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金子芳宏・小松慎吾・平田隆 2012年ジャパンオープンにかける有力候補に聞く④

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[ 月刊ボディビルディング 2012年9月号 ]
掲載日:2017.06.06
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三重県四日市市で開催されるジャパンオープン選手権も、とうとう間近に迫った。この最後の最後にまだまだいる有力候補たちにジャパンオープンにかける意気込みを聞く。

金子 芳宏

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――ジャパンオープンへの密かに期する思いをお聞かせください。

金子 毎年毎年、優勝したいと思って出場している大会です。もう一歩のところでいつも実力が出せず、後から出てきた選手に抜かれるなど悔しい思いもしてきました。今年が10回目の挑戦になりますので、自分のもっている最大限の力を発揮して、悲願を達成したいですね。

――2011年は4位。その前年は2位でした。これらの戦績を振り返ってどうですか。

金子 はい。2010年の大会を振り返ってみると、調整が比較的うまくいっていますね。06年の3位もコンディション自体はよかったです。去年の4位というのは、裏話になりますが、一緒に連れて行った子どもが大泣きをしたり、前日の夕食がほとんどとれなかったりといったトラブルがありました。結局、当日、筋肉に力が集まりませんでしたね。やはり食事は基本として大事です。

――その他、惜しくも優勝に届かないことについて、何が足りなかったか自己分析されていますか。

金子 総合的に、リラックスが自分にとっての一番の課題だと感じています。いつも意気込みが強すぎて失敗してしまうんですよ。それは、ある意味真面目に取り組みすぎて「厳しさ」が前面に出すぎていたとも言えます。

これに気づいたのは、あるときそういう「厳しい」雰囲気でいると、2歳の娘が父親である自分に近寄ってこなくなったからです。何も言わないのに、子どもが「気」で萎縮してしまう感じがしたのです。「そうか、筋肉もこんな感じで萎縮してしまうのかもしれない」、とヒントを得ました。つまり、本番でもストイックすぎることでうまくいかない場面があったのではと考えました。
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――そんな経緯の中、2011年の10月からパーソナルトレーナーにつかれましたね。

金子 はい。本野卓士さんに本格的にアドバイスをいただくようになってから、かなり昇り調子になってきています。本野さんの「筋肉、もっと大きくなるよ」という一言はメンタル面で弱くなりがちな自分をうまく乗せてくれました。それまでより綿密に、筋肉に対する意識、アプローチを行いながらトレーニングするようになり、背中が一回り大きくなった感触がありますね。

あと、トレーニング時、重心が上にいきがちなクセがあるのですが、少しずつ改善できているように思います。これまでもいろいろな人から助言を受けながらも、多くはマイペースでトレーニングしてきました。専門家から客観的な意見を定期的にいただけるのは大きなメリットです。とりわけ本野さんのアドバイスの適度な距離感が気に入っています。

――筋肉がなかなか大きくならないことが金子選手の悩みだったのですよね。それが改善されつつある…!?

金子 そうですね。菓子職人という仕事上、製品を作りながら試食などもしなければいけない関係で、これまでわりとアバウトだった食事のとり方、摂取タイミングにはかなり気をつけるようになりました。

時間を決めて、サプリメントやプロテインなども利用しながら、ここはストイックに行っていますね。たんぱく源としては肉や魚の他、卵の白身を多用しています。また、夜中に起きたときにも場合によってプロテインをとるようにしています。

これまでの反省点の一つに、減量時、絞るために食べるのを我慢していたことが、逆にせっかくできている筋肉を分解してしまう要因になっていたことがありました。どんな選手でもそうだと思いますが、絞ってからの最後の調整が一番難しいところで、醍醐味でもあります。基本的には、今回、それほど体重を落とすことなく仕上げようかと思っています。この面でもこれまでとは違った自分を見せられる気がしています。筋肉が大きくなっていくイメージを持ってトレーニングに取り組むことで愉しくもなりますよ。

