マッスルマニアプロ
マイク宮本のアメリカ便り
14ウィメンズインターナショナル
ステージ上で挨拶をするアーノルド・シュワルツネッガー
フィットネス
フィットネス競技は、ボディビルの大会において華麗なダンスや派手なパフォーマンスで観客をいつも楽しませてくれ、賞金額でもアーノルドでは女子プロ競技の中では一番高いですが、今アメリカのプロ、アマ共に競技者数が減少しています。
ビキニは言うまでもありませんが、フィギュアよりもハードな体の仕上がりを求めれた上、2分間のフィットネスルーティンを同時にこなすのは、選手にとっては、非常に過酷な作業でしょう。またプロモーター(主催者)は、ただでさえ、ビキニ、フィジークと競技者が増えている中、水着審査した後、1人2分間もルーティンをしたら日が暮れてしまうという事で、NPCアマチュア最高峰のUSAチャンピオンシップスやナショナルチャンピオンシップスではフィットネス競技は行われていません。
フィットネスが競技として誕生した1980年代は、ビキニやフィギュアといった女性の競技は存在していなかった為、フィットネス競技の中で水着審査だけをする意味がありましたが、今はソフト路線の「ビキニ」から、美しく均整の取れた筋肉美の「フィギュア」、女性としてフェミニンさも残しつつもハードな体つきの「フィジーク」、ハードコアな体つきの女子「ボディビル」と女性競技の多様化細分化が進んでおり、フィットネス競技でわざわざ水着審査をする意味はかなり薄くなっています。いっその事、水着審査を止め、フィットネスルーティン内で体の審査をするようになれば、選手にとっては、何万円もする水着代が節約できなおかつ、より難易度の高いフィットネスルーティンに集中でき、プロモーターにとっては時間短縮になり、以前のように様々なボディビルコンテストで躍動感のあるフィットネスの競技が楽しめる事になるでしょう。バックステージで、オリンピアのMCを勤めている2000年のミスターUSAのボブ・チチェリロに会いましたが、彼も私と同じことを言っていました。ちなみに彼は、ビキニとフィジークの競技を提唱し実現させた一人です。
フィットネスは、競技者数の減少によりビキニやフィギュアに比べプロになる絶対人数が少ないため、ここ数年トッププロの顔ぶれもあまり変わっていません。そのため、トッププロとしての実力は皆非常に似通っています。その均衡した状況を飛びだして優勝をもぎ取ったのは、なんと水着審査で5位のロシア出身のオクサナ・グリシュナ(161㎝、52㎏)でした。オクサナは昨年オリンピアで2位でしたので、オリンピアの覇者アデラ・ガルシアが出場していない今大会は、前評判では優勝候補筆頭に上げられていました。ただ予選の水着審査では5位となり、優勝争いからは一旦完全に離脱してしまいました。上位は皆拮抗しており、通常通りのフィットネスルーティンでは、優勝するのが難しいと見たオクサナは非常にリスキーな「ポールフィットネス」をルーティンに取り混ぜて来ました。「ポールフィットネス」は、平たく言うと「ポールダンス」と巷では言われ、アメリカではストリップクラブでダンサーがセクシーな踊りをポールを使いながら見せ、観客からチップをもらうというような代物です。今アメリカでは、そのポールを使ってパフォーマンスを競う「スポーツ」としての「ポールフィットネス」が非常に人気を呼んでいます。伝統あるアーノルドのフィットネスインターナショナルで、世間ではまだスポーツではなくストリップクラブの「ポールダンス」のイメージが強い「ポールフィットネス」を混ぜる事は、保守的な審査員の目にどのように映るか非常にリスクがありました。ただ蓋を開けてみたら、そのポールフィットネスの動きは、今まで何か物足りなく、オリンピアでもアーノルドでも2位に甘んじていたオクサナのスピード、力強さ、柔軟さ、娯楽性すべての点で、プラスに働きました。観客からはスタンディングオーベーションの拍手喝采を浴び、審査員からはパーフェクトスコアを獲得し、5位から一気に1位となり、嬉しいフィットネスインターナショナル初優勝と賞金250万円(1ドル100円と換算した場合)を手にしました。
2位は、ブラジル生まれ、現ドイツ在住のレジーナ・ダ・シルバ(168㎝、61㎏)となりました。レジーナの体は、フィットネス選手としてはマスキュラー過ぎで、水着審査では4位でしたが、その力強いマスキュラーな体を使った、ハイエナジーなルーティンでは、4つの審査項目、強さ(ルーティンの難易度の高さ、正確さ)、柔軟性、スタミナ(ルーティンのテンポの良さ)、全体としの完成度の高さ(ルーティンの創造性、存在感)すべてで高い得点を付け2位となり、賞金130万円を手にしました。
