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<第19回1973年度ミスター日本コンテスト展望>杉田欠場ならば宇戸か石神

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[ 月刊ボディビルディング 1973年10月号 ]
掲載日:2017.11.20

杉田の動向が力ギ

 第19代日本一を決定する本年度ミスター日本コンテストも近づいてきた。
 現在各地で地方コンテストが盛んに行われているが,本稿の載ったボディビルディング誌が読者の皆さんに届く頃には,出場選手も出揃っていることと思う。
 しかし,現在の段階(8月28日)では,私の見聞した範囲内の展望に過ぎないので,軽い気持で参考にしていただきたい。また選手諸君も1つの刺激として反揆,一層の努力を期し,実りのある大会とするとともに,今後の糧として精進してもらいたい。

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 本年欠場を表明,または噂されている選手に,昨年度3位の金沢選手を始め,小沢選手,水上選手等があげられているが,10年ぶりに出場して若手選手に大いなる刺激を与えた金沢選手は別として,年令的にも素質においても充分にミスター日本を狙える水上選手や小沢選手の欠場が事実とすれば,まことに残念というほかはない。まだまだ現役選手として大いに活躍してほしいと思うのは私だけではあるまい。いま一度の奮起を促したい。
 広島の小先選手の成長も楽しみにしていたが,出場資格を失ったことはこれまた残念である。
 また,大阪の中原選手にしても,決勝進出可能の素質を持ちながら,大阪協会から本年度出場停止処分を受けたことを反省すべきである。たんに独善的に筋肉のみを鍛えるだけでなく,スポーツマンとしての心の修養も伴って心掛けてほしい。それが真のトップ・ビルダーへ通じる道である。

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 さて,ある意味では本年度ミスター日本コンテストの前哨戦とも考えられる,NABBAユニバース・コンテスト派遣選抜コンテストを参考にして予想してみよう。
 選手自身,もっと選抜コンテストに意欲を燃やし,敵を知り己を知るために,この絶好の機会を利用してほしかった。選抜コンテストから本大会までには75日もの調整期間があり,充分ミスター日本にそなえる準備も可能である。選抜コンテストにそなえて頑張ったからといって,本大会までの期間が苦になるようでは,トップ・ビルダーとはいえないのではなかろうか。
 選抜コンテスト出場資格のある選手の今後の奮起を望みたい。
〔杉田 茂選手〕

〔杉田 茂選手〕

 杉田茂選手は昨年コンテスト時に比し,一段と成長,その切れ味の良さは断然他を引き離していた。協会の選手派遺要項の改正により,ミスター日本と派遣選手とを分離したため,ここ1年近く追われる者の苦しみを充分に噛みしめたことだろう。それがより一層の刺激となり一段の成長につながったものと思う。ロンドンにおいても立派な成績を期待してやまない。
〔須藤孝三選手〕

〔須藤孝三選手〕

 須藤孝三選手は,昨年に比べて確かに上半身に進歩の跡はみられたが,身長に比較した各部のバランスと,重量感という点においてまだ物足りない。いま少し時をかけて上半身のバルク・アップを図る必要がある。
 いままでの入賞順位は,相撲界でよく使われている「少し家賃が高すぎた」と自覚し,ここ2~3年の努力が大切である。スケールの大きい良い素質を生かし,これまでになかったような大型選手としての成長を期待してやまない。苦言を呈しておく。
〔石神日出喜選手〕

〔石神日出喜選手〕

 石神日出喜選手であるが,ミスター日本に焦点を合わせて練習しているためかも知れないが,選抜コンテストでは期待外れであったが,杉田選手を逆転するくらいの努力と熱意をもってのぞんでほしかった。
 昨年は杉田選手と比べ,バックがやや弱い他はまったく遜色がなかった。ところが,選抜大会で見た石神選手はバックの進歩が見られないばかりか,下半身においても昨年よりかえって劣っており,わずかに上半身前面だけが面影を残していたに過ぎない。また,マナーという点でも充分とはいえなかった。本年度ミスター日本を狙う有力選手としてもっと自覚して努力,大成してもらいたい。
 杉田選手が出場すれば,連続優勝の可能性は極めて高い。ただ,選抜コンテストからユニバース出場,馴れない外国旅行等,相当長期にわたるため。帰国後の調整に多少の無理をしなければならず,果たして出場するか否か疑問であるが,規程改正によって連続出場が許されたのであるから,ぜひ連続優勝の偉業に挑戦されんことを期待したい。

