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"67年ミスター日本コンテストをふりかえって"
日本でやろうミスター・ユニバース

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月刊ボディビルディング1968年6月号
掲載日:2017.12.07
座談会

昨年11月5日,日比谷公会堂で行なわれた第12回"ミスター日本"コンテストは,空前の盛況だった。ボディビル普及の見通しは明るい……やがてはミスター・ユニバースも日本で……。だが,考えてみよう。ボディ・コンテストの行き方はいまのままでよいのか? ボディビルのあり方は? ボディビルを愛し,その発展に献身する5氏の抱負,批判そして苦言に耳を傾けていただこう。
出席者■田鶴浜弘(協会副会長)■玉利斉(協会理事長)■竹松孝一(協会理事・実業団協議会幹事)■小泉信雄(協会技術委員)■佐藤芳哉(協会事務局次長)
左より,後藤(3位),小笹(1位),武本(3位)の3選手

左より,後藤(3位),小笹(1位),武本(3位)の3選手

上がった選手のレベル

 玉利 待望のボディビル誌も復刊されて,これから大いにボディビルの普及啓蒙のために力をつくしてもらうことになりましたが,ボディビル協会も,昨年の秋に,全国一本化が完成し
てはじめてのミスター日本コンテストを花々しく開催したわけです。そのミスター日本をかえりみて,いろいろな観点から,とくに選手のレベル,あるいは舞台構成,将来のコンテストのあり方などについて,皆さんのザックバランなご意見をうかがっていきたいと思います。まず選手のレベルという点について,田鶴浜副会長からひとつ。
 田鶴浜 60名あまりの選手たちが参加したわけだが,レベル以下の人はじっさい2割あるかなしだと思ったね。だから,審査にあたった人は,決勝の12名を選ぶのにずいぶんと苦労したと思うな。
 玉利 いままでのミスター日本は,どちらかというと,まだ一本化されていなかっただけに,関東の選手が中心だったと思うのですが,こんどの大会では,関西勢,九州勢が大挙してのりこんできて,12名のうち7,8割までは関西勢で占められた。この点はどう思われますか?
 田鶴浜 正直のところ,関西のほうが筋肉的にはすぐれていたとぼくは思うな。全体から見て,大阪のコンテストを見たときに,ポージングのいやらしさが目についたんだが,それがこんどの場合はなかったですね。それから,プロポーションについても,関西はあんがいよかったですよ。
 玉利 関東の選手は,ポーズがきれいで,筋肉を見せるというより,全体のバランスのとれた一つの美しい線を出す。それに対して,関西の人たちのポージングは,どちらかというと筋肉だけをものすごく見せることに重点をおいてくるということがよくいわれていましたけれど,小泉さんどうです?
 小泉 私の担当は選手係りで,舞台の裏の方が主だったんで,選手の体を見たのは,表彰台に3名上がったときだけなんです。じっさいに関西のコンテストは一度も見たことがないし,まあ控え室で見たかぎりでは,私どもがコンテストに出ていた4,5年前にくらべると,そうとうの開きがあるようですね。
 玉利 4,5年前と現在とのレベルの差ね。さっきいわれた関東と関西の差については,どう思われました?
 小泉 まあ,筋肉の質でいえば,関西の方はデフィニティブですね。こまかい面がよく出ていたように思われました。

