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なんでもQ&Aお答えします 1973年10月号

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[ 月刊ボディビルディング 1973年10月号 ]
掲載日:2017.09.22

マルティ・パウンデッジ法とは

Q
 ボディビル歴2年の21歳の学生です。身長170cm,体重67kg,胸囲110cmです。
 友人に「筋力を強くし,筋肉を大きくするには,スクワットやベンチ・プレスでやっとできる重量から段々と軽くするマルティ・パウンデッジ法が一番効果的だ」と教えられ,さっそく実行してみようと思うのですが,もう少し詳しくこの方法について教えてください。なお,いままではセット法だけを行なっていました。(長岡市Y・T)
A
簡単に説明しますと,マルティ・パウンデッジ法とは,あなたのおっしやるように,段々と軽くするだけの方法ですが,詳しく説明してくださいとのことですのでお答えします。
 横文字で「マルティ・パウンデッジ法」なんて書きますと,いかにも難しく感じますが,あまり難しく考えない方がわかりやすいでしょう。
あなたぐらいのキャリアと体格ならば,この方法で練習すれば効果が現われると思いますが,キャリアの浅いうちに,やれチーティング法だ,やれフラッシング法だ,あるいはジャイアント・セット法も効果があるなどと,いろいろな方法を人に教えられたり,本で読んだりして何を採用していいのか迷っている人を見かけますが,これはあまり感心したことではありません。
基磯体力がないうちに上級者用のトレーニング法をまねても意味のないことです。少なくとも最初の1年間はセット法だけのトレーニングで十分効果が得られると思います。
 さて,あなたの場合は,そろそろセット法の効果も現われたでしょうからこの辺で中級者用のトレーニングへと一歩駒を進めてみるには最も適した時期だと思います。ただし,この方法ですべての運動をするのではなくて,始めはこれまでのトレーニングの一部分に,このシステムを加えるといった感じでやってください。
 ベンチ・プレスを例にとって説明しますと,もしあなたが最大で100kgが3回なら,ウォーミング・アップ後,まず90kgで7回あげたら,すぐに自分でプレートを外して(パートナーに外してもらえばもっと能率的ですが,始めはなるべく自分で行なってくださいでないと,パートナーがいないときやりずらくなってしまいます)。
10kg軽い80kgにして,できるだけの回数をあげたら,また直ぐに自分で外して70kgにして,できるだけの回数をあげます。これを3セットか4セット行なってください。それで十分です。
 いま述べた方法は,スクワットやスタンドを使ったアーム・カール,バック・プレス,フレンチ・プレス等にも応用できます。コツは,できるだけ素早くウェイトを付け変えることです。この点,のんびり屋には向かない練習方法かも知れません。
 筋力やサイズの効果が現われ,それ以上の発達が停滞したときにはこの方法をやめて,再び以前のセット・システムに戻すか,他の練習方法を採用するかすればいいでしょう。