――トレーニング前にはかなり念入りなストレッチを行っていますね。

金子 筋肉の可動域を努力して広げないと股関節などがすぐ痛くなってしまいます。ボディビルにはもう20年間取り組んでいますからね。あちこちガタがくるのは避けられません。バランスボールなどを使って時間をかけてストレッチを行うようになってから、痛みが軽減しました。身体のメンテナンスは、競技を応援してくれる妻に毎日マッサージをしてもらうなどしています。妻にはポージングも見てもらったりするのですが、「筋肉が大きくなって身体全体のシルエットがよくなってきているね」と言ってくれます。

アウトラインは自分の弱点なので克服していきたいですね。胴が長く、比較的、上背があるほうなので、下半身を鍛えつつ、もともとの体格を生かして仕上げていきたいと考えています。隙をつくらないようにすることが課題です。
家族のためにも優勝するという

家族のためにも優勝するという

――ところで日々のトレーニングで腐心していることはどんなことですか。

金子 声を出すと力んでしまうので、きつくても声を出さないようにします。通常、7分割で毎回10種目を行います。時間にして2~3時間。本当は早く帰って家族と過ごしたいのですが(笑)、時間をかけて行うほうですね。

今年40歳、ボディビルに取り組んで20年、ジャパンオープン挑戦10回目と体重を落とすことなく仕上げようかと思っています。この面でもこれまでとは違った自分を見せられる気がしています。筋肉が大きくなっていくイメージを持ってトレーニングに取り組むことで愉しくもなりますよ。

――今日はありがとうございました。ぜひ力を出し切れることを期待しています。

小松 慎吾

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――まずジャパンオープンという大会への思いを聞かせてください。

小松 ジャパンオープンと言えば、日本のボディビル三大大会の一つであり、ミスター日本の次にレベルの高いコンテストだと思っています。優勝した人は二度と出場できないので、凖日本選手権という感じで捉えています。大会には日本全国から40~50人近くのトップビルダーが集まり、オーバーオールで戦うので、優勝すれば非常に名誉なことだと思っています。そして何よりもジャパンオープンの優勝者は、月刊ボディビルディングの表紙を飾ることができるし、さらに取材もしていただけるので、私としてはこれがジャパンオープンの最高の魅力だと考えています(笑)。

――月ボへの敬意も表してくださいましてありがとうございます。さて、過去2回ジャパンオープンには出場されていますが、振り返ってみていかがですか。

小松 初出場したのは10年で、結果は予選落ちでした。再々審査を争った浅野喜久男さんには勝ったと思いましたが、背中の凹凸感では完璧に負けていましたし、絞りも全然甘くて、ポージングも下手くそすぎたのでやはり負けですよね。特にサイドチェストは下手すぎました。11年は6位に入賞できましたが、4位……いやせめて5位でも良かったじゃないかと自分で勝手に思いました。でも、よくよく考えてみるとまだまだ甘い仕上がりでしたし、ポージングも下手だったので6位が妥当かもしれません。ただ、6位になれたのは、ある意味自信になりました。バキバキに仕上げてポージングももっと上手かったら、さらに上位に食い込めたはずですから。
初出場の2010年ジャパンオープン。左から2人目が小松

初出場の2010年ジャパンオープン。左から2人目が小松

――体の仕上げはもちろんですが、ポージングの善し悪しが上位進出への鍵を握っているということでしょうか。改善した点はありますか。

小松 はい、そうですね。私の場合、ポージングは、特にバックダブルバイが下手で、ポーズを取る時に腕が曲がりすぎてしまい、背中の筋肉の凹凸感が左右対称にならなかったり、背中の広がりを無くしてしまっていました。しかし、腕の角度が90度よりも広くなるようにやってみたら、凹凸感の左右のバランスが良くなり、背中の広がりも増しました。

――トレーニングのやり方について教えてください。

小松 トレーニングは、やりたい時にやりたいように行なっています。そして、ジャパンオープンのことは一切頭から消しています。私がトレーニングする目的は、正直実はないんです(笑)。トレーニングすることが楽しいからトレーニングをする。そんな感じです。コンテストのことを意識しながらじゃ、トレーニングがつまらなく重くなりますから。
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――減量はいつ頃から始められますか。