3位は、昨年度の覇者タンジ・ジョンソン(161㎝、52 ㎏)となりました。タンジーの体は、フィットネス選手の良き見本のような体で、タイトかつ適度なマスキュラリティーそして女性らしいフェミニンさも残しており、水着審査では1位に付けています。フィットネスルーティンでは、彼女の出身のワシントン州シアトルを本拠に置き、昨年アメフトの世界一に輝いたシアトルシーホークスのユニフォームを真似た衣装を身にまとい、非常にノリの良いテンポで観客を楽しませてくれるルーティンを見せてくれましたが、オクサナの「ポールフィットネス」、レジーナの力強いルーティンに比べると、今いち印象が残らず、3位となりました。ただタンジーのルーティンは愛嬌があり親しみやすく、ノリがいいアメリカ人的なルーティンなので、アメリカ生活の長い私にとっては心から楽しめて好感が持てます。またタンジーは、ビキニやフィギュアに比べ、競技人口が減ってきているフィットネス競技に対し、フィットネス競技や人口を増やす活動も行っております。自発的に、自分の愛するフィットネスという競技とコミュニティに対して貢献するタンジーのような選手がアメリカにいる限り、フィットネス競技は安泰でしょう。
ちなみに5位のトリシュ・ワレンは、彼女のラストネームからお分かりのとおり、2011年、2012年アーノルドクラシッツクチャンピオンのブランチ・ワレンの奥様です。水着審査では、3位をつけましたが、ルーティンが振るわず、5位となりました。
フィットネス優勝 オクサナ・グリシュナ
フィットネス2位 レジーナ・ダ・シルバ
フィットネス3位 タンジ・ジョンソン
フィットネス4位 ベサニー・システニーノ
フィットネス5位 トリシュ・ワレン
フィットネス6位 ライアル・グラバー
ジュニアナ(13 位)、アマンダ、コートニー(7位)、タンジ、 トリシュ、オクサナ
フィットネストップ6
フィギュア
フィットネス、女子ボディビルの他に女子フィジーク、ビキニの出現で「フィギュアって何?」と思われている方がいたら、キャンディス・キーンが「フィギュア」の絵に描いたような見本の選手と言えるでしょう。
フィギュア優勝者のキャンディス・キーンと著者
キャンディスは通常1年に6つ位試合に出ますが、今年は何が何でも初のフィギュアオリンピアに輝きたいという事で、アーノルドの1週間後に行われるオーストラリアプロだけに出場し、それからはオリンピア一本に絞り調整するとのことです。今年のフィギュアオリンピアは、過去3回オリンピアに輝いているディフェンディングチャンピオンのニコール・ウィルキンスと2回優勝に輝いたエリン・スターンそして昇り調子のキャンディス・キーンの3人の美しき女王達の熾烈な優勝争いとなるのは間違いないでしょう。
2位は、プロ4年目、31歳のへザー・ディース(166㎝、59㎏)となり賞金100万円を手にしました。へザーは、美貌という点ではキャンディスには負けていませんが、ポージング、ウォーキング、プレゼンテーションでは明らかにまだ改善の余地が見られました。またフィギュアというマスキュラーではないが、ある程度のマッスルトーンが要求される競技では、ミッドセクション(腹部)を中心に更にレベルの高いマッスルトーンがメジャータイトルを獲る為には必要となってくるでしょう。
3位は、カマラ・ロドリゲス(166㎝、58㎏)となりました。32歳のカマラは、昨年フィットネスからフィギュアへ転向した選手となります。カマラはフィットネス選手時代は、水着審査で上位を付けていてフィットネスルーティンで下位になっていたので、フィギュアへの転向は正解でしょう。ただまだフィギュアの選手というより、フィットネス選手の機能的なハードな皮膚感を残した体つきをしているので、フィギュア選手として成功するには、フェミニンさを残し、丸みを帯びた筋肉を付ける必要があるでしょう。
フィギュア優勝 キャンディス・キーン
フィギュア2位 ヘザー・ディース
フィギュア3位 カマラ・ロドリゲス
フィギュア4位 アン・ティトーネ
フィギュア5位 キャンディス・ルイス
フィギュア6位 ジェニファー・ストロボ
左よりルイス、ディース、キーン、ロドリゲス、ティトーネ
