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[ 月刊ボディビルディング 1973年6月号 ]
掲載日:2017.10.23

下痢をすると栄養分は吸収されないか?

Q
 ボディビル経験4年です。タンパク質の摂取に努めていますが,満腹のときや食欲のないときには固形の食品はなかなかのどを通りません。その点,牛乳や豆乳はそんなときでも摂取しやすいと思います。しかし牛乳を少し多目に飲むとすぐ下痢をしてしまいます。下痢をすると栄養分は吸収されないで腸を通過してしまうのでしょうか。
(東京都中野区 Y・M)
A
 牛乳を飲み慣れていない人が冷たい牛乳を飲んだ場合,よく下痢を起こします。この対応策としては,少量ずつ口にふくんで,睡液とよく混ぜ合わせるようにして温めながら飲むことです。オーバーにいうなら,牛乳をかんで食べるような気分で飲むのです。あるいは,最初から牛乳を少し温めて飲むようにすればよいでしょう。
 ふつう下痢をすると,胃腸病か細菌性疾患ではないかと思いやすいのですが,その他に,運動不足によるもの,精神的影響によるもの,過労によるものなど,いろいろな原因があるといわれています。
 牛乳を飲んで起こる下痢の原因はよくわかりませんが,多分,冷蔵庫などに入れてあった冷たい牛乳を飲んだため,胃腸に変調を引き起こしたものではないでしょうか。
 いずれにしても,下痢は大腸での水分の吸収不足によって起こるものですが,下痢をすると全く栄養分が吸収されないかというと,そうでもありません。傾向としては,大なり小なり栄養分の吸収は悪いといえますが,1日に数回もトイレに駆け込むような状態ならともかく,1日1回,それも軟便程度という場合なら,そう心配するほど栄養分の吸収は悪くないはずです。
 なにはともあれ,下痢をしないような牛乳の飲み方を工夫することと,牛乳を飲むと下痢をする,という潜在意識を捨てることです。

内臓が弱くバルクがつかない

Q
 私はバルクが欲しいのですが,内臓が弱いためかなかなかバルクがつきません。なんとかバルクをつけようと,重い重量を使用したところ,こんどは疲れがひどくなり,トレーニングに対する意欲もうすらいできました。
 食事は外食で,仕事は夜勤が多く,生活環境はよくありませんが,なにかよい方法はないものでしょうか。現在の体格は,身長167cm,体重55kg,胸囲84cmです。デフィニションはよくでています。(名古屋市・塩屋良二)
A
 ボディビル経験がどのくらいなのか書いてありませんので,恐らくまだ6ヵ月以内ではないかと推測してお答えします。
 確かに,外食と夜勤ではバルクを増加させ,体重を増やすためには条件的にはあまり有利とはいえません。とはいえ,それが恒常的なものであって,充分そのリズムに慣れてしまえば,それらは決定的な障害とは限らなくなります。
 問題は夜勤が交替制の場合です。1週間ごとに夜勤と昼勤が交替したり,あるいは3部交替制であったりすると体調も精神的安定も思うように得られず,期待するほどのトレーニング効果も得られなくなるからです。
 とはいえ,意志の強固な人は,かなり不利な条件でも,それを克服し,目的を達成しますので,このような不利な条件は,それを克服してやろうと決意する心掛けが大切です。
 さて,あなたは内臓が弱いといっていますが,それは医師の診断によるものでしょうか。それとも自分でそう思っているだけでしょうか。一般には,内臓が弱いと思っている人の多くは,本来内臓そのものが悪いのではなく,仕事や人間関係などで神経を使い,内臓の働きを悪くしているという場合がよくあります。
 人間の内臓のうち,とくに心臓や胃腸などは,神経質すぎると働きが不安定になります。内臓の働きを円滑にするには,食べ物や睡眠等の日常生活をできるだけ規則正しくすることが大切ですが,そのほか精神的な安定をはかることも重要です。
 いろいろな精神的な不安を取除くように努め,適度な運動をすることによって血行がよくなり,内臓の働きは必然的に向上してきます。したがって,ボディビルを続けているうちに,いつの間にか内臓に自信をもてるようになるはずです。そうなれば,バルクをつけ,体重を増やすというあなたの目的も容易に達成されると思います。
 トレーニングの根本的な注意点は,極端な無理は避け,疲労を蓄積させないことです。具体的な内容としては,ベンチ・プレス,スクワット,ベント・ロー,シット・アップの4種目程度を,それぞれ容易に10~15回できる重量を用い,2~3セット程ずつ行なってみてはどうでしょうか。
 このようなトレーニングをしばらく続け,内臓の働きがよくなって,それほど疲労感を感じなくなったら,積極的に重量を増やしてみるのがよいと思います。
 他にもいろいろ考え方はありますがいずれにしても,仕事が不規則で疲れやすい状態のときに,バルクを増やそうとして過度のトレーニングを行うことは,疲労を蓄積させるだけで,かえって逆効果になってしまいます。
 いまのところ,体調を整え,徐々に体力を蓄えることを目的にトレーニングを行い,その段階を経てからバルクを目的とするトレーニングに移るようにするのが賢明です。
 なお常識的なこととして,充分な内容(質と量)の食事と,睡眠および休養をとることを忘れてはなりません。

