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メダルはだれの手に?
~ メキシコ・オリンピック大会重量あげ競技予想 ~

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[ 月刊ボディビルディング 1968年10月号 ]
掲載日:2017.12.03
 先月号でオリンピック日本代表選手を紹介しましたから、今回は10月13〜19日の1週間にわたって行なわれる本番のメダルの行くえを予想してみましょう。とくに興味をおもちの方は、自分で予想を立ててみてはいかがでしょうか。

 それでは軽いクラスから順にいきましょう。

◆ バンタム級(体重56kgまで)

 今回の優勝候補の1人で、東京オリンピックで優勝したA.ワホニン(ソ連)が国内で選手資格を停止されて出場があやぶまれているので、昨年のプレ・オリンピック2位、そして今夏
367.5kgの世界新をマークしたG・チェチンがソ連代表として出場するものと予想される。

 このクラスには、日本代表として一ノ関史郎選手が出場するが、I.フェルディ(ハンガリー)、M.ナシリ(イラン)、G.チェチン(ソ連)、F.バエズ(プエルト・リコ)ら357.5〜365kgの実力者が顔を並べており、激しい優勝争いが展開されよう。このなかで金メダルの最右翼は、I.フェルディであろう。彼は365kgの世界記録保持者であり、東京オリンピックではわずか2.5kg差でA.ホワニンに敗れているが、今回は万全を期して出場すると思われる。

 フェルディにつづくのはM.ナシリであろう。昨年のプレ・オリンピック優勝の余勢を駆って、今回も優勝する可能性は十分にある。

 さて、わが一ノ関選手だが、少なくとも銅メダルはとってもらいたいものだが、ひょっとすると優勝をさらうのではないかとも思われる。今年の社会人選手権大会で、バンタム級より2kgていどのオーバーでフェザー級に出場して387.5kgの好記録をあげ、バンタム級で370kg以上はぜったいに可能と予想されるからだ。もちろん、370kgは世界新記録である。このクラスでは一ノ関選手は外国選手にとってもっとも不気味な存在であろう。

 いずれにせよ、各選手の実力伯仲でそれぞれ得意種目が異なっており、ジャークの最後まで、メダルの行くえは確定しそうにないと思われる。

◆ フェザー級(56〜60kgまで)

 このクラスでは、三宅義信選手の金メダルは確実と見られ、おそらく400〜405kgの世界新記録をマークして、オリンピック2連勝をとげるであろう。銀メダルはM.ノワック(ポーランド)が有力である。棒高とび4m、垂直とび90cmのバネと、得意の射撃で身につけた集中力を発揮して、390〜395kgをマークするものと思われる。

 ここで問題なのは、三宅義信選手の実弟義行選手が銅メダルを確実に獲得できるかどうかである。実力の上からは銅メダル十分であるが、多少の不安を感ずる。金-三宅兄、銀ーノワック、鋼ー三宅弟と見たい。
記事画像1
写真上は三宅義信選手。下はバザノフスキー選手(ポーランド)。

◆ ライト級(60〜67.5kgまで)

 東京オリンピックで優勝したW.バーザノフスキー(ポーランド)は「メキシコではミドル級で優勝したい」と語っていたが、ミドル級のV.クレンツォフ(ソ連)が急激に実力を上げてきたので、敵せぬと見て、順当に勝てるこのクラスに出場する。オリンピック2連勝はかたいであろう。筋肉質でスラリとした体躯とカーク・ダグラスばりのマスクが印象に残る選手である。445kg以上の世界新をマークしそうだ。

 このバザノフスキーにつづくのは、同じポーランドのM.ゼリンスキーであろう。38才、オリンピック出場5回目のベテランである。しかし、N.ノガイツェフ(ソ連)が出場すれば、ゼリンスキーと激しい銀メダル争いは必定。

 このクラスの日本代表は八田信之、木村岳夫両選手だが、とくに八田選手は420〜425の実力をもっている。試合運びの雑なのが心配だが、ノガイツェフが出場しないばあい、1発勝負がうまく決まれば、銀メダルは可能。しかし、4〜5位が順当なところか。木村選手は、同等の実力をもつ選手が多いので、成功率が悪ければ、6位入賞もあやぶまれるが、かなり勝負強いから、6位入賞は夢ではない。

◆ ミドル級(67.5〜75kgまで)

