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見直された日本古来の味 〝みそ〟と〝しょうゆ〟

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[ 月刊ボディビルディング 1973年9月号 ]
掲載日:2017.11.17
野沢 秀雄
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<牛乳に変ってみそ汁党の復活>

 毎年ふえていた牛乳消費量が最近は頭打ちになり,生産地の農家で余り出したという話をご存知だろうか?
 牛乳は健康によいというイメージがすっかり頭にしみこんでいるが,農薬による汚染やPCBの心配などで飲む人が減ってきたという。かわって〝みそ汁党〟が復活している。「自然にかえろう」というUターン現象は,朝の食卓にもおよんできたようだ。
 たまたま私も長野県の農家で自家製造されたみそをもらって毎朝食べているが,体の調子はなかなか良いようである。

<スタミナの秘密>

 みその原料は全部大豆だと思っている人が多いが,実際は大豆のほかに米や大麦などが3割~5割も混合されている。この混合比率によって〝甘みそ〟と〝辛みそ〟の差ができる。
 江戸みそ,京みそは約5割の米こうじが使われ,食塩含量は約8%で〝甘みそ〟に属する。仙台みそは伊達正宗が軍事食として作らせたもので,約3割の米こうじを混ぜて作られ,約12%の食塩含量をもつ〝辛みそ〟である。〝辛みそ〟はみそ汁にしたときに伸びがきく利点がある。
 こうじに使われる菌は,アスペルギウスオリザエというカビの一種で,分解力が非常に強い。消化しにくい大豆のたんばく質を液化し,体に吸収されやすくしている。ナトリウム・リン・鉄・ビタミンB2など微量成分も豊富である。
 みそとしょうゆのちがいは,醱酵した〝もろみ〟をそのまま食用にしたのが「みそ」で,プレスして液汁をしぼったのが「しょうゆ」と考えてよい。
 昔,みそは腐敗しやすく,輸送に適さなかったので,各地方において,風土,気候,産物に応じた多種多様のみそがつくられてきた。
 金山寺みそは和歌山地方の名産で,ウリ・ナス・しょうが・しそなどが入っていて味が豊かである。八丁みそは愛知県の岡崎市が主産地で,原料のほぼすべてが大豆である。熟成に時間がかかり,みその中ではもっとも高価である。

<高血圧と食塩の関係>

 健康な人は1日に平均15~20グラムの食塩を食べている。東北・北海道などの寒い地方の人ほど食塩を多くとり九州や中国地方の暖い土地に住んでいる人ほど酢を多くとっている。
 食塩を制限すると体が弱り,だるくて元気がなくなると思いがちであるがすぐになれてくるものだ。1日に1~2グラムあれば人間は生活できる。
 食塩のとり過ぎと高血圧は密接な関係がある。ナトリウムが毛細血管の壁を収縮させて,毛管内腔が狭くなり,血液の通りを悪くする。心臓は強く働いて血液を循環させようとするので血圧が高くなる。
 また,腎臓病とも関係が深い。正常な人の場合,ナトリウムはほとんど全量が尿中に排出されるが,腎臓に炎症をおこしている人は,濾過・再吸収のメカニズムがうまくいかず,体内のナトリウム濃度がふえる。人体はつねに同一濃度を保とうとするため,濃度をうすめようとして,血管や体の組識に水分を蓄積させる。体がむくんでくるのはそのためである。
 そのほか妊娠中毒症・心臓病・肝臓病・栄養失調など浮腫(むくみ)を伴う場合は,食塩を制限した方がよいとされ,とくに急性腎炎の場合は2~5グラム,高血圧の場合は8グラム程度に制限されている。
 最近はこの目的にかなうように減塩みそやしょうゆが発売されている。一般品にくらべて食塩量は半分以下である。

<みそ汁の上手なつくり方>

 しょうゆには18%の食塩が含まれている。普通,すしを食べるときに使うしょうゆは約10ccであるが,この中には約1.8グラムの食塩が入っていることになる。みそ汁1杯には1~2グラムの食塩が含まれる。そのほか自然の食品に1~2グラム。つけ物・食卓塩から約7~10グラムで,1日平均15~20グラムの食塩摂取量となる。
 みそ汁は1人前30グラムのみそと,約50グラムの具(とうふ・なす・玉ねぎ・わかめなど)を入れ,200ccの水で煮ると味のバランスがとれる。
 みそ特有の香りを逃がさぬために,みそはなるべくあとで入れるのがコツである。また,何度も火にかけると香りがとぶので,なるべく一度で全量食べられる量をつくったほうがいい。いっそうおいしく食べるには,花かつをを入れたり,しょうゆを少し加えたりするとよい。
 みそ汁を加えたメニュー例は次のとおりである。
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[ 月刊ボディビルディング 1973年9月号 ]

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