フィジーク・オンライン
  • トップ
  • スペシャリスト
  • ☆トップ・スターの素顔☆ ハード・トレーニングでミスター日本をめざす 糸崎大三選手の一日

☆トップ・スターの素顔☆
ハード・トレーニングでミスター日本をめざす
糸崎大三選手の一日

この記事をシェアする

0
[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]
掲載日:2017.11.15
記事画像1
北陸本線の小松駅から車で約10分。市の中心部からすこしはなれた住宅地詳しくは石川県能美郡根上町福岡イの270に糸崎選手の家がある。1階を糸崎トレーニング・センターにして、2階に奥さんの久美子さん、長女の三奈ちゃん(10カ月)と暮らしている。
糸崎トレーニング・センターの内部

糸崎トレーニング・センターの内部

糸崎トレーニング・センターの全景

糸崎トレーニング・センターの全景

朝6時30分、糸崎選手の起床時間は早い。洗面と着替えをすませ、7時ごろ朝食をとる。

けさのメニューは、ステーキ1枚。生野菜1皿、野菜イタメ1皿、さすがに朝からボリューム満点だ。

7時40分出勤。いつもは同じ会社に勤めている弟の強さんと共に、バイクの2人乗りで通勤しているが、この日は強さんが所用のため1人で車を運転して通勤する。
約5分で糸崎選手の勤務する富士精工社に到着。この会社は金庫のトビラ製造会社である。

8時、仕事が開始される。ここで糸崎選手は製図を書いており、強さんは機械工として勤務している。
7:00。朝からボリューム満点の食事

7:00。朝からボリューム満点の食事

7:40 出勤。いつもバイクで行くが、この日は乗用車で出勤

7:40 出勤。いつもバイクで行くが、この日は乗用車で出勤

糸崎選手の勤務する富士精工社の全景

糸崎選手の勤務する富士精工社の全景

12時、午前中の仕事が終わる。これから昼食であるが、外食は一切せず。必ず自宅に帰ってとる。昼食のメニューは、肉類の煮物1皿、生野菜1皿、野菜イタメ1皿、豆腐1丁である。ごはん、パン、うどんなどの炭水化物は必要最小限しかとらず、肉、野菜、果物などを多くとるようにしているという。

12時30分、食事が終わり、ひと休みしてまた会社へと急ぐ。

12時45分、午後の仕事が始まり、4時15分に終了する。

4時30分、より道もせず、まっすぐ帰宅。

4時45分、糸崎トレーニング・センターの営業を開始する。このトレーニング・センターのスペースは12坪半。さほど広くはないが、糸崎選手自ら考案した器具が整然と並んでいる。バーベル、ダンベルなども、軽い物から重い物まで実によくそろえてある。会員の集まらないうちに、自分のトレーニングを行うのであるが、糸崎選手のトレーニング時間の取り方は多少変わっている。まず1回目のトレーニングを4時45分から5時45分まで、2回目を6時30分から7時30分まで、タ食をとった後、3回目を8時30分から9時30分まで、と3回に分けてトレーニングを行なっている。

そこで、この変則的なトレーニング時間の取り方について聞いてみた。


―― ちょっと変わったトレーニング時間の取り方をしているようですが何か理由があるのですか?
糸崎 たしかに良くないと思っています。時間さえとれれば3時間続けてトレーニングしたいんですが、会員にコーチもしなくてはなりませんし、なかなか思うように時間がとれないんです。できるだけ多く時間をとろうとすると、こんなとり方になってしまうんです。

―― タ食後、すぐにトレーニングを行なっているようですが、体調に異状はありませんか。
糸崎 10分程度休んでから行いますが、もうなれてしまったせいか、体のほうはなんともありません。


さて、いよいよトレーニングを開始する。1回目のトレーニング・コースは

<下腿>
①カーフ・レイズ 25セット
<腰背>
②デッド・リフト 5セット
③ハイパー・バック・エクステンション 5セット
<腹>
④シット・アップ 5セット
<頸>
⑤サイド・ネック・レイズ 5セット(エクスパンダーを使用)

以上で、所要時間は約1時間。トレーニングが終わるころから、会員もぼつぼつ集まり始める。糸崎選手は集まった4〜5人の会員たちにコーチを始める。弟の強さんも、コーチ兼任でトレーニングに励んでいる。

6時30分、コーチを強さんにまかせて、2回目のトレーニングに入る。トレーニング・コースは、

<肩>
①バック・プレス 5セット
②ダンベル・プレス 5セット
③ショルダー・シュラッグ 5セット
以上をスーパー・セットで行う
④ベント・フォワード・ラテラル・レイズ 5セット
⑤サイド・レイズ 5セット
以上をスーパー・セットで行う
⑥リア・ラテラル・レイズ 5セット
<背>
⑦チンニング 5セット
⑧ラット・マシン・プルダウン 5セット
⑨ワンハンド・ケーブル・ロー 5セット

以上で、2回目のトレーニングが終了する。所要時間約1時間。

8時、これから夕食である。メニューは、ステーキ1枚、生野菜、肉類の煮物、朝から夜まで肉と野菜ばかりである。

8時20分、食事が終わり、10分程度休みをとる。

8時30分、本日最後のトレーニングが開始される。トレーニング・コースは、

<二頭筋>
①スロー・カール 4セット
②シーテッド・ダンベル・カール 4セット
以上をスーパー・セットで行う
③インクライン・ダンベル・カール 4セット
④スコット・カール 4セット
以上をスーパー・セットで行う
<三頭筋>
⑤フレンチ・プレス・ライイング 4セット
⑥シーテッド・フレンチ・プレス 4セット
⑦腕立て伏せ 4セット
⑧ワンハンド・フレンチ・プレス 4セット
⑨ラット・マシン・プレス・ダウン 4セット
⑩トライセップス・プッシュ・アウェイ(エクスペンダー使用) 4セット

