日本最高齢女性パワーリフター
奥村正子
[ 月刊ボディビルディング 2013年8月号 ]
掲載日:2017.08.09
皆さんは、サルコペニア(SARCOPENIA)という名称を聞いた事がありますか?
サルコペニアを簡単に説明すると、老化現象で身体の筋肉量が減少して行く状態をいいます。男性では50歳代半ばから顕著になり、進行はその後も断続的に続いて行くらしい、筋肉マンにとっては何とも厄介な現象です。私は今年還暦を迎えますが、サルコペニアという老化現象を以前から小耳にはしていました。しかし、ここ2~3年自分自身が急激なサルコペニア現象に直面し、競技者として己の肉体を思うようにコントロール出来なくなった現実の厳しさを突きつけられています。そんな折り今回ご紹介する奥村正子さんから私は勇気と沢山の元気を頂きました。
私は、選手としてのピークは既に過ぎたものの、可能な限り全日本一般の部で戦い続けて行く覚悟でいます。今回奥村さんに話しを伺って、20年後の自分自身をオーバーラップさせる事で、〝生涯リフター〟としての明確な目標設定を定める事が出来たからです。
去る4月にチェコのプラハにおいて世界マスターズベンチプレス選手権大会が開催され、日本から39名もの大選手団が出場しました。その中で茨城県から今年83歳になる奥村正子さんが出場され、47㎏級で2回の試技を成功させ42.5㎏で見事優勝を果たされました。世界マスターズは、40歳以上でカテゴリーが10歳単位で分けられ、奥村さんは80歳代部門で優勝されました。
奥村さんは今大会の出場選手中最高齢選手であり、私が知り得る限り日本女子リフターとしても国内最高齢の選手になります。
日本はこれから益々高齢化社会になります。当然の事ながらその波は、我々のパワーリフティング競技界にも押し寄せて来る訳です。今回奥村さんを読者の皆様に紹介する事で、私と同じようにサルコペニア現象に苦しんでいる方はもちろんの事、これからマスターズを迎えるサルコペニア予備軍の方々にも、今後の健康人生の指針として奥村さんの元気を共に分かち合って頂きたいと思います。
以下は、Q&A方式で奥村さんにお答え頂きました(Q:伊差川浩之、A:奥村正子さん)。
Q:世界マスターズベンチ優勝おめでとうございます! 初っぱなからで恐縮ですが生年月日、身長、体重、血液型を教えてください。
A:1930年(昭和5年)7月7日生まれで、身長156cm、体重47㎏、血液型はB型です。
Q:幼少期のスポーツ歴を教えてください。
A:戦中.戦後だったので特にありません。
Q:ご結婚時期は、お子様は何人ですか?
A:結婚は昭和31年で、子供は男子2名です。
Q:ご主人様はどのような方ですか?
A:主人は、典型的な昔の職人堅気でお人好しです。
Q:お仕事はされましたか?
A:子育て中は、典型的な家庭の主婦でした。職歴は、昭和42年から54年まで在日米陸軍座間基地に勤務しておりました。退職後は、主人の経営する自動車修理工場の経理と手伝いを行っておりました。
Q:パワーリフティングを始められたきっかけについて教えてください。また開始時期はいつ頃でしょうか?
A:開始時期は平成16年の2月6日です。きっかけは、主人の車に同乗して居て後ろから追突され、主人が頸椎損傷により左肩に激痛が出て、左腕が上がらなくなりました。毎日痛み止めの注射を打ち続けていたところ、外国より帰国した息子に「注射ばかり打ち続けて一時凌ぎは良いが、骨がボロボロになってしまう。時間を掛けてリハビリをしなさい」と言われ、二人でトレーニング場に通い始めて、私はベンチプレスに、主人はパワーリフティングに出会ったのが始まりです。始めた時は、10㎏のベンチプレスがやっとでした。74歳の時です。今年の七夕が来ると83歳になります。公式ベスト記録は47㎏級で45㎏です。
Q:そうでしたか。では、これまでの主なタイトルを教えてください。
A:国内ではシングルベンチプレス女子47㎏級の国内最高齢日本記録の42.5㎏です。公式ベスト記録は、47㎏級で45㎏です。そして今回の世界マスターズベンチで47㎏級世界最高齢記録の42.5㎏です。
Q:普段のトレーニングはどのように行っていますか?
