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新ナルシスな奴ら!Vol.20
若月明浩

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[ 月刊ボディビルディング 2013年11月号 ]
掲載日:2017.08.18
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わかつき・あきひろ/1971年11 月30 日生まれ(41 歳)/身長175cm・体重70kg(オン)78kg(オフ)/職業:バス運転士/趣味:食べ歩き/スポーツ歴:陸上(中学3年間)/大会出場歴:2004 年神奈川県クラス別70kg 級2位、2013 年神奈川県オーバーオール10 位
 今回登場の若月選手は、ジムで黙々とトレーニングに取り組み鍛練を行なうトレーニーの一人です!

 普段からトレーニング中に肉体を露出しないのですが年間を通し研ぎ澄まされたリーンボディはナルシスの知るところいつでも大会出場OKな状態!その素晴らしい肉体の秘訣に迫りました。

ナルシス(以下NY)本日はよろしくお願いします。早速ですがトレーニングのきっかけを教えて下さい。
若月(以下AW)トレーニング自体は中学2年の時から始めました。水泳をしていた兄が、だんだん上半身の筋肉がついてきた一方、自分は陸上部でガリガリな体型でした。ある時、兄に鏡の前に呼ばれ「俺の筋肉を見てみろ!
 お前、そんな身体じゃ女を守れないな」と言われまして。「こんちきしょう!」と思って、その日から腕立て伏せを50回10セットやりはじめ、日を追うごとに段々回数を増やしていったところ、中学卒業の頃には腕立て伏せを毎日1200回に! 暇さえあればやっていました(笑)。今から思えばストリクトなフォームではなくパーシャル的でしたけど。

NY それにしても凄いよ!
AW きっかけになった兄の言葉は今でも鮮明に耳に残っています。

NY 思春期の気持ちは凄いパワーを生むね!ではその後は?
AW 中学時代は自重トレーニングで終わったんですが、高校に入ってからは学校内の倉庫にバーベルがあったのでベンチプレスをしてみたら「これは楽しい」と感じまして。友達同士でワイワイやっていました。
 そして高校2年生の年末年始休み中、友達と雑誌を見ていたら、最後のページに関内駅前のタザキジムの広告が載っていて。「年末なのに今日も営業しているじゃないか!」ということで友達とタザキジムを訪ねたのです。当時いらしたトレーナーの大貫さんに説明を受け即入会をしました。それからはだんだんバーベルトレーニングの楽しさを知り、朝からトレーニングに行くようになりました。

NY 学校前の早朝トレーニングだ!
AW いえ…10時頃にタザキに行き、学校へは午後から行きました(笑)。

NY それは問題だね~(笑)。タザキ時代はどんなトレーニングをしていた?
AW 基本種目でしたが、特にベンチプレスが好きで、1時間以上はやるのが当たり前でした。他にはデッドリフトやスクワットもやりましたがあまり好きじゃなくて(ちなみにその後怪我をし、その影響から現在まで20 年間デッドリフトやスクワットは行なっていないとのこと)。またトレーナーの大貫さんからは「大きくなりたいなら食事をしっかり食べなさい」と指導されたので、アドバイス通り食べるようになりました。暇さえあれば口に入れるようにしていたので、入会当時は体重が68㎏だったのが、約1年後の高3の終わり頃には96 ㎏まで増えていました。

NY 凄いバルクアップだね!
AW 弁当は3つは持って行きましたし、2時間おきに食べていました。でも、ほとんど炭水化物でした。

NY 当時はプロテインなどは?
AW 一つ上の兄もジムに入っていたので、一緒の時には兄のお小遣で飲んでいたぐらいです。

NY タンパク質というよりは、何でも食べるということに専念してのバルクアップだった訳だね。
AW はい、そうですね。

NY その後は?
AW タザキの大貫さんの紹介で高校卒業後は陸上自衛隊に入隊し、富士の滝ケ原駐屯地に所属しました。そこにもジムがあったので、同じようにトレーニングを続けました。4年後に除隊したのちは近所のスポーツクラブでトレーニングをしていましたが、近所にボディビルジムのダイヤモンドジムがあることを知りまして。さっそく行ってみたところ、現在も活躍なさっているボディビルダーの国塚さん(神奈川県チャンピオンで2013年関東クラス別70㎏級優勝)や櫻さん(神奈川県チャンピオン)がいました。こういった先輩方の影響を受け、それからは全身トレーニングをするようになりました。

NY 全身トレーニングをスタートさせるまでにかなり長い期間かかったね!
AW バルクアップには興味がありましたが、ビルパンを履いて舞台に立つことなんて、まったく興味がなくて。

NY ではいつ頃から大会への意識をし始めたの?
AW 今は亡くなってしまった父は生前、人工透析から始まり肺気腫になるなど、不治の病で転々と入院しながら闘病生活をしていました。頑張っている父の姿を見ているうちに「俺も何か頑張ってみよう!何ができるか…ボディビルだ!」と2003年に決意して、国塚さんからアドバイスをもらって、食事を変えながら20㎏以上絞り、2004年に神奈川県クラス別大会70㎏級に出場し、準優勝しました。

NY 頑張った結果、好成績を残せたけど、初めての減量で20㎏以上はきつかったでしょ!?
AW 本当にきつかったですね。

NY でもお父さんへの思いがあったから乗り越えられたんじゃない?
AW そうだと思います。

NY お父さんへの報告はできたの?
AW できました。喜んでくれて、ビデオを病院に持って行き見せたのですが、見終わったら父が「明浩、終わったか? 実はもう目も見えないんだ」と申し訳なさそうに言うのです。思わず涙が溢れてきました。

