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ビルダー教養講座 やさしいボディビル英語⑱

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[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]
掲載日:2017.10.25
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高山勝一郎

リップ,ヒップ

 前月号にひきつづき,面白いことわざをボディビルに関連させて,その哲学をさぐることにしよう。
 ことわざ(proverbプロバーブ)には,何といっても人生の普遍の真理がかくされていて,味わえば味わうほど深みがでてくるものだ。
 ボディビル界のことわざの中で,よく知られているものに〝Ten seconds on the lips, ten years on the hips〟(テン セカンヅ オンザ リップス テン イアーズ オンザ ヒップス)というのがある。
 Ten secondsとは,10秒間のことだし,Ten yearsとは10年間だ。また,lipsはクチビルだし,hipsはヒップすなわちオシリである。
 だとすると,このことわざは実に重要なことを云っている。
「わずか10秒間口に入れて食べたもので,10年間ヒップに脂肪がでてくる結果が生じる」ということだ。
 食べる物の注意を怠ると,ビルダーにとっては致命的な脂肪の蓄積があるということを,このことわざは教えている。
といって,「食べるな」ということではない。
 〝Diet is a part of bodybuilding〟(ダイエット イズ ア パート オブ ボディビルディング)なのである「食事もボディビルの一部」……要はその食事の量と質である。

過ぎたるは

 似たようなことわざで〝Much meat much disease〟(マッチ ミート,マッチ ディシーズ)というのもある。「食べもの多ければ病多し」というのだが,meatは肉のことだから,「肉食者には病気が多い」などと誤訳する人もいる。
 ともかく,トレーニングもせず,ただ食べ過ぎる……というのでは,これは健康によくないにきまっている。
 日本の有名なことわざにもあるではないか。
「過ぎたるは及ばざるが如し」と。
 英語にすると〝Too much is as bad as too litte〟(ツー マッチ イズ アズバッドアズ ツー リトル)となろうか。
 食べもののことだけではない。トレーニングだとて,やはり同じことが云える。〝Too much training is as bad as too little training〟(ツー マッチ トレイニング イズ アズバッドアズ ツー リトル トレイニング)なのである。
「トレーニングのやり過ぎは,トレーニング過少と同じほどよくないこと」なのである。

道程を楽しむ

 ビルダーはよく効果の早のぞみをする。早く〝完全〟になろうとする。
 ことわざに〝Hope all, lose all〟(ホープ オール, ルーズ オール)といのがある。
「すべてを望めば,すべてを失う」ということだ。一時に完全さを求めることは,「アセリ」のあまりモトもコもなくなるという教えである。
 やはり,自分の成長する過程を楽しんでゆっくりやる必要がある。
 〝To travel hopefully is a better thing than to arrive〟(ツー トラベル ホープフリー イズ ア ベターシング ザン ツー アライヴ)。チョット長いことわざだが,「目的地に着くことより,希望をもって旅をしている方が楽しい」ということで,欧米でよくでることわざだ。
 To travel(旅すること)をTo train(トレーニングすること)におき替えto arrive(到着すること)をto win(優勝すること)に替えれば,これは即,ボディビルの真理になるのではないか。
 〝To train hopefully is a better thing than to win.〟(ツー トレイン ホープフリー イズ ア ベターシング ザン ツー ウイン)……すなわち,「コンテストで優勝することより希望を持ってトレーニングに励んでいることの方が楽しい」ということになる。
 〝There's a long way between a beginner and a winner〟(ゼアーズ ア ロング ウエイ ビトウイーン ア ビギナー アンド ア ウィナー)……「ビギナー(初心者)とウイナー(コンテストの勝者)の間には長い道のりがある」のであって,この道程こそ楽しいものでなくてはならないだろう。


(筆者は政府公認通訳,科学技術翻訳士,株式会社国際交流サービス社長)
[ 月刊ボディビルディング 1973年7月号 ]

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