A:始めた頃より現在の方が練習量は多くなっています。それは自分流に考えて一日一日肉体は老化して行きますので、甘やかすと直ぐに怠けてしまいますので、宥めながら行っています。
Q:可能な範囲で具体的に教えてください。
A:基本は週3回です。試合前と普段の方法は変えています。但し私の場合は、いろいろ先輩.諸先生方の本を購読しながら、自分に合った練習方法を模索しながらです。何故って? 未だ先輩.諸先生方は私の様に後期高齢者ではないので、解らないと思いますので…。土日を休養日にあて、月曜日を重い日にしています。
月曜日:W|UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1セット、30㎏×6×1、40㎏×5×1、42.5㎏×3×2、45㎏×1×2、47.5㎏×1×1、C―DN(ストレッチ)
水曜日:W―UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1セット、30㎏×8×2、40㎏×6×2、プレスダウン、ラットマシンプルダウン、エアロバイク30分、C―DN(ストレッチ+バタフライ)
金曜日:(前日の木曜日に陶芸があり、肩を使っているため無理をしない)W―UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1回、30㎏×6×2、40㎏×5×2、42.5㎏×3×1、ウオーキング30分、エアロバイク20分
以上が普段の基本練習です。回数や重量の調整は肩の調子を見て行っています。これが果たして合っているかは解りません。トレーナーや指導者が居るわけではありませんので、試行錯誤の状況です。
Q:普段の食事はどの様に摂られていますか?
1日の主な食事パターンについてお聞かせください。
A:食事は、10年来同じパターンの毎日です。常識的に正しいかどうかは解りませんが。当家では、1日の中で一番重きを置いているのが朝食です。朝からステーキ、焼き肉、餃子、鰻、まぐろの漬け丼など、それに野菜、納豆は欠かせません。
練習のある日の帰りに買い物をして来ますので、お昼は2時過ぎになりますが、放し飼いにしている鶏の卵にチーズを入れた物を中心に、野菜炒めや酢の物など色々です。
夜は、基本的に私はヨーグルト、果物だけです。飲み物は、コーヒー、紅茶が好きです。間食、外食は一切しません。
Q:お好きな食べ物は何でしょうか?
A:特に好き嫌いはありませんが、甲殻類はコレステロールが高くなるので敬遠しています。
Q:お酒はお飲みになりますか?
A:ワインが一番好きです。飲みたくなった時に飲みますが、外では一切飲みません。
Q:サプリメントは摂られていますか?
A:サプリメントは自分流で、普段は、朝食後にマルチビタミン、練習前にBCAA、練習中にプロテインなどを摂っています。また試合一ヶ月前からクレアチンも摂ります。
Q:パワーリフティングを始められて健康とか?体型とか? 気持ちとか?
で、何か変化した事はありますか?
A:年齢を重ねると病気になりがちなので、15年くらい前から夫婦共3ヶ月毎に血液検査を中心に、心臓検査など主治医の先生にお任せしています。歯は、半年に一度噛み合せの確認をして頂いています。これも安心してベンチプレスを楽しむ為です。体型は、出産以来変わりません。年を重ねてもこんなにベンチプレスって楽しいものか?と、本当に毎日を楽しく過ごしています。
Q:奥村さんにとってパワーリフティングの魅力とは何でしょうか?
A:続けていれば報われる事。挙上重量が増えた時の充実感です。
Q:今回の世界マスターズベンチは初の国際大会ですね? 出場を決められた理由をお聞かせください。
A:私が後期高齢者になって、まさか世界マスターズベンチに出場するなんて…、夢にも思ってもみませんでした。そのきっかけを作って下さった方々が全日本実業団連盟理事長の河部勝次氏と東京協会理事の物江毅氏です。昨年の全日本実業団ベンチでお会いした際、両氏から「今年の世界マスターズベンチで、84㎏級で82歳になるアメリカの選手が25㎏を挙げて、会場から大喝采を浴びていた。奥村さんならもっと挙げられる!」と言われました。本来お調子者の私は、煽てられるとついその気になって高い木(今大会)に登った次第です。
Q:今回初めての海外遠征で長時間のフライト、しかも到着されて翌日の試合で、調整面でかなり大変だった事かとお察ししますが、結果を含めての感想をお聞かせください。
A:先ず私の常識は非常識だったという事です。今迄減量に苦労した事が無かったので、今回早朝からの検量直前までの減量調整は、本当に大変でした。しかし、検量が第一関門でそれにパスしなければ今迄練習して来た事や、飛行機に長時間乗って遠くまで来た事の総てが水の泡に期しますので、死に物狂いでした。幸いにして47㎏ピッタリで通過出来、検量に立ち会われたドイツの審判Ms.Thomsen Kerst さんも大喜びで、ハグをしてくれました! 表彰式で金メダルを掛けて貰った時は減量の苦労が報われた瞬間で、日の丸を持っての表彰台は、本当に感動で涙が溢れました。普段テレビで良く見る光景ですが、自分がまさか!? と、感謝と感動の一瞬でした。これから幾ら余命があるか解りませんが、生涯忘れる事の無い瞬間でした。
Q:今大会全選手中最高齢での参加となりましたが、それについてご感想は?