1,2,3位の戦績

 玉利 どうです,田鶴浜さん。ひとつ1,2,3位と順位を追って批評してみましょう。1位の小笹君からいきましょう。
 田鶴浜 小笹君はまことに男性というものを感じさせたな。これこそミスター日本だな,とぼくは思ったね。
 玉利 ということは,印象だけではなく,何か具体的なものがあって?
 田鶴浜 彼のポージングはひじょうによかったと思いますよ。それから,筋肉そのものもだね。じつによかったな。ほとんど非のうちどころがないとぼくは思ったですね。
 玉利 なるほどね。2位の武本君は?
 田鶴浜 これはポージングであるていどかせいだという気がするが,どうだろう?
 玉利 武本君はミスター大阪で1位になって,昨年も東京のミスターに出るといっていて出られなかった。彼としては初めて東京の舞台をふんだわけですがね。
 田鶴浜 とにかくポーズでごまかされたな。あるていど。
 玉利 どうです,佐藤さん。
 佐藤 60余名のうちの第2位。まあ妥当なところじゃないですか。審査員の方も,それぞれ好みによって意見がちがうと思いますが。デフィニションそれからポーズがずばぬけておったように記憶しています。
 玉利 バルクという点でも,そうとうなものだったんじゃないですか?
 佐藤 バルクはまずたいへんなものですね。
 玉利 竹松さん。どうです? あなたは実業団チャンピオンで現在38才。まあ日本のコンテスト史上最高年齢のミスターだと思うんだけど。(笑)
 竹松 そうですね。ぼくはほとんど裏方で,横の方からばかり見ていましたけど,ずばぬけていましたね。やっぱり,東京へ何回も出てきて,東京のよいところを十分に吸収して練習した効果が,こんどの2位という結果になってあらわれた,とぼくは思うわけですがね。
 玉利 要するに,関西の力強さに加えて,東京のきれいなポーズを身につけたというわけですね。
 竹松 十分に研究したんでしょう。
 玉利 3位は東京側のべテラン後藤選手だったんですけど,彼はどうです?
 田鶴浜 ぼくはけっこうだったと思いますね。
 玉利 小泉さんは後藤選手と何回かコンテストで顔を合わせてますね。後藤選手はもう34才ですが,それでも3位にくいこんだということは,たいへんな努力だったと思うんですが。
 小泉 私は,指導している人たちからもう何年ボディビルをやっているのか,とよくきかれるんですが,問題は何年やったかではなくて,その間自分のレベルをどうやって維持していくかなんです。後藤さんは,私どもの先輩ですし,15,6年はやっているわけですね。その長い間,トップ・レベルを維持していくのは,なみたいていの努力じゃなかったろうと思いますね。
 玉利 たんに健康管理としてつづけるんじゃなしに,ボディビルの中の競技面であるコンテストに第一線選手のレベルを十何年間も持続するのは,たいへんなことですね。
 小泉 私も経験がありますから,それはよくわかるんです。
 竹松 じっさい後藤さんのばあい,仕事が変則的で,ふつうのサラリーマンとちがったきつい仕事をやっているわけですよ。そのような仕事をやりながら,なおかつ,現在も第一線に活躍しているということは,たいへんなものです。
 佐藤 長年つちかわれた力強さ,むしろすごみというんでしょうか。それが動作の一つ一つににじみ出てくるような感じでしたね。
左から 小泉氏 竹松氏 玉利氏 佐藤氏 田鶴浜氏

左から 小泉氏 竹松氏 玉利氏 佐藤氏 田鶴浜氏

そろそろ身長別を

 玉利 次は,これもまた東京側の切り札だったんですが,惜しくも3位にはいれなかった中村君。ミスター神奈川を勝ちぬいてきて,今年は優勝候補の声もあったんですけど。
 田鶴浜 中村君はせんさいな美しさというかな,なんとなくいいふんいきをもっていますよね。それにポージングもきれいだったし。だけど,いかんながら,やっぱりあの中にはいると,バルクがいくぶん足りないな。
 竹松 そうですね。たしかにきれいなんだけど,おとなしさというのかな,彼の性格的なものが出てしまって,けっきょくそれがマイナスになっているといった感じをうけましたね。もっと男性的なものをぐっと出せば,もっとよかったんじゃないかと思ったんですがね。
 田鶴浜 それはありましたね。
 竹松 ポーズ自体にも,豪快さがなかったですよ。
 玉利 次に5位の小林選手ですが。
 田鶴浜 筋肉そのものはすばらしかったね。非のうちどころがないんじゃないかしら。ただ,小さいんでだいぶ損をしたと思うな。
 玉利 ということは,そろそろミスター日本コンテストにも,身長別を考えなければいけないということにつながってくると思いますが?
 田鶴浜 賛成ですね。
 玉利 そのほか小林選手についてはどうです?
 小泉 ひじょうに背が低いですね。しかし,その低さを感じさせない。全体がよくできてますね。
 玉利 6位は,三重のベテランの東選手。これはいままで関西のコンテストではつねに上位,2位か3位を占めてきた選手です。濶背筋がすごく大きい選手で,はるばる三重からたくさんの後輩をひきつれてのりこんできたんです。東選手についてはどうです?
 小泉 やはり,背はあまり高くなく色が黒い。船に乗ってるそうですね。
勢ぞろいした決勝出場の12選手