ベンチ・プレスで顔に落した

Q
 私は自宅でトレーニングを始めてちょうど6ヵ月になります。いままでこれといってスポーツらしきものをした経験もなく気がついたときには,人から中年太りといわれるようになっていました。
 多少の焦りを感じて,最近は週に3日の練習に精を出しています。順調に効果も現われ,すでに5kgの体重調整に成功しましたが,最近ベンチ・プレスのときに50kgで4セット目の最後に挙げようとして,力尽きてしまい,シャフトを顔に落してしまったのです。
幸いケガはしませんでしたが,そのときの恐怖感が残っていて,それからはどうしても無理のない重量や回数でしかできません。そのためベンチ・プレスの重量を増すことができません。ベンチ・プレスの安全な姿勢をご指導ください。(杉並区・吉田)
A
 顔にシャフトを落したとのことですが,多分,両手でシャフトを握ったままベンチのラック(バーベル掛け)まで挙げきれず,また,大胸筋へもシャフトを下ろせなかったので,ゆっくりと顔面へ落してしまったのだと思います。
 たとえ重量が軽くても鼻の上へ落したら,当然鼻血が出るでしようし,口の上に少し強く落せば歯が折れるかも知れません。いずれにしても顔面に落すことは非常に危険です。
 トレーニングしていてバーベルを顔に落すなどとは考えられないようなことですが,決してあり得ないことではなく,顔面でなくても,胸の上に下ろしたシャフトが汗ですべって首までくるようなこともあります。とくに初心者のうちは,バーベルを胸に下ろすコースが一定せず不安定になりやすいので,極端にバランスを崩したときにこのようなことが起こったのだと思います。
 人間は本能的に顔面は防ぐものですが,この場合は,両手でバーベルを握っているのですから防ぎようがないわけです。
 私の想像ですと,あなたは多分これまでベンチ・プレスで自己の限界よりだいぶ軽いウェイトでトレーニングをしてきたのではないかと思います。そして力も順調についてきたので,始めて自己の最大重量に挑戦し,そのときつぶれたのでしよう。それまでに一度もつぶれたことがない場合,途中で挙上できなくなったときには,びっくりして,正しく大胸筋の上に下ろすだけの冷静さを失ってしまうものです。
 つぶれたときの練習というと変に感じられますが,そのような練習とか心得も必要なのです。ベンチ・プレスばかりでなく,スクワットなどでも同じことです。1人だけでトレーニングするときは,とくに安全面には細心の注意をしなければいけません。万一,つぶれた場合のことを考えないでトレーニングするのはよくありません。
 ベンチ・プレスの場合,挙上したとき顔の上までシャフトを持ってくる必要はなく,大胸筋下部(乳首上の線)からスタートし,腕が伸びきったときの状態が,首と大胸筋下部との中間か首の上の位置にくるのが正しいコースなのです。ですから顔に落としたのは多分ラックに乗せる寸前だったのでしよう。手が伸びきらないうちに無理にラックにのせようとするのは一番危険ですから注意してください。
 あなたが1人でトレーニングしていて,そのうえこのようなことが起きれば恐くなるのも当然です。むしろ恐怖感を感じない人の方が不思議です。しかし,50kgの練習で恐くなってしまい限界を感じるのはもったいないと思います。つぶれても平気なように,自分で起きあがる練習をして再スタートしてください。
 なお,とくに自己の最高重量に挑戦するような場合には,パートナーを頼むのが賢明です。ジムなどで練習するときはお互いに交替して補助をつとめるようにすればよいでしょう。自宅練習者の場合は,友だちにボディビルの有効性を説いて,一緒にトレーニングをするようにすれば,競争心もわいて一挙両得です。