A:皆様に「一番高齢で大変だったでしょう」と言われますが、自分自身は余り年齢を気にした事はありませんで、今回初めて参加させて頂けた事に感謝のみです。
Q:これからも世界大会を目指されますか?
A:今回参加した外国の方々からも「来年はイギリスで会いましょう! きっとね!」と、堅い握手やハグをして頂きました。私の答えは〝出来たらね〟でしたが、何故かというと来年は84歳になるから〟です。「貴女ならできる!」と言われたので、健康であるならば、もう一度大木に登ってみますか!?
Q:現在もその素晴らしい体型を維持される為に練習以外に努力されている事はありますか?
A:特別何もありません。食事+睡眠+運動だけです。
Q:昨今は、サブジュニア、ジュニアなど若い層の全国大会や国際大会も盛んに行われていますが、これからの若い選手ヘメッセージをお願いします。
A:人生は二度ありません。何事にも信念を持って挫けないで。苦しみの後には、必ず何倍かの楽しみがありますから…。
Q:私を含め生涯リフターを目指す選手へもメッセージを頂けますか?
A:先ず健康に気をつけ、怪我を絶対しない事。怪我をするような無理な練習はしない事。私が一番気をつけている事です。
Q:今後の目標については如何でしょうか?
A:85歳まで現状維持が出来れば良いと思っていますが、最近周りから「90歳まで」、何て言われはじめて。目標変更で頑張ってみようかな…。
Q:ご趣味など、パワーリフテイング以外で好きな事はありますか?
A:ゴルフ歴30年ですが、ベンチプレスに目覚めてから足が遠のいています。ボケ防止に始めた陶芸が12年になりますが、肩を使うので大会一ヶ月前からはお休みしています。
Q:座右の銘は?
A:成せばなる。練習あるのみ。
Q:理想の男性像は?
A:外見だけでは見分けられないので、大変難しい質問ですね。やはり主人かな? ウフフ…。
Q:奥村さん、今回は快くインタビューにお付き合い下さり有り難うございました。奥村さんの頑張りは私を含め全国の多くのリフターに大きなインパクトをもたらした事と思います。私も奥村さんを目指して90歳まで挙げ続けます! 最後になりますが、何かありましたらお願いします。
A:今回世界マスターズベンチに初出場し解らない事ばかりの私の為に、団長はじめ役員の皆様、そして選手の皆様にはお心遣いを頂き、心より厚くお礼申し上げます。
一言で言えば感動、感動の4日間でした。先ず減量に失敗し、恐る恐る検量でしたが、何と47㎏ピタリで通過する事が出来ました。その時に立ち会われたMs. Thomsen Kerst さんが、まるで自分の事のように喜び、握手とハグまでしてくれました。これこそが国際試合でしか味わえない快感でした。何とか検量も無事にパスし、試技では3本全て成功出来なかった事が悔やまれますが、金メダルを獲れた事は神様がくれたご褒美だと思っています。表彰式に臨んだ時の事ですが、同僚選手から日の丸の旗を渡され表彰台に上がり、国歌斉唱が始まった瞬間、減量の酷しかった事が思い出され、感極まり涙が溢れてしまいました。私の人生で一番輝き感動の一瞬でした。
人生って幾つになっても本当に素晴らしい事に出会えるものですね。この感動を忘れずに、次の感動を得る為に頑張るつもりです。これからもボケず、健康であるかぎり生涯スポーツであるベンチプレスを続けて行くつもりでいますので、宜しくご指導ご鞭撻の程お願い致します。有り難うございました。