勢ぞろいした決勝出場の12選手

めだった地域差

 玉利 こうやって,ミスターの人たちが全国から集まってきたんですけれども,総体的に見ますと,まだまだ地域差があるといえますね。
 田鶴浜 ポーズがちがっているよ。
 玉利 ポーズもですけど,筋肉のできぐあい,発達状態が,ボディビルの普及度合いによってちがってきていると私は思うんですが。だから,まだまだボディビルは全国一律に普及していないといえる。それだけに,これからの発展が楽しみだし,また協会のはたすべき役割も大きいということになってくる。
 田鶴浜 北海道から出てきた人で,なんといったかな?
 玉利 北海道の山田君ですね。昨年も出ましたし,そうとうレベルが上がってきたんですが。
 田鶴浜 あの人は印象に残っているな。
 玉利 彼もどちらかといえば,中村選手型の人でしたね。線のいい。
 田鶴浜 中村君よりは力強い。
 竹松 北海道あたりもね,まだまだやっと芽ばえてきたというような状態ですからね。
 玉利 まだ北海道にはジムらしいジムというものはない状態ですね。
 佐藤 個人でやっているか,同好会でしょう。
 玉利 とくに印象に残った選手は?
 佐藤 そうですね。われわれ関東の人間の手前みそになっちゃうんですが,7位の鈴木選手。コンテストのちょっと前に負傷して手術しましたね。ひじでしたか。その負傷にもめげず,カムバックしていい線を出しておりましたね。
 竹松 負傷がたたって,けっきょく練習不足ですよね。それが多分に腹の方にあらわれてきた。
 佐藤 関東の人にとっても,関西の人にとっても,こんどのコンテストはおたがいに大きな刺激になったんじゃないかと思いますよ。関東の人は優雅な美しさの中に力強さを見いだしたろうし,関西の人は力強さの中にバランスのとれた美しさを見いだしたでしょう。だから,今年のコンテストは,そういった意味で,平均して高いレベルの人たちでもってできるんじゃないか,と大いに楽しみですね。
 田鶴浜 9位になった大阪の重村君。背が高くて細身なんだけど,あの人はぼくはわりかし好きだね。ただ,ちょっとバルクが足りないんじゃないかな。
 玉利 まだ協会ができたばかりのところで,初参加の選手がずいぶんいたんですが,やはり青森だとか福島などから出てきた選手は,まだまだ差がありましたね。
 佐藤 そうでしたね。その差というのは,要するに年期の差,普及度合いの差,そういうものがあらわれていますね。
格調高い背景を背に舞台上に立つ大会役員諸氏

