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本場アメリ力のボディビル

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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]
掲載日:2017.10.25
’72ミスター高知2位 河内山 和夫
 昨年度ミスター高知2位の河内山和夫選手は、去る3月31日、本職の歯科技工士の勉強と、本場のボディビル視察のためにアメリカ、カナダへの旅に出た。

 まずハワイのティミー・ジムを見学したのち、ロスに立寄り、ジャパン・ヘルス・クラブを経営している多和昭之進先輩(’65ミスター日本)を訪ねる予定だったが、逆にハワイで臨時コーチを頼まれてしまった。

この手紙は、親友の重村洵さん(赤羽トレーリング・ルーム・コーチ)に寄こしたものだが、いろいろ面白いことが書いてあるので、読者の皆さんにご紹介しよう。
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 前略 4月28日にロスに発つ予定でしたが、ティミーに頼まれて、5月中旬に行われるハワイのスポーツ・ショーにデモンストレーションとして参加することになり、それまでハワイに滞在することになりました。

 最初は英語が聞きとれなくて苦労しましたが、最近はだいぶ慣れてきました。ハワイのジムはなかなかさかんで子供や女性もたくさんきています。中には家族全員でトレーニングしていて見ていてほほえましく感じます。

 ところで、先日ミスター・パシフィック・コンテストが開かれ、ゲストにシュワルツェネガーとコロンボが出演しました。コロンボは相変らず力のあるところを披露し、鉄棒を曲げたり、水枕をふくらませて吹き破ったりして観客をうならせ、最後にポーズをとりました。シュワルツェネガーは最近カットに自信をもったようで、しばしばカットを強調するポーズをとっていました。2人とも絶好調のようです。
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 こちらのジムを見て感じたことはとにかくダンベルが多いことです。5ポンドおきに100ポンドぐらいまでズラーッと並んでいます。どのダンベルも余分なシャフトは切り落として溶接してあるので、運動がやりやすく、なかなかいい作りだと思いました。

 また、ジムにはいろいろのジュースが用意されているのに感心しました。パイン、オレンジ、バナナ、グレープそのほかたくさんの種類があり、しかもプロティン入りのものが多いようです。プロティンそのものも、錠剤、粉末、味付けの違うものなど、いろんな会社から出ており、それも1000錠入りという大きなものばかりで、最初はペンキの缶かと思ったくらいです。

 でも値段の高いのはどこも同じで、これらのプロティンもコンテスト・ビルダーしか使用していないようです。シュワルツェネガーなどは、プロティンの他にレバー・タブレット(肝臓の錠剤)も使用しているそうです。私がプロティンを使用していない、というと、不思議そうな顔をして、プロティンを使えばもっとよくなるのに、といいます。

 その他、プロティン入りのチョコレートもあり、練習中やその前後によくジュースで流し込んでいます。このチョコレートのカロリーは強烈で、練習のない日にこれを食べると、翌日はニキビが出てこまるそうです。

 日本ではあまり見られませんが、こちらのジムには健康に関する本がいっばい並んでいて、いかにもへルス・クラブという感じを受けます。
記事画像2
 日本でもよく知られているトミー・コーノにずいぶん気にいられて、小学生向きのトレーニング指導を頼まれてしまいました。トミーは「私の体は古いので、ぜひ代わりを頼む」というのです。

 以前、武本さんからも聞いたことがありますが、本場といってもハワイにはいいビルダーはいません。私みたいな体でも大モテで、毎日のようにいろんな人からエクササイズ法を質問されます。フクラハギはどんな運動をするのか?胸のカットはどうしてつけるのか?インクライン・プレスの運動角度は?バックとショルダーはあまりやらないようだけど、どうしてそんなにカットがあるのか?……と次から次へと質問してきます。でも、どうしてそんなにハンサムなのか?とは誰も聞きません。不思議ですね……

 こんな状態ですので、日本のビルダーの皆さんへのアドバイスどころではありません。6月にはビル・パール・ジム、ビンス・ジロンダ・ジムなどを廻る予定です。その前はロスアンゼルスの多和さんのところにいますので、なにか質問でもありましたらそこへお手紙ください。できるだけ調べたり聞いたりしてお知らせします。一後略一
[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]

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