、1年のうち半年はクリーンで過ごすんだけど、サプリメントを使う時はトレーニング中に15gのBCAA、グルタミン、亜鉛、ビタミンCとE、トレーニング直後にISOホエイと、30gのデキストリン、25gのマルトデキストリンを摂っているよ。トレーニングでは可動域を狭くすることに気を遣っているね。たとえばベンチプレスをフルレンジで行なうと、エクササイズの最後には三角筋のトレーニングに切り替わって、大胸筋は休んでしまっている。狭い可動域とは、筋肉を休ませないことなんだ。

――長い間熱心にインタビューに答えていただきまして、どうもありがとうございました。

EL 最後に日本の方々に伝えたいのは、自分は日本人のファンだということ。幾度の戦争、地震、津波、また原発事故で、数々の苦難に遭っても、いつも立ち上がってくる。人間は痛めつけられ、苦悩を強いられ、やっと大きく発展するものかもしれない。私には日本人がそれを体現しているとしか思えない。
だから日本人のファンなんだ。いつか日の出ずる国、日本を訪れたい。
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いやあ、感動した。しかしあまりに熱心にインタビューに応えてくれるものだから、予定時間を超過、20分遅れでサントスの部屋へ直行だ。ベルを鳴らすと同室の仲間が出てきて、まだ寝ているという。「ああ待たせなくて良かった」と胸を半ば撫で下ろしていると、彼はサントスを起こしに行ってしまった。サントスはひょっこり現れ、すぐにでもOKとのこと。昨夜は大会出場と痙攣、明日のオーバーオールを控えていることもあり、簡潔に済ますことにした。
2013年5月の開催された第1回アーノルドクラシック・ブラジルのアマチュア部門70kg 級にて見事優勝

2013年5月の開催された第1回アーノルドクラシック・ブラジルのアマチュア部門70kg 級にて見事優勝

――すでにマスタ―ズに出場できる年齢ですね。

サントス(以下JS) 今はまだまだ一般で戦えるので、マスターズは念頭にないよ。

――現在の身長と体重を教えてください。

JS 身長161cm、体重70kg。オフで85kgだね。ちなみにこのアーノルドには、検量前の24日に到着したけど、その時の体重は74.6kgだったよ。そして25 日の検量の時間には69.955kgだ。

――つまり75kg級で戦えるジャストの体重と筋肉の状態でいたにもかかわらず、さらに1階級下げたということですね。

JS そのとおり。それでさらに有利になるというわけさ

(チャンピオン恐ろしや。いかにして5kgもの体重をたったの一日で下げたのか、筆者には聞く勇気はなかったが、事実彼はそうやって数々のタイトルを取って来ている。彼は2002年のIFBB世界選手権では65kg級に出場し、何とオーバーオール優勝まで勝ち取っている。実際に階級を一つ下げることの真の重要性を理解し、不可能とも思える階級の移動も実現、その術を自分の味方につけることに成功しているといえる。5kg減の検量をパスするというのは、彼にとってコンテスト直前の試練であり、その目標に向かって全力を捧げているに違いない。だからこそ気軽に「一体どうやって5kg減らしているんですか?」などと聞けるレベルの話ではないのだ。彼の“本気”とは、試合前のマイナス5kg。その心構えと実行力に感心。筆者は実はもうこれだけで満腹状態になってしまった)。
75kg 近く合った体重を僅か1日で70kg級まで落とすというサントス。まさに ミラクルである

75kg 近く合った体重を僅か1日で70kg級まで落とすというサントス。まさに ミラクルである

――ところでサントス選手の大胸筋はまるでアーノルドのように条線が細かく刻まれていますが、それは生まれつきですか。

JS その通り、残念ながら人は生まれつきにもっている物は、変えることはできないんだよね。

――日本ではドーピング検査が抜き打ちで3回とか4回行われていますが、それについてコメントを。

JS ブラジルでも抜き打ち検査はあるけれど、年に一回だね。筋肉の増加は易しいことじゃない。鍛錬あるのみだよ。

――トレーニングに補助をつけますか。

JS ボディビルは個人スポーツなので、1人でやるよ。人に頼るのは良くない。ひとりで限界までトレーニングすることに慣れること。これが重要。ただし怪我を避けなければいけない。だから低重量で、レップス数は6~12回の範囲でやっているよ。インターバルを減らしたりすれば簡単に追い込める。ちなみに、低重量といっても、たとえばレッグプレスは700kg、スクワットは180kgを扱っているし、ベンチプレスは140kgで始めて100kgまでノンストップのストリップセットを行なっているよ。

――競技の真っ只中の大事な時に貴重な時間をいただいてありがとうございました。
  • ホセ・カルロス・サントス
    誕生日:1971年11月17日

  • エドソン・ルイス・デ・ソウザ
    誕生日:1952年2月15日
    ただしバルガス時代の戦乱のいざこざのため登記に間違いがあり、実際の生年月日は1956年2月15日

文・写真 :
松田誠司
[ 月刊ボディビルディング 2013年10月号 ]