格調高い背景を背に舞台上に立つ大会役員諸氏

国際級になるには

 玉利 ボディ・コンテストはけっしてボディビルのすべてじゃない。一部の選手たちによってきそわれるものですけど,選手のレベルの高いところは,ボディビル人口の底辺も広いといえますね。次にどうです。将来が楽しみだといった選手について。
 田鶴浜 いまの大阪の重村君なんか,大いに楽しみでしょうね。それから私の地元ですが,23才の東海林君。ちょっと下半身がまだ不十分だし,全体がまだ細いけどね。大胸筋はすごいな,あの人は。腹筋もすごい。
 玉利 あと。19才で初出場したミスター後楽園になった小島君なんか,そうとうな将来性をもってますね。石山君はこんど出なかったですな。石山君も勝敗を度外視してぜひ出てもらいたいですね。
 田鶴浜 ひじょうにきれいなふんいきがいいですね。ギリシャの彫刻を見ているみたいでね。
 竹松 それから実業団の神原君ね。彼はもっとよくなるんじゃないか。
 玉利 あとは,学生で出てきている井上君。バルクは大きかったけど,まだまだデフィニション不足ですね。
 田鶴浜 八田会長は首の細いのを指摘されたけど,ぼくはどうも脚がね,一般にまだ弱いと思うな。
 玉利 これから日本の選手が国際コンテストにどしどし出て,通用していくには,まだまだコンテスト・ビルダーとしては全体にバルク不足でしょう。
 田鶴浜 そうですね。ことに前面より背面が不足でしょう。
 玉利 腕,脚,バルクでしょうね。
 田鶴浜 脚も,下肢ね。腓腸筋だね。
 玉利 選手の全般的な批評はこのくらいにして,次に審査方法についてはどうです?
 田鶴浜 全体をよく見渡してくらべられるようなひろげ方をしてもらいたいですね。比較検討できるようにね。
 玉利 一人ずつ出てきたんでは,前の選手の印象がうすれてしまう。
 田鶴浜 そうなんです。審査表にしても,5人ずつでどんどん集めていかれる。採点を計算しなけりゃならないんだろうが。もう少し数の多いほうがいいな。5人ずつでなしに,10人ずつくらいのほうがやりよい。
 玉利 10人くらいのほうが,前後の選手を比較しながらつけられる。
 田鶴浜 あとでなおせますからね。
 玉利 ボディビルの採点というのはじつにむずかしいですね。
 田鶴浜 むずかしいね。
 玉利 重量あげや陸上競技のように,はっきり勝敗が出るものじゃないだけに,多分に審査員の好みや主観がからんでまいりますからね。
 田鶴浜 さっき,身長のクラシフィケーションを作れという話が出たが,これはたしかにやらにゃいかんね。

格調を重んじた舞台背景

 玉利 一昨年来,われわれ協会のコンテストは日比谷公会堂で,背景もTBSの協力を得て,荘厳なギリシャ神殿のリリーフを使って厳しゅくな格調高いものを表わしていきたいとやってるんですけど,竹松さん,いろいろと力をつくされた裏方として,何かご意見は?
 竹松 そうですね。これで2回日比谷公会堂でやったわけですが,一昨年より去年のほうが1歩前進している。舞台裏のいろんな準備も,なれたせいもあり,そうまごつくこともなかった。
 玉利 一昨年よりも去年の背景のほうがじみだったときいてますが。
 竹松 そうですね。写真のような形になっていたからね。
 玉利 品格というが,格調というかそういったものをボディ・コンテストにもたせようというわれわれの意図が,じっさい表面にあらわれていたでしょうかな。
 田鶴浜 出てましたね。たしかに出たと思うな。
 竹松 去年の背景がちょっとじみだったというけどね。そのじみさがまた格調を高くしていると思うんです。一昨年のときは,ギリシャ神殿のハデなやつでやりましたけどね。あれとはまた別の面でよさがありましたね。
 玉利 昔のギリシャ人は,高い精神の裏づけのない肉体を軽べつしたといいますけど,われわれボディビル協会のめざすミスターというものは,やはり知性をともなった精神の高さが肉体にあらわれたビルダーというのが理想だと思うんですよ。そういう点から,筋肉だけを得意づらして誇示するんじやないという方向に,コンテストをもっていくのに,あの背景が役立ってくれたら,こんないいことはないと思うんですがね。
 佐藤 観客を分析してみれば,それはよくわかると思いますよ。ボディビル愛好者ばかりでなく,いろんな人たちが見ているわけです。たまたま私は受付の方にずっとおりましたのですが,いざふたをあけてみると,入場者をことわるのに会館の人たちが苦労している。満員御礼の札を出せとか,通行止めをしろとか,そういうことをいっているんですよ。それを押し分けてはいってくる人が,ボディビル愛好者や,選手の友人というような人たちでなくてね。通りがかりの一般の人たちがどんどんつめかけてくるんですよ。
あいさつする八田一朗会長

