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TRANGER'S MONTHLY PICK UP! Vol.2 ミスター日本4連覇達成!!鈴木雅【後編】

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[ 月刊ボディビルディング 2014年3月号 ]
掲載日:2017.08.30
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毎月ボディビル界の気になる選手をお呼びして、トレンジャーズ目線でのインタビューを敢行! ボディビルダーの隠された一面を引き出して、世にボディビルの素晴らしさをお伝えする新コーナーです。
 引き続きゲストは鈴木雅選手です! 今回は日本のボディビル、フィットネス業界の今後についてまで話がおよび、大変盛り上がりました。では、本編スタート!!

インタビューby トレンジャーズ
高田一也・鵜飼守・野村昇平
青木泰蔵・渡辺一宏

第三章:野村昇平からの質問 トレーナーとしての知識と資格

野村「表参道ゴールドジムで以前から拝見させて頂いていたのですが、とても上の人という印象で声をかけにくくて、本当は話し掛けたかったんですけど人見知りなので…」

鈴木「野村さん、その頃と比べると凄いですよね、ボリュームが」

野村「ありがとうございます! その時まだ相撲とってたんです(笑)。お聞きしたかったのは、ボディビル競技者としてトップにいらっしゃって、お仕事もお忙しい中で、指導者として新しい情報を吸収していく時間をとる事も難しいと思うんです。セミナーのビデオを拝見させて頂きましたが、知識が凄すぎて。どのように吸収し、アウトプットしているのかトレーナーとしてお聞きしたいと思いました」

鈴木「時にはいろんなセミナーに参加しますよ。トレーニング関係というか、ボディメンテナンス関係のセミナーが多いです。本から情報を得ることもあります」

野村「そうなんですか。やっぱりNSCAとかもですよね?」

鈴木「持ってます、NSCA以外でも、各団体というかセミナーではコレ面白そうだなっていうのもあるんですよね。逆にこれは深く入りすぎたらやばいなっていうのもあるんですよね(笑)。言えないですけど(笑)」

野村「最近トレーナーになりたい人も凄く増えていると思うんです。知識が一応あるけど、自分が実践出来ているのか、ペーパードライバーじゃないですけど自分が体作ってるのかな? と思わせる風潮も見られますよね? 鈴木さんはどう思われますか?」

鈴木「一般の方が凄いマニアックな知識を求めているかというと、そうでもないですからね。意外とトレーナーでお金稼いでいる人で、この人大丈夫なの? って人がいたりしますよね。ホストと同じではないですけど、ある程度サービスマインドも凄く大事になってきますよね、パーソナルトレーナーやる上で。真面目にトレーニングで鍛えたかったら、どっかんと儲けようというのは難しいと思うんです、私は。トレーニングやってる方って本当に真面目にトレーニングしてる人に教えたいって思うじゃないですか。でもそういう方って自分でトレーニングしてちょっとアドバイス求めるくらいだったりしますよね。私自身、パーソナルトレーナーやりたいかっていうとそうでもないんですが…。今思うのは、トレーニングに関する情報が増える中、お客様も知識が付いて選択肢も広がり、より意識の高いトレーナーがこの先求められて行くと思うんです。そうするとやはりトレーナーがトレーニングしないとダメですよね。自分で経験して得るものも大きいですし。ボディビル大会など、何かの目標に向けてトレーニングするのは全然違うじゃないですか。そういう経験って大きいですし。トップビルダーはみんなそうだと思うんです。知識だけでトレーニングしてる人っていないですよね。みんな経験ですよね。そういう意味で経験って凄く大切になってくると思います」

渡辺「鈴木選手の場合はトレーニングをしていくうちに、もっと知識を付けようと思って勉強したんですね」

鈴木「そうですね。お客様の為に学ぼうとした事は無いかもしれないですね(笑)」

一同 爆笑

鈴木「『ここが足りない、ではどうしたら良いのか?』というように、ある程度勉強して何かしらその都度、課題を持ってやってますね。例えばハムストリングスはどう付いていて、どうやって動かしたら良いのかとか、よりもっと効くようにするにはどうしたら良いのか、とか」