スタミナをつけたい

Q
 小生は肥満体ではありませんが,筋肉がポッテリとしている脂肪質で,わりと筋力はあるのですがスタミナがありません。スタミナをつけるための練習方法をお教え願えればと思います。
(杉並区・長田広達)
A
 あなたと同じようにボディビルを3~4年実践している人たちの中にも,意外とスタミナのない人が多いようです。そのような点が,一昔前に「ボディビルは見せかけの体だ」と非難された根源ではないでしょうか。
 ボディビルはすべてに万能なギリシャ神話の登場人物のように完全で,神がかり的な人間をつくるためのものではないのですから,ビルダーにマラソン選手のスタミナを求めることはナンセンスです。かといって,草野球のピッチャーもできないようなスタミナしか持っていなければ,なんのためのボディビルかと疑ってしまいます。
 かくいう私も,スタミナこそ多少ありますが,運動神経が非常に鈍く,現在でも逆立ちや水泳がまったくできません。ビルダーらしき体格にするのに精一杯で,やれスタミナだ,運動神経だ,柔軟性だ,といわれても,とてもそこまで手が回りません。
 要するに,ウェイト・トレーニングに十分な効果を発揮できるだけのスタミナだけは必要ですから,そのための最低限度のスタミナを身につけなければなりません。そして,さらに積極的に考えて,特別にスタミナ(持久力)をつけるためのトレーニングに一定期間を費やすのも有意義です。このことは,長い目で見れば,体力増進,循環機能の強化をもたらし,日常の社会生活のためにも大いに役立つことです。
 スタミナをつけるためのトレーニングには,サーキット・トレーニングやPHAシステム等があります。何やら難しそうな名前ですが,簡単にいえば,あまり重くないウェイトのバーベルやダンベルを使い,体全体の筋肉を順にトレーニングしていきます。その間休憩は短くして,全部終わったら再び始めから繰り返せばよいのです。
 サーキット・トレーニングと,PHAシステムとの違いは当然ありますがあまり神経質に考えるよりも単純に考えてください。PHAシステムはビルダーのためのサーキット・トレーニングみたいなもので,それが前述の方法です。しかし,筋力向上のためには他のセット法やスプリット・ルーティーン等の方がより効果がありますのでスタミナをつけるためのトレーニングを数ヵ月続けて,自分でスタミナがついたことが自覚できたなら,再び以前のトレーニングに戻すようにすればよいでしょう。

ボディビルの将来

Q
 健康管理のためにバーベルを握って,かれこれ8年を経過した31歳の一ボディビル・ファンです。私は別にバルク・アップとかカット・アップを望んでいるのではなく,現在の体格と体力を維持する目的をもってトレーニングしています。近所の人や,会社の同僚などにもボディビルの良さを説いて,トレーニングを始めた人はいままでに数十人にもなります。
 しかし,ボディビル界の動きが依然としてコンテスト一辺倒なので,私のようにこれといってビルダーらしくない体格では,ボディビルの良さを人に説得するのにはたいへんな努力を要します。
 ボディビル界はコンテストやパワーリフティング大会だけを繰り返す状態に落着いていますが,それだけでよいのでしょうか? ごく一部の選手のための行事に終始していることに疑問を抱いているのですが。(堺市・村石)
A

 コンテストやパワーリフティングだけのボディビルでよいのか? というご質問ですが,このような声は以前から聞かれており,大いに問題とするところであります。従来からあった各ジムでも最近その問題を重要視して,健康管理のためのトレーニングに力を入れているようです。その意志の現われとして,何何ボディビル・センターを改名して何何トレーニング・センターとしたジムもいくつかあります。
 しかし,まだ現在はボディビルという名称よりもトレーニング・センターという名の方がメンタルな面でソフトなので……といった感覚的なところを利用しているぐらいのところが多く完全にボディビルと違っているのではありません。
 もちろん,ボディビルの名前を改めてトレーニング・センターにすることだけで,事足りるはずもなく,相変らずその内容は従来と同じようにボディビルであって,実質的には変わっていませんが,ジムの経営者やコーチたちが,中・高年者や女性など,あらゆる人たちのためのウェイト・トレーニングとすべく,努力,研究していることも事実です。
 しかし,健康管理中心のカラーにすれば,コンテスト・ビルダーやパワーリフターは育ちにくくなり,また,その逆もいえるのですから,そこに難しさがでてくるのです。
 現在ではその中間の場合が多いと思いますが,一流のコンテスト・ビルダーやパワーリフターを数多く輩出し,それをジムの特色としているところもあり,また,健康管理中心のジムもあります。立地条件,設備,規模,経営方針等から必然的に特色が決定するので,一概に良いとか悪いとかいうことはできません。
 指導者たちがそのように前向きに考えていても,その指導者たちが集まってつくっているボディビル団体が行う最大年間行事は,やっぱり相も変わらずコンテストやパワーリフティング大会だけなのです。決してそれが悪いというのではないのですが,それだけで満足しているとしたら,あなたの心配しているように,ボディビル界の将来は必ずしも明るいとは申せません。
 ボディビル団体が,性別,年齢に関係なくできるこの理想的なトレーニングを,一般社会へ広くアピールするための努力がまだまだ足りないと私は思います。その努力を十分にしないで,ボディビルは社会体育ですといっても不自然な感じがします。
 ボディビル団体そのものが,まだバレーボールやサッカー等の団体とは比べものにならないほど弱少であることが,活動を鈍らせているのでしょうが弱少であるからコンテストやパワーリフティング大会以外の活動はできないのだと答えるだけで済ましてよいものでもありません。
 社会に認められていないスポーツ団体が,大きく成長するためには幾多の困難があると思います。ですから,これからのボディビル界は,一歩一歩広く一般社会に対しての広報活動を積み重ねていかなくてはならないと思います。
 また,このボディビルの普及発展には,愛好者1人1人が身近な人にその有効性を認識してもらうことが大切だと思います。