あいさつする八田一朗会長

観客動員の世界新記録?

 玉利 要するに,観客がいままでのボディビル愛好者だけじゃなしに,一般の人がボディビルの頂点であるコンテストを見ても,健康というものはいいな,たくましい肉体はやはりすばらしいな,という気持をおこすようなコンテストになってきつつあるということですね。
 佐藤 いままでは,一般とは縁のない別世界だったけれど,だんだんに同調して,同じ世界のものとして身近かに感じはじめているんじゃないかと思いましたね。
 玉利 それはひじょうにうれしいことですね。いまのところ,ボディビルの普及のために無料で皆さんにはいっていただいているんですけど,そろそろ有料にすることも考えなければならなくなりそうですね。
 田鶴浜 そろそろ考えていいんじゃないかな。
 玉利 いまのアマチュア・スポーツでも,有料でやっていることですしね。いままでは有料だときてくれない状態だったんですよ。理事長としましても協会の財源をひねり出すのに四苦八苦のありさまですからね。(笑)それができたら大いに助かりますね。
 佐藤 有料でやるにしても,もう少し広い会場がほしいですね。
 玉利 けっきょく,あの上をいくということになると,ふつうの劇場形式ではなしに,日大講堂とか武道館とか,体育館形式のものをうまく利用するほかなくなるでしょう。
 田鶴浜 やはりいまの格調を重んずるとすれば,日比谷がいいでしような。しかし,こんなに観客を動員したのは世界にも例がないでしょう。観客動員の世界新記録だろうな。
 玉利 外人ボディビル関係者もだいぶきていましてね。あの舞台の背景,演出,進行ぶりなど,世界のコンテストにも見られない,とお賞めの言葉をいただきましたよ。
 田鶴浜 ぼくもそれを聞きました。
 玉利 このミスター日本コンテストを発展させて,将来ミスター・ユニバースもときどき日本でやり,日本でのボディ・コンテストが世界の名物となるようにしたいものですな。われわれ日本のボディビル関係者がコンテストに取りくめば,世界のボディビルのレベルが高くなるんだというくらいの誇りをもってやっていきたいですね。
 田鶴浜 いや,もっていいですよ。ほめられたですもの。さすが東京オリンピックをやった日本だと。(笑)これで中身がミスター・ユニバース以上になれば,申し分ないですがね。中身のほうはまだちょっと。
アトラクション——女性のためのボディビル