 東京オリンピックで金メダル候補の筆頭にあげられながら、銀メダルに甘んじたV.クレンツォフ(ソ連)が、その後実力をあげて、現在472.5kgの世界新記録を保持しており、実力的には480kgは可能と思われるので、まず金メダルは不動。問題は銀、銅争いであるが、わが大内仁、R.ニップ(アメリカ)、E.シミルノフ(ソ連)の3者の接戦となりそう。最近の情報から見ると、3者甲乙がつけがたいが、過去の経歴から推して銀は大内選手がやや有力。銅はシミルノフ選手あたりにおちつくのではないかと予想される。大内選手にとっては油断のできない相手である。

 もう1人の日本代表三輪定広選手は東京オリンピックで5位に入賞しているが、435〜440kgの実力をもつ選手が多く、自己のベスト記録430kgを上回らないと入賞は不可能。ジャークで逆転入賞を期待したいところ。

◆ライト・ヘビー級(75〜82.5kg)

 このクラス以上は、日本選手のレベルが低く、6位入賞の可能性がうすいので、代表選手なし。

 このクラスは、バンタム級同様、実力伯仲の選手が多く、メダルの行くえは混沌としている。金メダル争いは、G.ベレス(ハンガリー)、V.ベリヤエフ(ソ連)、新進のB.セリツキー(ソ連)の3者と目されるが、おそらく3人とも495〜500kgを目標としていると思われる。金、銀、銅はこの3人の手中にはいるのではなかろうか。

 しかし、N.オジメク(ポーランド)、J.プレオ(アメリカ)、K.アルノルト(東ドイツ)、H.ズドラジラ(チェコ)らが上位入賞をねらってシノギをけずると思われ、番狂わせが起こる可能性は十分である。

◆ ミドル・へビー級(82.5〜90kg)

 昨年急激に頭角をあらわし、従来の世界記録をいっきに25kgも更新して、512.5kgの世界記録をマークしたY.タルツ(ソ連)の優勝は確実と見られていたが、東京オリンピックでライト・へビー級7位のK.カンガスニオミ(フィンランド)がこのミドル・ヘビー級に上がって、急速に実力を上げ、今夏、タルツの512.5kgを破る515kgの世界新記録をマーク、また同じ日にプレス175.5kgの世界新記録にも成功しており、さらにスナッチ157.5kg、トータル522.5kgを成しとげ、いちやく優勝候補に浮かび上がった。タルツとの優勝争いが見もの。

 銅メダルは、G.トート(ハンガリー)、A.カリニチェンコ(ソ連)両者の争いと見られる。

◆ ベビー級(90kg以上)

 身長190cm、体重160kgの巨漢、東京オリンピックでジャーク217.5kgの世界新を出して、Y.ウラソフ(ソ連)に逆転勝ちし、重量あげの新しい王者となったL.ザボチンスキー(ソ連)が、重量あげ史上初の600kgの大台を成し、オリンピック2連覇をとげるものと思われる。

 しかし、アメリカの新鋭リフター.R.べドナースキーがプレス204.5kg、ジャーク220kgをマークし、急激に調子を上げているので、ザボチンスキーも油断はできない。銅メダルはG.ピケット(アメリカ)、J.デューブ(アメリカ)のどちらが出場しても獲得するであろう。

 いずれにしても、このクラスは米ソの選手が圧倒的に強く、他の国の選手のはいりこむ余地はない。
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へビー級ザボチンスキー選手(ソ連)
 以上、全階級の予想を立ててみましたが、世界最大の競技会オリンピックでは、メダルや好記録をねらうあまり、トレーニングをやりすぎて負傷する選手が多く、逆にコンディションづくりに成功して奇勝を博する選手もいて、かなり予想のはずれることもありますので、その点はあしからず。

 最後に、まとめとして、各級の予想順位と予想記録をしるしておきましょう。なお、この原稿執筆時はまだエントリーが完了していないので出場選手に多少の異動が出ると思います。(福田 弘)
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(注)(ハン)はハンガリー、(ポ)はポーランド、(ソ)はソ連、(フ)はフィンランド、(米)はアメリカ、(日)は日本の略称。記録は3種目(プレス、スナッチ、ジャーク)の合計記録です)
[ 月刊ボディビルディング 1968年10月号 ]

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