サルコペニアを簡単に説明すると、老化現象で身体の筋肉量が減少して行く状態をいいます。男性では50歳代半ばから顕著になり、進行はその後も断続的に続いて行くらしい、筋肉マンにとっては何とも厄介な現象です。私は今年還暦を迎えますが、サルコペニアという老化現象を以前から小耳にはしていました。しかし、ここ2~3年自分自身が急激なサルコペニア現象に直面し、競技者として己の肉体を思うようにコントロール出来なくなった現実の厳しさを突きつけられています。そんな折り今回ご紹介する奥村正子さんから私は勇気と沢山の元気を頂きました。
私は、選手としてのピークは既に過ぎたものの、可能な限り全日本一般の部で戦い続けて行く覚悟でいます。今回奥村さんに話しを伺って、20年後の自分自身をオーバーラップさせる事で、〝生涯リフター〟としての明確な目標設定を定める事が出来たからです。
去る4月にチェコのプラハにおいて世界マスターズベンチプレス選手権大会が開催され、日本から39名もの大選手団が出場しました。その中で茨城県から今年83歳になる奥村正子さんが出場され、47㎏級で2回の試技を成功させ42.5㎏で見事優勝を果たされました。世界マスターズは、40歳以上でカテゴリーが10歳単位で分けられ、奥村さんは80歳代部門で優勝されました。
奥村さんは今大会の出場選手中最高齢選手であり、私が知り得る限り日本女子リフターとしても国内最高齢の選手になります。
日本はこれから益々高齢化社会になります。当然の事ながらその波は、我々のパワーリフティング競技界にも押し寄せて来る訳です。今回奥村さんを読者の皆様に紹介する事で、私と同じようにサルコペニア現象に苦しんでいる方はもちろんの事、これからマスターズを迎えるサルコペニア予備軍の方々にも、今後の健康人生の指針として奥村さんの元気を共に分かち合って頂きたいと思います。
以下は、Q&A方式で奥村さんにお答え頂きました(Q:伊差川浩之、A:奥村正子さん)。
Q:世界マスターズベンチ優勝おめでとうございます! 初っぱなからで恐縮ですが生年月日、身長、体重、血液型を教えてください。
A:1930年(昭和5年)7月7日生まれで、身長156cm、体重47㎏、血液型はB型です。
Q:幼少期のスポーツ歴を教えてください。
A:戦中.戦後だったので特にありません。
Q:ご結婚時期は、お子様は何人ですか?
A:結婚は昭和31年で、子供は男子2名です。
Q:ご主人様はどのような方ですか?
A:主人は、典型的な昔の職人堅気でお人好しです。
Q:お仕事はされましたか?
A:子育て中は、典型的な家庭の主婦でした。職歴は、昭和42年から54年まで在日米陸軍座間基地に勤務しておりました。退職後は、主人の経営する自動車修理工場の経理と手伝いを行っておりました。
Q:パワーリフティングを始められたきっかけについて教えてください。また開始時期はいつ頃でしょうか?
A:開始時期は平成16年の2月6日です。きっかけは、主人の車に同乗して居て後ろから追突され、主人が頸椎損傷により左肩に激痛が出て、左腕が上がらなくなりました。毎日痛み止めの注射を打ち続けていたところ、外国より帰国した息子に「注射ばかり打ち続けて一時凌ぎは良いが、骨がボロボロになってしまう。時間を掛けてリハビリをしなさい」と言われ、二人でトレーニング場に通い始めて、私はベンチプレスに、主人はパワーリフティングに出会ったのが始まりです。始めた時は、10㎏のベンチプレスがやっとでした。74歳の時です。今年の七夕が来ると83歳になります。公式ベスト記録は47㎏級で45㎏です。
Q:そうでしたか。では、これまでの主なタイトルを教えてください。
A:国内ではシングルベンチプレス女子47㎏級の国内最高齢日本記録の42.5㎏です。公式ベスト記録は、47㎏級で45㎏です。そして今回の世界マスターズベンチで47㎏級世界最高齢記録の42.5㎏です。
Q:普段のトレーニングはどのように行っていますか?