鵜飼「鈴木選手凄いですよね、DVDも拝見させて頂いたんですけど…」

鈴木「ウンチク語ってますよね(笑)」

鵜飼「真似だけしたりしますからね。バーベルカールのつま先の方向のこだわりとか」

鈴木「立つ位置だったり幅だったりとか、全部こだわってやりますね。お尻で立てる幅、大腿骨を使う幅…こだわってるうちに、何も考えないで部分的に効くようになりました。感覚でスッと追っているよりも知識と感覚で繋げた方が早いんですよね。そういう事ですよね。効率が良いというか」

高田「僕も同じ考えで、自分がトレーニングを始めた頃から、トレーニングで自らの体に効果を出している人には、自然と聞きたくなるよな、と思っていて、それがトレーナーという職業に興味を持ったきっかけだった気がします。その当時から、体でトレーニングの効果を出す事がトレーナーとして凄く重要だなと思っていて。トレーナーさんでは無くても、例えばボディビルの大会に出ていたりとか、大会に出てなくてもジムで凄い体の人を見たら『あの人に教えてもらいたいな』と思うので、そう思わせる事が出来るようにトレーニングを積んでおく事が大切ですよね。知識ももちろん大切ですが、同時に自分が鍛えてきた経験からの感覚をどれだけ伝えられるかを重要視したいですね」
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トレーニングのデモンストレーションを見せる

トレーニングのデモンストレーションを見せる

第四章:高田一也からの質問 ボディビルとフィットネス業界の発展について

高田「鈴木選手を筆頭に、ここにいるみんな、トレーニングが好きじゃないですか。ウエイトトレーニングって、競技としてのボディビルを極める事も含めて、健康にも良いですし精神的にもとても健全な事だと思うんです。だけど、日本はまだウエイトトレーニングに対する誤解がありますよね。その誤解を少しずつ解いて、ウエイトトレーニングの良さを広めて行きたいと思っているんですよね、トレーナーとして。そこでお聞きしたいのですが、お若いうちにボディビルを極められて、トレーナーもされていて…そんな鈴木選手から見て、どうしたらボディビル競技やボディビルを基本としたウエイトトレーニングを日本に浸透させる事が出来ると思いますか?」

鈴木「『TVなどのメディアでどんどん伝えてくれ』と言う方もいますが、TVって、やはり向こうでイメージを作るじゃないですか。因みに明日もTV収録で、やっぱり台本を見るとイメージを決められている気はしますよね。まぁ真面目な事ばかりじゃないですけど、変な事話さないようにしようかなぁとは思うんですけど。トレーナーという立場として、広げられるのは、底辺層からだと思うんですよね。一気にメディアに出て行くとかではなくて。もう一つは世界(大会)で勝っていく事だと思うんです。その二つのどちらかだと思うんですよね。で、仕事でボディビルの日本チャンピオンが普通の人を指導するとか、そういう事をしていくと少しずつ一般に理解されて行きますよね。今は情報網は広いと思うので理解が出てくると思うんです。もう片方の、「世界で勝つ」というのはその業界自体も盛り上がりますし、一般の人へも伝えられるのかな、と思います。一般に伝えて行くって難しいですよね、一番」

高田「難しいですよね。僕自身、TVは、知られるには良いきっかけだけど、どう編集されるかわからないし、要求されることが面白おかしく思われる事だったりするので出演する時は気を付けるようにしています。でも気をつけてはいてもオンエア見るとがっかりするような流れになっている事もあったり」

渡辺「結局、色物的な扱いから抜け出せないですよね」

鈴木「それで私、一回怒ってやめた事が…(笑)」

高田「こんなに温和な鈴木選手が(笑)」

鈴木「酷いトコは酷いですよね」

高田「ですよね。ボディビルダーが全員同じ考えでは無いと思うんですけど、やはりボディビルダー一丸となってある程度の良識は持って行きたいなぁと思うんですよね、その業界内で。決め事を作るのは難しいと思うんですけど、色物に見られなかったりとか、トレーニングがどんなに体に良いかとか、これからの高齢化社会に対しての………なんか凄い真面目な話(笑)」