NY そんなことがあったんだ!でも良い報告ができたのは本当に良かったね。お父さんへは出場した決意や真意は伝えていたの?
AW 伝えていました。

NY お父さんは、何か言っていた?
AW 「ありがとう」と、一言。結果報告をした時には「よく頑張ったな」と褒めてくれました。その後しばらくして父は他界しました。

NY 胸がグッと熱くなるボディビルのスタート秘話ですね。その後8年間出場していなかったのは、どうして? 燃え尽きた?
AW それもありましたが、子どもがまだ小さく、奥さんにはかなり迷惑をかけていたので「これ以上迷惑はかけられない」と思い、大会に出るのは控えていました。でもトレーニングだけは継続していました。

NY では、今回出場するきっかけになったのは?
AW 自分は仕事にかまけて、息子にはたいして構ってやれていなかったのですが、ある時、息子の所属する野球チームの練習を見に行きまして。所属している金沢スカイヤーズは二つの県大会を制した強豪チームなのですが、小学生の練習とは思えないほどハードで、低学年から入団している他の子どもたちの高いレベルの練習に、遅れて入った息子が必死に頑張って付いていっている姿や、また周りの子ども達の頑張っている姿に凄く刺激を受けまして、「自分も頑張ろう!」と思い、再度出場を決意した訳です。でも本当は昨年出場する予定だったのですが、調整途中で盲腸になってしまいまして…。

NY なるほど! 家族への愛! パワーだね! 大会へは家族みんな応援に来てくれた?
AW はい。嫁や子どもがゼッケンナンバーや名前を叫んで応援してくれて。嫁は普段そんなに大声を出すようなタイプではないのに、一生懸命応援してくれて。舞台上にしっかり声が届いていたので、凄く力になりました。

NY いい話だね!
AW 大会出場にあたり、食事は昨年の調整から一切緩めずにやり通したんです。

NY やはり!どおりで常にトップコンディションだった訳だ!頭が下がるよ。
AW ちなみに盲腸の後に国塚さんから「プロテインを飲んでみたら?」と何気なく言われたので、学生時代以来ぶりにプロテインを飲み始めました。

NY それまで食事のみからのタンパク質補給だったんだ?
AW はい(笑)。

NY 食事からしっかり補給できていれば問題はないからね。キレキレの素晴らしい肉体を披露してくれた訳だけど、それにまつわるエピソードなどはある?
AW 泊まり勤務もあったりと不規則な仕事上、タンパク質はもっぱらツナ缶で補給していました。そこで嫁とダイエーに行き、ツナ缶をまとめて800缶、段ボール4箱強買ったのですが、レジでは私たちの後ろに誰も並ぼうとしていませんでした(笑)。

NY 800個も! そりゃ半端じゃない数だね~。聞いたためしがないよ(笑)。では、大会に向けたマッスルアップのトレーニングルーティーンを教えて?
AW ①ハム・カーフ ②大腿四頭 ③胸④背 ⑤肩 ⑥腕です。一日一部位トレーニングです。職業柄、生活が不規則なので、あくまでもベース的ルーティンです。でも仕事でストレスが溜まりますが、少しでもバーベルを握れば気分転換になるので、30分しかできなくともジムに足を運びバーベルを握れば納得できます。できる時は2時間はやりますが、食事もトレーニングも特にこだわりは持たないようにやっています。だから、特に気をつけていることと言ったら〝頭を固くしないようにすること〟です。

NY 仕事が高速バスの運転手だと、昼夜問わず長時間の勤務だよね。そんな中で素晴らしい心掛けだよ。それが今後も伸びる秘訣だよね。
AW はい。

NY 「時間がなければ良いトレーニングはできない」という固定観念に捕われては、かえってトレーニングに集中できないですからね。ところで勝手な心配なんだけども、ご家族の応援をもらって頑張り、努力が実ったわけだから、大会へは未練がなくなってしまうのでは?
 ナルシスとしては、これから弱点と気が付いた部位などをもっとインプルーブしてもらい、今後も活躍してもらいたいんだけど、どうですか?
AW 久しぶりに大会へ出場し、自分の弱点など再確認できたので、しっかり弱点を克服してから再度大会に挑戦したいと思っています。

NY 安心しました。若月選手だけでなく、読者の皆さんにもアドバイスしますが、大会へ出場すると決めたら、好き嫌いなく全身をまんべんなく刺激していかないと後々後悔しますからね!
 今日はご家族にまつわる感動的な話が聞けました。ありがとうございました。
今年の神奈川選手権。8年ぶりの大会出場であったが、すばらしい仕上がりで10位に入った

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仕事柄、一定のトレーニング時間がとれないが、逆にそれが集中力があがって良いという

仕事柄、一定のトレーニング時間がとれないが、逆にそれが集中力があがって良いという

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 若月選手の家族への思いから成し遂げたボディビル大会出場への道! 真っすぐでひたむきな想いを語る瞳には微かに光る物がありました。今後また家族のパワーを糧にインプルーブした姿を是非ステージで披露してほしいと願う素晴らしい取材になりました。


文/山本昌弘
著者プロフィール:やまもと・まさひろ(通称ナルシス)/抜群のシェイプと類希なポージングセンス、そして自らをナルシストと公言してはばからない特異なキャラクターで人気を集める元日本選手権ファイナリスト。これまでに東京クラス別70㎏級・75㎏級、日本クラス別75㎏級、東日本選手権、ジャパンオープンを制しているhttp://blogs.yahoo.co.jp/wwrcf122
[ 月刊ボディビルディング 2013年11月号 ]

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