A:始めた頃より現在の方が練習量は多くなっています。それは自分流に考えて一日一日肉体は老化して行きますので、甘やかすと直ぐに怠けてしまいますので、宥めながら行っています。
Q:可能な範囲で具体的に教えてください。
A:基本は週3回です。試合前と普段の方法は変えています。但し私の場合は、いろいろ先輩.諸先生方の本を購読しながら、自分に合った練習方法を模索しながらです。何故って? 未だ先輩.諸先生方は私の様に後期高齢者ではないので、解らないと思いますので…。土日を休養日にあて、月曜日を重い日にしています。
月曜日:W|UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1セット、30㎏×6×1、40㎏×5×1、42.5㎏×3×2、45㎏×1×2、47.5㎏×1×1、C―DN(ストレッチ)
水曜日:W―UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1セット、30㎏×8×2、40㎏×6×2、プレスダウン、ラットマシンプルダウン、エアロバイク30分、C―DN(ストレッチ+バタフライ)
金曜日:(前日の木曜日に陶芸があり、肩を使っているため無理をしない)W―UP(バタフライ+ストレッチ)の後、20㎏×8回×1回、30㎏×6×2、40㎏×5×2、42.5㎏×3×1、ウオーキング30分、エアロバイク20分
以上が普段の基本練習です。回数や重量の調整は肩の調子を見て行っています。これが果たして合っているかは解りません。トレーナーや指導者が居るわけではありませんので、試行錯誤の状況です。
Q:普段の食事はどの様に摂られていますか?
1日の主な食事パターンについてお聞かせください。
A:食事は、10年来同じパターンの毎日です。常識的に正しいかどうかは解りませんが。当家では、1日の中で一番重きを置いているのが朝食です。朝からステーキ、焼き肉、餃子、鰻、まぐろの漬け丼など、それに野菜、納豆は欠かせません。
練習のある日の帰りに買い物をして来ますので、お昼は2時過ぎになりますが、放し飼いにしている鶏の卵にチーズを入れた物を中心に、野菜炒めや酢の物など色々です。
夜は、基本的に私はヨーグルト、果物だけです。飲み物は、コーヒー、紅茶が好きです。間食、外食は一切しません。
Q:お好きな食べ物は何でしょうか?
A:特に好き嫌いはありませんが、甲殻類はコレステロールが高くなるので敬遠しています。
Q:お酒はお飲みになりますか?
A:ワインが一番好きです。飲みたくなった時に飲みますが、外では一切飲みません。
Q:サプリメントは摂られていますか?
A:サプリメントは自分流で、普段は、朝食後にマルチビタミン、練習前にBCAA、練習中にプロテインなどを摂っています。また試合一ヶ月前からクレアチンも摂ります。
Q:パワーリフティングを始められて健康とか?体型とか? 気持ちとか?
で、何か変化した事はありますか?
A:年齢を重ねると病気になりがちなので、15年くらい前から夫婦共3ヶ月毎に血液検査を中心に、心臓検査など主治医の先生にお任せしています。歯は、半年に一度噛み合せの確認をして頂いています。これも安心してベンチプレスを楽しむ為です。体型は、出産以来変わりません。年を重ねてもこんなにベンチプレスって楽しいものか?と、本当に毎日を楽しく過ごしています。
Q:奥村さんにとってパワーリフティングの魅力とは何でしょうか?
A:続けていれば報われる事。挙上重量が増えた時の充実感です。
Q:今回の世界マスターズベンチは初の国際大会ですね? 出場を決められた理由をお聞かせください。
A:私が後期高齢者になって、まさか世界マスターズベンチに出場するなんて…、夢にも思ってもみませんでした。そのきっかけを作って下さった方々が全日本実業団連盟理事長の河部勝次氏と東京協会理事の物江毅氏です。昨年の全日本実業団ベンチでお会いした際、両氏から「今年の世界マスターズベンチで、84㎏級で82歳になるアメリカの選手が25㎏を挙げて、会場から大喝采を浴びていた。奥村さんならもっと挙げられる!」と言われました。本来お調子者の私は、煽てられるとついその気になって高い木(今大会)に登った次第です。
Q:今回初めての海外遠征で長時間のフライト、しかも到着されて翌日の試合で、調整面でかなり大変だった事かとお察ししますが、結果を含めての感想をお聞かせください。
A:先ず私の常識は非常識だったという事です。今迄減量に苦労した事が無かったので、今回早朝からの検量直前までの減量調整は、本当に大変でした。しかし、検量が第一関門でそれにパスしなければ今迄練習して来た事や、飛行機に長時間乗って遠くまで来た事の総てが水の泡に期しますので、死に物狂いでした。幸いにして47㎏ピッタリで通過出来、検量に立ち会われたドイツの審判Ms.Thomsen Kerst さんも大喜びで、ハグをしてくれました! 表彰式で金メダルを掛けて貰った時は減量の苦労が報われた瞬間で、日の丸を持っての表彰台は、本当に感動で涙が溢れました。普段テレビで良く見る光景ですが、自分がまさか!? と、感謝と感動の一瞬でした。これから幾ら余命があるか解りませんが、生涯忘れる事の無い瞬間でした。
Q:今大会全選手中最高齢での参加となりましたが、それについてご感想は?