筋肉の発達がアンバランスだが

Q
 私は元来右ききですが以前冬の間よく雪かきをしたためか,右側に比べて左側の上腕と胸に肉がつき過ぎてしまったようです。これは雪かきのせいではなく,あるいは体質的なものかも知れませんがこのアンバランスを治すためにはどうしたらよいものでしょうか。年令18才身長174cm,休重62kg,左上腕30cm,右上腕28cm。(山形県・我妻健二)
A
 一般に左右の筋肉の太さ,長さ,形など,よく調べればいくらか違っているのが普通です。しかし,ひと目ではっきりとその差異がわかるほど違っている場合は大なり小なり気になるのがあたりまえでしょう。
 左ききならともかく,右ききの人の左上腕が右より2cmも太いというのは不自然です。かといって,そのような人が他にいないというわけではありません。あまり雪かきを熱心にやったために,左上腕が太くなってしまったというのは本当でしょう。
 さて,そのアンバランスを治す方法ですが,これには次のような対策を実行すればよいでしょう。
①右上腕の太さが左と同じになるまでダンベルによるカールやワン・ハンド・フレンチ・プレスを右腕だけで続ける。
②バーベルを用いて運動を行う場合は右腕に重量が多くかかるように,バーを握る位置をいくぶん右寄りにするか,あるいは,バーベルの右側に少し余計にプレートをつけ,左腕は支える程度に力を入れて運動をする。
 大胸筋についても上記の方法と同様にすればよいでしょう。

 というようなトレーニングを実行したからといって,左右の筋肉がまったく同じ太さになるということはめったにないといってもいいでしょう。さきにも述べたように,いくらか違っているのが普通です。あまりにも左右の均等にこだわりすぎると,全体の発達がおろそかになり,得策とはいえなくなります。

あくびが出て仕方ない

Q
 最近,やたらにあくびが出て困っています。ことにトレーニング中に大あくびが出るので,他の人に失礼ではないかと少々気がねしています。
 トレーニングのとき以外でも,仕事をしているときのあくびにしても,同様に不謹慎な気がしてなりません。あくびが出ないような方法はないものでしようか。 (福岡 A・T)
A
 あくびは犬や猫でさえする生理現象なのですから,別に気にしないで大いにやるべきです。しかし,ことさら声を出したり人の方を向いて大きな口をあけてすることは慎しむべきです。
 あくびは,細かい話をぬきにしていうとすれば,要するに,体の中の酸素が不足し,炭酸ガスが生じているときに,酸素を十分とり入れ,炭酸ガスを吐き出すために,必要上自然に起こる生理現象なのです。
 トレーニングを行なっているときは通常以上に体内で酸素を消耗し,炭酸ガスを生じさせているので,ときどき深呼吸をするとよいのですが,たまに無意識の深呼吸,つまりあくびが出ることもあります。あくびが出たら,体の中の酸素不足を知らせる警報だと思い,遠慮なくあくびをすることです。そして,ついでに深呼吸も忘れずにすることです。
 なお,スクワットやベンチ・プレスなどを熱心に行なった際には,ことに体の中の酸素の消耗が著しく,よくあくびがでることがあります。こんなとき神経質な人は,どこか具合が悪いのではないかと心配したりしますが,それは余計な心配です。ましてや,あくびをがまんしたり,かみころしたりするのはよくありません。

ボディビルで頭がよくなるか

Q
 僕の友だちは,「ボディビルをやるとスッキリして頭がよくなるようだ」と,よくいいますが,どうも冗談としてそのまま忘れることができず,本当にボディビルをやると頭がよくなるものだろうかと,ときおり考えてしまいます。
 ちょっと馬鹿げた質問で,笑われるかも知れませんが,これでも真面目な気持でいるのです。果してボディビルは頭をよくするかどうか,根拠があったら教えてください。高校2年,ボディビル経験4ヵ月。(埼玉 M・S)
A
 決して馬鹿げた質問ではありません。もちろん笑う気もありません。あなたのような
疑問をまるで持たない人は,よほど頭のよくない人だといってもよいでしょう。
 結論をいってしまえば,ボディビルをやると頭もよくなります。こういうと,「それはボディビル関係者の我田引水であり,勝手な解釈だ」と第三者には思われるかも知れませんが,実際にボディビルは頭をよくする助けとなっているのです。ただこれは他の運動競技についてもいえることで,取り立てて,ボディビルだけが頭をよくするといっているのではありません。
 すなわち,ボディビルといっても,それは単に筋肉が重量物を動かしているのではなく,頭を含め,体全体がなんらかのかたちで運動に参加しているのです。頭脳の働きがなければ,自分に最も適したスケジュールをつくることもできず,極端にいうなら指1本たりとも動かすことはできません。
 もっと現実的にいうと,ボディビルで健康と体力が向上することによって肉体が充実し,精神的にも余裕がもてるようになり,思考力も高まってくるはずです。
 それにしても,他の運動競技と同様に,ボディビルが頭をよくする助けをするといったところで,筋肉の発達だけを考えて実行していたのでは,それほど高度な頭をもつことはできません。
逆に,発達した筋肉を誇示し,のぼせあがったとしたら,その人はむしろ馬鹿だと思われるでしょう。
 付け加えなければならないのは,人間は何事につけ,たとえばボディビルであろうが,何かを前向きに努力すれば頭がよくなるのは当り前です。しかし,単に頭がよいからといって,それだけでは不充分なのです。世のために誠心誠意努力しようとしなければ,ただの小利口に過ぎません。真に誠実な努力をするとき,その人はより頭がよくなるのではないでしょうか。生意気なようですが,そんなふうに思います
(福田 弘)
[ 月刊ボディビルディング 1973年6月号 ]

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