一同 笑

高田「今、鈴木選手にお話をお聞きして、世界(大会)で勝つ事って確かに大きいですよね」

鈴木「そうですね、他の競技もそうなんですけど、世界で勝って人気が出る事って多いじゃないですか。認知度が高まりますよね」

高田「世界に認められるという意味でも」

鈴木「ドキュメンタリー番組の『バース・ディ』(TBS系)に出させて頂いた時も、私の友人が『ボディビルって軽くトレーニングしてポーズしてるだけじゃないんですね』って。『あれだけの食事をして、トレーニング一生懸命してるんだね』と言われちゃうんで。やはり一般の人から見るとボディビルは多くの人が目にするような、ポーズをとってるだけに見えちゃうんですよね。今後ある程度、しっかり(ボディビルの趣旨的な部分を)収録等では話そうかな、と思っています」

渡辺「今年の野村君が出場したボディビル大会が初観戦だったんですけど、印象と全然違いましたね。ただ単に鍛えて見せてる訳じゃなくて、音楽に合わせる芸術性もあるし、自分自身をプロデュースする術を知っていないと勝てない。自身のトータルコーディネートが大切なんだと思いました。そういう意味で、このような競技は他に無いんじゃないかと思ったんですよね」

鈴木「やればやる程面白くなってきますよね」

高田「でも多くの人は〝自分にはボディビルは無理〟と思う部分があるのかも。体にも良いし、やってる事は凄い事だと思うんです、ボディビルって。だからもっと健康法としても、競技としても広めて行きたいなぁと思ってます。微力ながら」

鈴木「一般の業界とフィットネス業界、あとフィットネス業界とボディビル業界と、横の繋がりが薄い気がするんです。メディアではいろいろトレーニングとか取り上げられていると思うんです。パーソナルジムもそうじゃないですか。有名人がパーソナルトレーナー付けてトレーニングしたりとか。少しずつフィットネス業界と一般が縮まっていますよね。そういう意味ではフィットネスとボディビルはまだ遠いんですよね。私の役目はそこを繋げる事だと思うんです。フィットネスとボディビル、一般からフィットネス、そこからボディビル」

高田「業界内でも分かれてますよね」

鈴木「そうですね。でもゴールドジムは以前だとボディビルジムに特化してたじゃないですか。今は他のフィットネスクラブでもボディビルやってる人いるくらいですから、多少は理解は出て来た、理解というか認知度というか」

高田「広がってますよね」

渡辺「今、世界の視点から日本のボディビル界だったりフィットネス業界を見た時に、何を変えればさらに良くなると思いますか?」

鈴木「やはり一般の人の認知度ですね。ボディビルに対する地位を高くしてくれ、とかではなく、広い意味での認知度を高めていかないと、と思うんです。

渡辺「健康的に体を鍛えて運動するって意味では、アメリカの方が浸透してると思うんですよ」

鈴木「そうなんですよ。一般とフィットネスの差が無いんです。みんなトレーニングしている。『マッスル&フィットネス』が教科書代わりじゃないですけど、一般人に普通に売れちゃうくらいですから」

渡辺「食事をするのと同じ感覚で、毎日何かしら必ず運動するって感じですよね」

鈴木「ほとんどの方は朝、仕事の前にトレーニングして、軽食食べてから行きますよね。ベニスのゴールドジムなんかは朝5時半~6時くらいが凄く混んで、そこがピークタイムみたいな。そういう意味では、日本はアメリカに少しずつ近づいていると思います。もっと浸透していくといいですよね」

 好青年というワードを国語辞典で調べたら、鈴木選手の顔写真がそのまま出て来そうな程、謙虚で爽やか。全日本大会直前にも拘わらずトレンジャーズの難解な質問にも楽しく答えて頂いた事に感謝致します。ページ数の関係上、今回書けなかった面白会話、いつか絶対披露したいと計画しております。

 鈴木選手ならボディビル、ウエイトトレーニングをより一般的な存在に導いて広げてくれる、そんな期待に満ちたままインタビューは終了したのでした。
トレンジャーズと鈴木選手

トレンジャーズと鈴木選手

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