小松 大会の4か月前からスタートします。最初の2か月間は、朝と昼は好きな物を自由に食べて、仕事中(13時30分~22時)はプロテインと0キロカロリーのスポーツ飲料水を摂ります。仕事が終わってからトレーニングしますが、トレーニングの1時間前にプロテインとバナナ1~2本食べ、トレーニング後にプロテインを飲んでからは何も摂りません。残り2か月を切ったら、朝と昼も減量食に切り替えます。私は減量が大の苦手で、あまりペースを上げすぎるとキレ食いに走ってしまうため、1週間に1回チートデイを設けていますが、残り1か月を切ったらチートデイとはバイバイします。ただ、今年はジャパンオープンへ向けて改善した点があります。

――その改善点とは?

小松 今までの私は、減量に入ると一気に全力疾走してしまい、結果としてキレ食いに走ってしまっていましたが、今年はすごくスローペースを心がけているのでキレ食いがなく精神的に落ち着いています。

――朝と昼の減量食の内容について教えてください。

小松 朝は白米をお茶碗軽く2杯、みそ汁、納豆2パック、卵1個、焼き魚(しゃけ)。昼は白米をお茶碗軽く1杯、みそ汁、鶏の胸肉250g、モヤシいっぱい、野菜ジュースです。

――意識するライバルは?

小松 意識するライバルはいません。自分がライバルです。

――ジャパンオープンへの意気込みは?

小松 優勝することしか頭にありません。100%優勝できると思っています。有力候補の加藤直之さん、久松一貴さん、佐藤貴規さん、全員まとめて倒します!

――ジャパンオープン後の目標について聞かせてください。

小松 ジャパンオープンに優勝して、その勢いに乗ってミスター日本に出場して、ファイナリスト(一ケタ台の順位)になることです。

平田 隆

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――ジャパンオープンへの思いを聞かせてください。

平田 日本選手権への登竜門と考えています。ですからジャパンオープンでなんとしてでも上位進出を果たさない限り、日本選手権への道は開けてこないと思っています。

――初めて出場したのは07年ですね。どんな印象を持ちましたか?

平田 舞台に立つまでは、ぎりぎり決勝には残れるかも知れないと思っていましたが、実際に舞台に立ってみるとみんなすごい体をしており、レベルの高さを痛感し予選通過は無理だなと思いました。結果は予想通り、ぎりぎりでしたが予選落ちでした。
2007年ジャパンオープン。予選落ちだった

2007年ジャパンオープン。予選落ちだった

――その後のジャパンオープンの戦歴について教えてください。

平田 08年は出場せず、09年は予選落ち、10年は出場の申し込みはしていたのですが大会の2ヵ月ほど前に交通事故に遭い、十分なトレーニングができず辞退しました。

――そして3度目の挑戦となった11年を振り返っていかがでしたか。

平田 初出場のときより自分では減量もスムースにいき、体調も良く本番を迎えることができたと思います。予選は通過するだろうと考えていました。しかし、自己評価よりも第三者の評価は厳しく、現実を思い知らされました。特に背面はバルクを少しでも多く残したほうがいいだろうと思って仕上げて臨んだのですが、それが甘かった。会長からも甘い、と指摘を受けました。前面は早く絞り込めるのですが、背面はなかなか自分では思うように絞り込めずいつも悩まされている箇所なんです。それからは背中からハムストリングスまでは、絞り込まなければならないと強く思いました。

――1か月後にはミスター西日本に出場しましたが、そのあたりを意識してトレーニングしましたか。

平田 ジャパンオープンの反省を踏まえて背面の絞り込みを意識しましたね。結果を出すことができ、それなりの手応えは感じ取ることができたように思います。しかし、ジャパンオープンのレベルを考えるとまだまだ。さらに絞り込まないと上位での勝負はできないことは分かっています。

――トレーニングのやり方を変えた点はありますか?

