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第8回 1973年度 JBBA ~全日本パワーリフティング選手権大会~

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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]
掲載日:2017.10.24
 第8回全日本パワーリフティング選手権大会は、5月20日、大阪府立体育館において、全国より39名の精鋭が集まり白熱した熱戦が展開された。

 午前10時、八田一朗大全々長、河合君次大会実行委員長の挨拶に続いて、地元大阪のベテラン伊集院選手の力強い宣誓の言葉を合図に熱戦の火蓋が切られた。

 過去7回の大会はすべて東京で開催され、西日本、とくに九州地区の選手から大会参加に対する不便の声が出ていた。その要望に応えて、本部協会は今回始めての地方開催として大阪大会に踏み切った。その効あって、西日本から20名の新人選手が参加し、選手に対する刺激とパワーリフティング競技の将来の発展に、大へん意義のあった大会だったといえよう。

 また、本大会より、大会の運営をスムーズにするため、選手はコールされてから30秒以内に試技を行うように規定されたので、きびきびとした試合運びと、気合の入った試技が最後まで続き、大会の雰囲気を盛りあげた。
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◇ バンタム級

 島村選手が450kg、田中選手が445kgを挙上し、それぞれ1位、2位となった。ともに大阪のナニワ・クラブの所属で、島村選手はまずベンチ・プレスで130kgの日本新をマークし、田中選手に30kgの差をつけた。これを追う田中選手はスクワットで10kg、デッド・リフトで15kgと、その差5kgとつめ寄り激しく迫ったが惜しくも敗れた。

◇ フェザー級

 バーベルをにらみつけ裂帛の気合とともに挙上する、独特の試合態度で名を馳せた名物男、富永選手の独走に終わった。3種目とも自己の記録を更新し、ベンチ・プレスでは自己のもつ日本記録を破る152.5kg、トータルでは関選手の日本記録を破る505.0kgをマークしたのは立派であった。

◇ ライト級

 本大会参加選手中の最年長者、38歳の伊集院選手が2位に10kgの差をつけて優勝した。練習ではベンチ・プレス170kg、スクワット220kgをコンスタントに挙上していたので自己のもつ日本記録を塗り替えんものと張り切って大会に臨んだが、5kg以上の減量がひびき、残念ながら記録の更新はならなかった。それにしても、昭和41年の第1回大会から8回連続出場し、第3回大会でベンチ・プレスで新記録を出しながら、スクワットで失格して敗れた以外はすべて優勝している。年齢からくる自然の衰えにも負けず、長い長月にわたる節制と努力は賞賛に価する。

 そのほかこのクラスで目につくのは、デッド・リフトの日本記録200kgを破った選手が、米屋、小倉、中尾、普天間、上崎、細水と7人も出たことである。

◇ ミドル級

 年齢は26歳とまだ若いが、早くからミスター日本コンテストで活躍し、その後パワーリフティングに転向した福岡の市丸選手が、出川選手のもつベンチ・プレス、スクワット、トータルの日本記録を更新し、2位以下を大きく引き離して独走した。

 ちょっと見にはそれほど大きく見えないが、よく見ればどうしてどうして、大胸筋、広背筋をはじめ、大きく発達した筋肉が全身を覆い、180kgのベンチ・プレスも宜なるかなと思われた。

◇ ライト・ヘビー級

 神奈川の大野選手がデッド・リフトで245.0kgをマークし岩岡選手のもつ日本記録を更新した。重量挙選手を思わせるような気合で初出場ながらよく優勝した。

◇ ミドル・ヘビー級

 沖縄の渡久地選手がベンチ・プレスで井上選手の日本記録を破る160kgを出した以外はそれほど見るべきものがなく比較的低調であった。

◇ ヘビー級

 ともに100kgを越す巨体で、関取のような仲村選手と足立選手の一騎打となった。ベンチ・プレスに強い仲村選手がまず25kgリードし、そのままの記録差で足立選手を押えた。ボディビル歴2年ながら、昨年度の大会記録を3種目とも打ち破り、トータルで700kgの大台にのせたのは見事というほかはない。日本人の宿命として、とくにこのクラスは記録的に外国に比して見劣りするが、仲村選手の出現は今後大いに楽しみである。同君の精進と努力を期待したい。

 なお、最優秀選手賞が市丸輝男選手、努力賞が富永義信選手、敢闘賞が伊集院明也選手、団体賞がコザ・トレーニング・センターにそれぞれ授与された。
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 最後に、昨年11月9日、アメリカのペンシルバニアで、アメリカ、プエルトリコ、ジャマイカ、カナダ、イギリスなどから多数の選手を集めて行われた世界パワーリフティング選手権大会の記録と比較してみると、バンタム、フェザー、ライト、ミドルの4階級のベンチ・プレスはいずれも日本記録の方が上まわっているが、ライト・へビー級より重いクラスのベンチ・プレスと、全階級のスクワット、デッド・リフト、トータルは残念ながら日本記録が劣っている。参考までに前記世界大会記録とこの大会の最高記録の比較表を次に掲げてみよう。
(大阪ボディビル協会会長佐野誠之)
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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]

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