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〔宇戸信ー選手〕

〔宇戸信ー選手〕

 次に現在の段階で杉田選手に肉薄する選手として,広島の宇戸信ー選手をあげたい。
 昨年は敢然とイメージ・チェンジに挑戦,その成果をひっさげて出場,惜しくも5位に止まったが,もっと上位に出てもなんら遜色のないものであった。人柄の良さと真面目さが,ポージングの迫力をやや弱めた感じがあったためかも知れない。爾後1年の努力によって,バルク,デフィニションともに一段の進歩を示し,上半身の切れ味も良く,指導に当っている金沢氏も,今後の追込み調整に注意するだけだといっている。杉田選手を別にすれば,本年度優勝を狙う一番手にあげたい選手である。
〔木本五郎選手〕

〔木本五郎選手〕

 大阪の木本五郎選手もいままでの練習法を変えて,デフィニションを良くすれば優勝を狙える選手である。このことを本人も自覚して努力しているとのことだが,どこまでイメージ チェンジできるかがポイントである。もっと早くアドバイスを聞くべきであった。

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 年々地方と東京や大阪地区との差が縮まってきている現在,どこからダークホース的選手が出現しないとも限らないので楽しみもある。昨年は九州地区がやや停滞気味であったが,奮起を促したい。
〔糸崎大三選手〕

〔糸崎大三選手〕

 その他,上体入賞をうかがう選手として鹿児島の小斎平豊選手,静岡の大石秀夫選手,石川の糸崎大三選手,千葉の佐藤大機選手,九州の寺川和昭選手,同じく牧島進一郎選手,大阪の荒木健一選手,大阪から東京に移った宮畑豊選手,東京の古屋喜久雄選手,神奈川の吉川進選手,吉田純久選手,実業団の坪井善司選手等,ついで長崎の盛選手,高橋選手などが考えられるがここ2~3カ月の追込み練習如何によって,余断を許さない接戦となることはまちがいない。
 大石,糸崎の両選手は,ともにバランスの良い体であるが,惜しむらくはいま一歩の迫力にかけており,デフィニション不足を克服しておれば,一段と上位進出が可能である。また,佐藤選手は一回りのバルク・アップが達成されれば上位進出が期待できる。
 宮畑選手は人柄の良さがかえって迫力を欠いて損をしている。いま少しデフィニションをつければ迫力も出て楽しみな選手である。

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 あれこれ選手諸君の特徴や弱点を考えてみるのも楽しい。そしてまた,これらをいかに伸ばし,いかに克服変身して,努力の成果を展開してくれるかを想像してみるのはなお楽しい。
 杉田選手が欠場した場合,優勝候補の筆頭は宇戸選手,つづいて石神選手であろう。石神選手が選抜コンテスト以後,どれだけの成果をあげたかが優勝争いのポイントになろう。
 それを追って須藤選手,木本選手以下がどこまで追い込むか。いずれにしても近年にない白熱した接戦を展開することはまちがいない。
 最後に,苦言を呈した選手もあるがより一層の大成を望む切な気持で自覚を求めたまでである。反揆を感じたならば,より一層その恐りを練習に向け大成されることを願う。
 コンテストは,たんに肉体のみを競うのではなく,スポーツマン・シップやマナーも合わせて審査されていることを認識し,心の修養をも怠たらぬよう望み,筆をおく。


(JBBA副理事長,大阪ボディビル協会々長 佐野誠之)
[ 月刊ボディビルディング 1973年10月号 ]

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