アトラクション——女性のためのボディビル

もう少しほしい規律とマナー

 玉利 でも,小笹君が世界の2位になりましたし,遠藤君は3位でしょう。ですから,そうとうなところまできているということですね。ところで小泉さん,選手の集合その他は,こち
らの決めたとおりにスムーズにまいりましたか?
 小泉 まあまあ,というところでしょうね。出場予定の人で,3,4名出なかった方がいましたがね。
 玉利 こちらへきていてもですか?
 小泉 そういう人もいましたけど,じっさいにこない人もいたし。そういうばあい,補欠といった形で,もし欠場があったら出られるようにすることもいいんじゃないかな。
 玉利 いまのお話は選手の選抜方法にもつながってくると思うんですよ。この選抜方法については,協会としてもいろいろと苦心しているんですけど,いちおう今回は原則として,各県から1名,東京とか大阪のように選手人口の多いところからはそうとう人数を出したんです。レベルの差なんかもあって,画一ということはなかなかむずかしいですね。たとえば推せん制度を設けて,優秀な選手をどしどし出すとか。そういうことも考えていかなければいかんかもしれませんね。
 小泉 入賞がきまってしまうと,他人事だというわけで,着がえをしてしまう人がだいぶいましたね。
 竹松 そのへんのマナー,スポーツマンとしての心がまえね。それがまだちょっと足りないんじゃないかと思いますね。
 玉利 それから。予選のときは規定ポーズだけ,決勝のときはフリー・ポーズということだったんですけど,予選でフリー・ポーズをやる選手を2,3見うけたんですが,あれはどういうことなんでしょうかね。
 小泉 くどいくらいにいったつもりなんですが。それに,トランクスの色も指定してあったんです。それなのに,何名かちがった色のものをつけていました。これもだいぶ前に通達したはずですがね。
 玉利 やはり選手としては,年に1回の晴れの舞台ですから,すこしでも自分をアッピールさせようという意識が外に出たんでしょう。
 小泉 しかし,大多数の人が決められたものでやっているんですからね。
 玉利 やはりスポーツ競技として,規律というものをもっときびしくしていくべきでしょうね。
 竹松 そういう違犯行為に対しては失格とか減点とか,まあ失格というのは酷だから,減点制度を設けてね。

コンテストの進むべき道

 田鶴浜 ちょっと話が変わるが,ミスター日本コンテストの中にミス健康美も入れたらどうだろうな。
 小泉 ミスターでなく?
 田鶴浜 そう,ミスターの大会の中にミスターとミスを並行して行なう。日本中の人たちの体をよくしていこうとするには,これは必要だと思うんだがな。
 玉利 体力づくり,健康づくりなんだから,ミスターだけじゃなしに,女性もいっしょにやるほうが,ボディビルの本質をよく理解してもらえるんじゃないかということですね。
 田鶴浜 そう。それもショウじゃなくてですよ。
 玉利 ここで,ボディ・コンテストというものをもう一度考えてみたい。というのは,コンテストはボディビルの一部門なんですけど,ひじょうに花やかなもので,マスコミのフットライトも浴びる。そのためにボディビル即コンテストと見られるのでは,われわれとしては困るのです。コンテストはあくまでボディビルの一面であって,あらゆる人たちがその体力に応じて体をつくっていくのがボディビルということでなければならない。それには,コンテストのもっていき方がひじょうにむずかしいと思うんです。まあ,コンテストの功罪とでもいいますかね。この点について皆さんのご意見は?
 田鶴浜 ボディ・コンテストというのは,ビルダーの一つのお祭りですよ
 佐藤 同時に,ボディビルの普及啓蒙のためのデモンストレーションですね。
 田鶴浜 やはり,これは一つの中心をなす行事じゃないかな。それでまたけっこうだと思うんですよ。アマチュア・スポーツだって,たいていは元来がレクリエーションなのに,オリンピックがあるのと同じことですよ。
 竹松 会社あたりでもね。ボディビルというとすぐコンテストや逆三角形の体を連想されるわけですね。ふだんの指導方法とやる人の心がまえが大いに影響すると思いますよ。
 小泉 私は入会してくる人に,始める理由をきくんですけどね。胃腸が弱いからとか,ふだんの運動不足を補うためとか,そういった人たちがだいぶふえてきたと感じますけど。
 田鶴浜 それはいい傾向ですね。
 玉利 そういう人たちのひろがりの上に行なわれるコンテストとしていきたいですね。要するに,強い人だけをかかえて,弱い人を切りすてていくボディビルではなんにもならない。あくまで弱い人たちに強くなってもらう。その上で強い人がますますたくましく,というコンテストにしようというのが,われわれボディビル協会の一貫した考え方なんです。
ではこのへんで。
月刊ボディビルディング1968年6月号

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