平田 いまのところ変えていませんが、背面全体を強く意識してトレーニングを行なっています。脚の日はバックキックを最初に多用し、ハムストリングと大殿筋の境目をねらい、背中の日はロープーリーロウでは最大の重さでアイソメトリックしています。
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――食事の面とかはいかがですか。

平田 食事の内容は変えていませんが、減量の最後のほうの塩抜き、水抜きをどうやるか、そこが課題でどう工夫しようか思案中です。

――ジャパンオープンでは「自分のここを見て欲しい」というところはありますか。

平田 やはり私の持ち味であるバルク。でもバルクだけあってもだめで、カット、ようするにキレがないと意味がない。できればバルクをかなり残したうえでキレを出した体を見てもらいたいです。

――キレのある体をより引き立てるのがポージングですが、どれくらい前からポージングの練習に力を入れ始めますか。

平田 大会の1か月前から。特に規定ポーズには時間をかけ、姿勢、形、力の入れ具合のほか、ライティング、審査員の目線なども考慮して会長からアドバイスを受けます。フロントは鏡を見ながら時には自分一人で矯正もやれますが、バックは自分で見られないためそうはいきません。ちょっとした足の置き方や出し方で微妙に変わってしまう。反りすぎたり、逆に縮んだりすることによって良い部分を消してしまい、命取りになる。どこが自分にとって理想的な位置取りになるかを確認しつつ、そこへ自然にスッと足を置けるようになるには、くり返しくり返し行なって体に覚え込ませるしかありません。

――練習は本番のように、本番は練習のようにということでしょうか。

平田 そうですね。本番の時に、無意識のうちに練習の時のようなポージングができるようになりたいものです。

――今年の大会では、特に意識するライバルの方はいらっしゃいますか。

平田 特にライバルと言われると困りますが、出場選手全員でしょうか。みなさんそれぞれにすごいキャリアの持ち主ばかり。必死になってトレーニングを積んで来ると思いますが、私もそれ以上にトレーニングに励むつもりです。

――ジャパンオープンの後の目標についてお聞かせください。

平田 日本選手権入賞ですが、そのためにもまずジャパンオープンでいい成績を残して弾みをつけたいです。そして、いずれ機会があれば海外のコンテストにも出場してみたいですね。
  • 金子芳宏(かねこ・よしひろ)
    職業: 家業の和菓子製造販売
    所属:スポーツマインド寒川
    誕生日:1972年10月7日生まれ(39歳)
    出身地:東京都世田谷区
    身長:172cm
    体重:78.8㎏(11年ジャパンオープン時)、86㎏(今年の調整入る前)、今年81㎏で出場予定
    家族 :妻 娘(2才6ヶ月)
    趣味:ネットショッピング、ゴロゴロする事、子供と遊ぶ事
    ボ歴:21年

    <主なタイトル>
    2001年 ミスター神奈川
    2004年 東日本
    2009年 ミスター関東

  • 小松慎吾(こまつ・しんご)
    職業:トレーナー(トレーニングスタジオフィジィーズ)
    所属:トレーニングスタジオフィジィーズ
    誕生日:1985年12月20日(26歳)
    出身地:長野県
    身長:169cm
    体重:オン77kg(2011年ジャパンオープン)、オフ84kg(2012年4月1日時)
    趣味:お腹いっぱい食べる事
    トレーニング歴:8年
    コンテスト歴:6年

    <主なタイトル>
    2007年 全日本学生ボディビル選手権優勝
    2009年 ミスター長野優勝

  • 平田 隆(ひらた・たかし)
    職業:会社員
    所属:スポーツジム・アトラス
    誕生日:1970年9月14日生まれ(41歳)
    出身地:京都府舞鶴市
    身長:176㎝
    体重:97㎏(オフ)、85㎏(オン)

    <主なコンテスト歴>
    2004年 ミスター京都優勝
    2004年 関西クラス別75kg超級優勝
    2008年 日本クラス別90㎏級2位
    2008年 ミスター関西優勝
    2011年 ミスター西日本優勝

text:
MAYUKO SATO
[ 月刊ボディビルディング 2012年9月号 ]