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ボディビルの基本⑰ 初心者のための基礎知識と実技 【実 技 編】

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[ 月刊ボディビルディング 1973年2月号 ]
掲載日:2017.10.17
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竹内 威(NE協会指導部長’59 ミスター日本)
 ボディビルの運動においては,体を部分的に分ける場合,一般的には首・肩・胸・腕・腹・背・腰・腿の8つの部分に分ける。とくに初級者の場合は基礎体力を強化するために,各部分における基本的な運動種目を平均して行う必要がある。
 いままでに再三述べてきたことであるが,ボディビルは各人の体力と経験に応じて段階的にトレーニングを行うことが大切である。
 初級者の段階では,いたずらに高度な種目を行なったり,不必要に多種目の運動を行うことは慎まなければならない。ボディビルに未経験か,もしくは経験の浅い初級者は,基本的な運動種目のみで,体力を強化し筋肉を発達させることは充分可能である。
 基礎体力が充分に強化されていない初級者が,不必要に高度な種目を行なったり,多種目の運動を行うことは,いたずらに体力を消耗するだけで,効果の面ではかえってマイナスになるおそれがある。
 したがって,初級者は,当初においては効果をあまり欲ばらずに,基本的な運動種目を正確に行うことにより,まず,基本的な体力を養成することに重点をおくようにすべきである。

◇基本種目

〇シット・アップ
シット・アップ

シット・アップ

 シット・アップは腹筋を鍛練するための運動種目であり,大腿部の強化にもいくぶん効果がある。
<かまえ> 傾斜していない腹筋台かまたはベンチに仰臥して,両足を固定する。
<動作> 両手を頭のうしろで組み,反動を使わないで腹筋の力だけで上体を起こす。腹筋の力が弱くて運動が困難な場合には,両手を頭のうしろで組まずに,腹部の上に置いて行うようにするとよい。
<呼吸> 自由に行えばよい。
<回数> 反動を使わないで正確に行える回数を1セットとする。腹筋の力が弱くて,ごく少回数しか反復できなくても別にさしつかえない。
 腹筋の力が強くなり,15~20回の反復が容易になったら,腹筋台を少し傾斜させて行うか,または,無理のない程度に頭のうしろにプレートを保持して行うようにする。
<注意事項> シット・アップの運動中に腰痛がともなったり,はなはだしい場合は腰を痛めてしまうことがある。これは,シット・アップの運動中に,腹筋の緊張によって腰椎が強く圧迫されることに原因があると考えられる。
 もし,運動中に腰痛がともなうようなら,次のような要領で運動を行うようにするとよい。(図1参照)
 まず,上体をうしろへ倒すとき,背を彎曲させて下腹部を見るようにする。そして,はじめに腰,次に背最後に肩というように,順に上体が板につくように行う。起きるときは体を倒すときと逆に,まず頭を起こし,次に肩,その次に背,最後に腰という順に上体が板から離れ,体をまるめるようにして起きあがる。すなわち,上体をうしろへ反りかえさないように注意して行う。
 以上のような方法で行なっても,なおかつ腰痛がともなうようなら,完全に上体をうしろへ倒さずに,痛くない範囲で運動を行うようにすればよい。トレーニングを重ねていて腰が強くなってきたら,様子をみながら少しずつ無理のない程度に運動範囲を広げるようにする。
 また,当然のことながら,腰を痛めているときはシット・アップは行わないようにする。腰を痛めているときにシット・アップを行うと,患部のなおりを悪くするだけでなく,一層悪化させることにもなるから,くれぐれもあせることのないよう充分注意してもらいたい。
〔図1〕体を倒すときも,起こすときも,そりかえらぬようにする。

〔図1〕体を倒すときも,起こすときも,そりかえらぬようにする。

○スクワット
〔スクワット〕

〔スクワット〕

 スクワットは,大腿部を強化するだけでなく,殿部,腰,背筋の鍛練にもよく,基礎体力を養うのに重要な運動種目である。
<かまえ> バーベルを両肩にかついで立つ。両足の間隔は,しゃがんだときに(動作の項参照)正しい姿勢がとれる間隔にする。
<動作> バランスをとりながら,腰が止まる位置まで両脚を屈する。
 しゃがんだ姿勢では,背と腰を彎曲させないように留意する。また,踵が浮いて不安定な姿勢にならないように注意する。両足の間隔が狭すぎると,しゃがんだときに正しい姿勢がとれないから,そのことをよく考慮して間隔を定める。
 この運動は,悪い姿勢で行うと腰を痛めることがあるから,絶対にいいかげんな姿勢で行なってはならない。股関節や足首がかたくて正しい姿勢がとれない場合は,踵の下にプレートか木片を敷いて行うとよい。
<呼吸> しゃがみながら息を吸い,立ちながら吐く。
<回数> 一般的には8~12回を1セットとして行う。とくに心肺機能の強化を意図して行う場合は15~20回を1セットとして行う。
<注意事項> 立ちあがる動作のときに,上体をあまり前傾しないようにする。そのような動作で行うことは脚における効果を減退させる。
 脚に充分に効かせるには,2図のように脚を伸ばすときに,腰と肩が同時にあがるようにしなければならない。
 トレーニングの初期においては,3図のようなやり方のほうが重い重量を使用できるので,とかくこういう動作になりがちである。しかし,この方法では腰に負担が強くかかるので,腰を痛めやすく,使用重量が増えてくるとさらに危険である。
 また,3図のような方法が,より重い重量を使用できるといっても,あくまでも初期の段階のときだけで最終的には2図のような正しい姿勢のほうが重い重量を使用できるようになる。したがって,あまり目先のことにとらわれることなく,正しいフォームで運動するよう心掛けてほしい。
〔2図〕正しい動作〔3図〕腰に負担がかかりすぎて危険

〔2図〕正しい動作〔3図〕腰に負担がかかりすぎて危険

○ベンチ・プレス
ベンチ・プレス

ベンチ・プレス

 ベンチ・プレスは,胸部の運動種目であるが,肩と腕の強化にも効果があるので,上半身の鍛練には欠かすことのできない運動である。
<かまえ> ベンチに仰臥し,両腕を伸ばしてバーベルを胸の上方に保持する。バーベルを握る間隔は,両腕を左右横へ広げたときの両肘の間隔か,それよりもひとこぶしくらい狭い間隔がよい。
<動作> 両腕を屈してシャフトが胸にふれるまでおろす。ついで挙上して,かまえの位置に戻す。
 バーベル・シャフトをおろす位置は,大胸筋の中央部あたりから少し下がよい。鎖骨より上部のほうへおろすと肩を痛めるおそれがある。
<呼吸> バーベルをおろしながら息を吸い,あげながら吐く。
<回数> 通常は1セットの反復回数は8~10回ぐらいであるが,15~20回の反復回数で行なってもよい。ただし,20回以上の反復回数では,持久力の養成という点では効果があるが,筋の発達には適さなくなる。
<注意事項> 動作の項で述べたように,シャフトをあまり大胸筋の上部(鎖骨に近いほう)におろしたり,また,あげるときに脇を開いて肩と上腕をひねるようにして行うと,肩を痛めるおそれがあるので危険である。無理な重量を使用して,反動を使って行おうとするときに,とかくそのようなくずれたフォームになりやすいから,この点をよく自覚すること。(次号へつづく)
[ 月刊ボディビルディング 1973年2月号 ]

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