コーワン、ストロボ、ルイス、ティトーネ、ロドリゲス、コーツ(7位)
フィギュアトップ6
ビキニ
2011年からアーノルドでは、ビキニインターナショナルとしてはじまったプロビキニは今年で4年目を迎えますが、毎年違うチャンピオンが生まれています。その理由として、トッププロになるとモデルウォークも上手くて当たり前だし、ハンドオンヒップポーズ(手を腰に置いてとるポーズ)も決まっていない選手なんかいなく、当然体に関しては皆シェイプされたバランス良い体をしていて、おまけに顔も皆きれいで甲乙付けがたいのが上げられます。それと同時に新興競技がゆえに、審査基準もある年は、グラマーなビキニボディ、ある年は引き締まったアスレチックなビキニボディを評価して基準が流動的です。そのためシーズン初めに行われるアーノルドのビキニの結果はその年の審査基準の大きな指針になるので、ファンだけでなく、世界中のビキニ選手及び業界関係者から、誰が優勝に輝くか非常に注目されていました。
昨年ビキニインターナショナルで優勝したインディア・パウリーノが連覇すれば、カービィ(抑揚のあるボディ)な選手に今年は有利に働くだろうし、昨年のオリンピアに続きアシュリー・カルワッサーが勝てば、多少細めでもアスレティッツクな体付きの選手に有利に働くという事になります。
競技人口も増えていて、注目度も高いビキニの審査は、全競技の中でも一番念入りに比較審査が行われました。その中満場一致で1位になったのは、オリンピアに続く連勝のアシュリー・カルワッサー(25歳、166㎝、53㎏)でした。アシュリーは、大学時代に陸上選手として活躍していたので、アスレティッツクなビキニボディをしています。その引き締まったボディを使ったヒップバックポーズは甲乙付けがたいトッププロビキニ選手の中でも群を抜いて良く、25歳の若きチャンプには嬉しい優勝賞金70万円を手にしました。
2位は、ニューヨークのイエシャイラ・ロブルス( 165㎝、53㎏) となりました。イエシャイラの細いウエストとプロポーションの良い体はフロントポーズの角度によっては、女王アシュリーに勝っているかにも見られました。アシュリーはアーノルドの後もオーストラリアプロ、ニュージーランドプロでも勝ち連勝記録を6つまで伸ばしましたが、5月17日にイエシャイラの地元のニューヨークで行われたニューヨークプロでは、現役ビキニオリンピア、アシュリーがイエシャイラに敗れるという波乱が起こりました。自信をつけたイエシャイラと現役ビキニオリンピアのアシュリーの戦いは、9月20日のビキニオリンピで壮絶なものとなるでしょう。
3位は、アマンダ・ラトナ(166㎝、54㎏)となりました。アマンダは、プロビキニ選手になる前は、ボディガードを付けて世界中を飛び回る人気歌手でしたので、ステージさばきは群を抜いて良く、ウォーキング、プレゼンテーション、又彼女のトレードマークのウィンクでプロビキニ選手としては一番知名度と人気があるでしょう。ただ彼女は非常にウェイトトレーニングが好きで、自分でも体はビキニ選手だけど、気持ちは、ミスターオリンピアのフィル・フィースと変わらないファイティングスピリッツがあると言っています。そのせいか、ビキニ選手としては明らかにマスキュラーな体をしており、今までメジャーコンテストでトップ3に入った事がありませんでしたが、今回は昨今の審査基準に自分の体を合わせた非常にベテランらしい冷静な調整をしメジャーコンテスト、アーノルドで初の3位入賞を果たしました。
2012年のビキニオリンピアの覇者、ナタリア・メローはミッドセクションがハードに仕上がりすぎで、その厳しい仕上がりが業界きっての美しい顔にもでており、やつれて見え、顔も含めたトータルパッケージが評価されるビキニではマイナスと働き、4位となっています。逆に昨年度の覇者のインディア・パウリーノは明らかに他の選手と比べるとソフトな仕上がりで6位となりました。
ビキニ優勝 アシュリー・カルワッサー
ビキニ2位 イエシャイラ・ロブルス
ビキニ3位 アマンダ・ラトナ
ビキニ4位 ナタリア・メロー
ビキニ5位 ステイシー・アレキサンダー
ビキニ6位 インディア・パウリーノ
左よりパウリーノ、アレクサンダー、カルワッシャー、ラトナ、 メロー、ロブルス
ビキニトップ6
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