腹筋のトレーニング

Q
  毎月楽しくボディビルディング誌を読んでいます。私は今月でちょうど1年目のボディビル生活を迎えます。
 腕も胸も期待以上に発達して,トレーニングが楽しくて仕方ありません。もう30歳近いのですが,ボディビルが年齢にはあまり関係ないことを身をもって知りました。でも,もう少し発達させたいと思う腹筋だけが,どうしてもあまり効果が出てきません。
腹囲85cmから80cmになっただけで,それっきりです。これ以上細くするにはどうしたらよいか迷っています。腹筋のトレーニングは,シット・アップを30回×5セットを週4~5回実施しているのですが。(北九州市 M・T)
A

 30歳ぐらいで〝もう年だ〟などと思っておられる方が世の中にはたくさんいますが,ボディビルに年齢は関係ないのです。
 あなたの場合,1年間で腹囲が5cm細く締ったことは立派に効果をあげたといえます。ボディビルは奇術ではないのですから,1年で誰もが10cmも15cmも細くなるとは限らず,むしろそんなに締るのはめずらしいことです。
 お手紙によりますと,1年間にかなりのビルド・アップに成功したので腹筋の発達だけがおそく感じられるのだと思います。
 1年間で5cmもウエストが締ったのに,なお腹筋の効果に不満を持っていることは,あなたがそれだけボディビルに意欲を持っているからです。その気持を持ち続けるならば,今後もっともっとよくなっていくことは間違いありません。
 腹筋の運動としてシット・アップだけのようですが,その他の腹筋の種目を加えてスーパー・セットで15分~20分ぐらい休みなく運動すれば一層効果が出るかと思います。
 例えば,シット・アップ20回,続けてレッグ・レイズ20回,さらに続けてサイド・ベンド20回,この3種目をサイクルにして休まずに15分~20分続ければ時間も短くて済みます。傾斜角度はそのときの体調に合わせて調節します。そして,ときどき種目を変えてあきないようにバリエーションを考えて行えば,3ヵ月目ぐらいから効果が出てくると思います。
 3種目を組み合わせたトレーニングはスーパー・セットといわず,トライ・セットといいますが,理屈は同じようなものですから,そのへんはあまり気にしないで,ときには4種目にしてもかまいません。要するに,腹筋の種目をいろいろ選んで,一定時間休憩を入れずに動き回ればいいのです。
 また,バルクを犠牲にしてもよいのであれば,これらの運動のあとでランニングをすることです。腹筋のためのトレーニングの最後の砦はランニングですが,それまでしなくても前記の練習で十分効果が期待できるでしょうから,まず3ヵ月はこれを実行してみてください。
 脂肪質の人は練習の割りには効果がなく,筋肉質の人は練習の割には早く効果が出るのが腹筋の特徴ですが,努力して得たものはそれだけ意義のあるものです。
解答は五反田ボディビル・センター位田達穂コーチ(写真)

解答は五反田ボディビル・センター位田達穂コーチ(写真)

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