以上、所用時間約1時間。これでやっと糸崎選手の1日のトレーニングがすべて終了する。
サイド・ネック・レイズ

サイド・ネック・レイズ

ツイスティング・シット・アップ

ツイスティング・シット・アップ

ダンベル・カール

ダンベル・カール

ダンベル・プレス

ダンベル・プレス

8:00。弟の強さんと一緒に食事

8:00。弟の強さんと一緒に食事

ひと休みして、糸崎選手にいろいろ聞くことにする。

インタビューの前に糸崎選手のコンテスト歴を紹介しよう。
1967年 ミスター北陸 優勝
1968年 ミスター北陸 優勝
1969年 ミスター北陸 優勝
1969年 ミスター日本 14位
1971年 ミスター日本 7位
1972年 ミスター日本 7位


―― ボディビルを始めたのはいつですか。
糸崎 高校3年のときです。

―― 動機は?
糸崎 そのころは内臓が弱く、強くてたくましい体にあこがれをいだいたからです。それと兄が重量挙げをやっていたということもあります。

―― ジムができたのはいつですか。
糸崎 2年10カ月程前です。私は以前溶接の仕事をやっていたことがありますので、トレーニング・センターの器具も、シャフトとプレートのほかはすべて弟といっしよに作りました。金銭的にもあまり余裕がなかったものですから。プレートも半分は自分で作ったものを使用しています。

―― ジムが出来る前、トレーニングはどこで行なっていたのですか。
糸崎 自宅に器具をそろえて行なっていました。そのうちにだんだんと器具もふえてきたので、いっそのことと思い、ジムを作りました。

―― これだけ立派なジムをつくるにはいろいろと大へんだったでしよう。全部でいくらくらいかかりました?
糸崎 700万くらいかかりました。建物が550万くらい、器具類が150万くらいです。土地は5年程前に買っておいたので助かりました。もちろん自分の金だけでは足りなかったので、金融公庫や銀行、農協、借りられるところからは全部借りました。全部返済するにはまだ何年もかかりますが、弟と一緒に一生懸命働いて少しでも早く返すように頑張っています。

―― 現在、トレーニングの重点はどこにおいていますか。
糸崎 いまはデフィニション獲得に全力をあげています。

―― 食事には気をつかいますか。
糸崎 炭水化物はつとめてとらないようにして、肉、野菜、果物などを多くとるようにしています。

―― 84%プロティンを使用しているようですが、効果はありますか。
糸崎 ほかにも栄養には神経を使っていますので、プロティンが効いたのかどうかよくわかりませんが、以前から栄養補強として飲んでいます。

―― 間食はとりますか。
糸崎 果物をよく食べます。リンゴとかバナナなどですが、ほかに牛乳とゲートレードをよく飲みます。

―― 酒・タバコは?
糸崎 タバコはさほど気にしていませんから吸うときもありますが、せいぜい1日に2〜3本程度でよほど気がむいたときにしか吸いません。酒もできるだけひかえています。とくにコンテスト半年前になると絶対に飲みません。会社の宴会などもよくありますが、すべてことわるようにしています。

―― 最後に現在の目標は?
糸崎 もちろんミスター日本優勝です。
今年でもう7回目の出場ですから。なんとか上位に入賞したいと思っています。それと、話は変わりますが現在のトップ・ビルダーたちがみなボディビルからはなれていくのを淋しく思っています。もちろん私はまだまだ続けていくつもりです。


9時30分、会員が帰ったあと、ジムの掃除を行う。器具の整理からぞうきんがけまで、実に念入りに行う。

10時、ジムの掃除も終わり、ほっと一息。ここで糸崎選手特製のミックス・ジュースを飲みほす。これは84%プロティン、玉子3コ、スキムミルク、ハチミツ、水のミックス・ジュースである。

10時15分、シャワーで軽く汗を流して入浴。

10時45分、果物と飲み物をとる。果物はバナナ、飲み物はカルピス。これからひと休みして寝るのが11時、こうしてミスター日本をめざす糸崎選手の1日が終わる。
9:30。会員の帰ったあと掃除

9:30。会員の帰ったあと掃除

10:15。シャワーと入浴

10:15。シャワーと入浴

北陸に糸崎ありといわれてすでに久しい。天性のプロポーションと端正なマスクで糸崎ファンは多い。どこといって欠点もないが、そうかといって強烈にアピールするものもない。こんなところが逆に魅力なのかも知れない。しかし、きよう見た糸崎選手のミスター日本に賭ける執念はすさまじかった。きっとことしはやってくれるにちがいない。全国の糸崎ファンはいままでじっとそれを待っていたのだ。変身した糸崎選手が晴れの舞台にさっそうと登場してくるのを期待しよう。

(取材・8月1日)

知っていると有利・栄養ミニ知識

☆便通を考慮して食べよう!☆
消化のよい料理が、必ずしも最良の料理とはかぎらない。消化のよいものばかり食べていると、

①胃腸の活動が弱くなって慢性の胃腸病をおこしやすい。
②消化吸収力が弱って、未消化のまま排出されやすい。
③便秘にかかりやすくなる。

等の弊害が出てくる。したがって、料理する人は消化と排世の両方に注意して。調和をとる必要がある。たとえば、白米は便秘しやすいので、便通性によいタクアンや漬物を添えたり、赤飯にあずき。もちに大根、肉に野菜、煮魚にあんずというように、固いものと柔かいものの組み合わせを忘れずにおこなうとよい。
[ 月刊ボディビルディング 1973年11月号 ]

Recommend