A:皆様に「一番高齢で大変だったでしょう」と言われますが、自分自身は余り年齢を気にした事はありませんで、今回初めて参加させて頂けた事に感謝のみです。
Q:これからも世界大会を目指されますか?
A:今回参加した外国の方々からも「来年はイギリスで会いましょう! きっとね!」と、堅い握手やハグをして頂きました。私の答えは〝出来たらね〟でしたが、何故かというと来年は84歳になるから〟です。「貴女ならできる!」と言われたので、健康であるならば、もう一度大木に登ってみますか!?
Q:現在もその素晴らしい体型を維持される為に練習以外に努力されている事はありますか?
A:特別何もありません。食事+睡眠+運動だけです。
Q:昨今は、サブジュニア、ジュニアなど若い層の全国大会や国際大会も盛んに行われていますが、これからの若い選手ヘメッセージをお願いします。
A:人生は二度ありません。何事にも信念を持って挫けないで。苦しみの後には、必ず何倍かの楽しみがありますから…。
Q:私を含め生涯リフターを目指す選手へもメッセージを頂けますか?
A:先ず健康に気をつけ、怪我を絶対しない事。怪我をするような無理な練習はしない事。私が一番気をつけている事です。
Q:今後の目標については如何でしょうか?
A:85歳まで現状維持が出来れば良いと思っていますが、最近周りから「90歳まで」、何て言われはじめて。目標変更で頑張ってみようかな…。
Q:ご趣味など、パワーリフテイング以外で好きな事はありますか?
A:ゴルフ歴30年ですが、ベンチプレスに目覚めてから足が遠のいています。ボケ防止に始めた陶芸が12年になりますが、肩を使うので大会一ヶ月前からはお休みしています。
Q:座右の銘は?
A:成せばなる。練習あるのみ。
Q:理想の男性像は?
A:外見だけでは見分けられないので、大変難しい質問ですね。やはり主人かな? ウフフ…。
Q:奥村さん、今回は快くインタビューにお付き合い下さり有り難うございました。奥村さんの頑張りは私を含め全国の多くのリフターに大きなインパクトをもたらした事と思います。私も奥村さんを目指して90歳まで挙げ続けます! 最後になりますが、何かありましたらお願いします。
A:今回世界マスターズベンチに初出場し解らない事ばかりの私の為に、団長はじめ役員の皆様、そして選手の皆様にはお心遣いを頂き、心より厚くお礼申し上げます。
一言で言えば感動、感動の4日間でした。先ず減量に失敗し、恐る恐る検量でしたが、何と47㎏ピタリで通過する事が出来ました。その時に立ち会われたMs. Thomsen Kerst さんが、まるで自分の事のように喜び、握手とハグまでしてくれました。これこそが国際試合でしか味わえない快感でした。何とか検量も無事にパスし、試技では3本全て成功出来なかった事が悔やまれますが、金メダルを獲れた事は神様がくれたご褒美だと思っています。表彰式に臨んだ時の事ですが、同僚選手から日の丸の旗を渡され表彰台に上がり、国歌斉唱が始まった瞬間、減量の酷しかった事が思い出され、感極まり涙が溢れてしまいました。私の人生で一番輝き感動の一瞬でした。
人生って幾つになっても本当に素晴らしい事に出会えるものですね。この感動を忘れずに、次の感動を得る為に頑張るつもりです。これからもボケず、健康であるかぎり生涯スポーツであるベンチプレスを続けて行くつもりでいますので、宜しくご指導ご鞭撻の程お願い致します。有り難うございました。
今年の世界マスターズ選手権にて第3試技 45 ㎏に挑む奥村選手
80 歳代で見事優勝
今年の世界マスターズベンチプレスへ参加した日本選手団
奥村選手と筆者
文中に名前が何度か登場したMs.Kerst
文/ POWERSPORT- 伊差川浩之
写真/物江毅
写真/物江毅
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