バーベル放談⑩ ~~ スポーツと栄養 ~~
月刊ボディビルディング1969年5月号
掲載日:2018.01.12
アサヒ太郎
強く、たくましくなるためには、うまい物をたっぷり食べる必要があることは、みなさん百も承知のはず。
筋力が大きくなる過程を見ると、筋肉を構成する筋繊維のなかのアクチンとか、ミオチンというタンパク質がふえている。
こうしたタンパク源を補給しないと、どんなにトレーニングを積んでも筋のタンパク質は古びるばかりで筋力はふえない。
日本人の栄養は1日平均2100カロリーぐらいといわれているが、このうちタンパク質は1日約70グラム。70キロ程度の体格の人で、体重1キロあたり1グラムということになる。
筋力をふやそうとする場合、理想としては体重1キロ当り2グラム以上必要だからだいぶ足りない。実際タンパクの摂取量を1キロ当り0.8グラムに落すと、はっきり増加率が減るという実験結果が出ている。
スポーツ選手が肉食に重点を置くのも、この理由からである。
国立栄養研究所の鈴木慎次郎栄養生理部長も「肉類、それから豆、野菜類をうんと食べなさい」といっている。
鈴木博士がトレーニング中の選手を対象に実験したところ、肉類などの栄養価の高い食べものを取っている場合と、そうでないときは2、3カ月ではっきり発達の違いが出てきたという。
プロ・レスラーの故力道山が1日1万円の食費をかけて体力の保持に努めたというウワサも、なるほどとうなずけよう。
重量あげの三宅義信選手は、1日に牛乳を6、7本飲み、ニンニク漬けのビフテキ(400グラム大)を欠かさず食べるというが、これも栄養面を考えての献立である。
まったく、カネのかかる話である。
われわれサラリーマンが、毎日400グラムものビフテキを食べたり、やれ野菜だ、やれチーズだ、バターだとやっていたら、月給は食費分だけで吹っ飛んでしまう。
ビフテキ1枚で軽く千円は越えようし、バター、チーズ、野菜ときたら日に2、3千円はかかる。たまったものではない。
ところが、である。
粗食で、たいへんな力持ち、という例がいくらでもあるのである。
禅宗の坊さんを見てみよう。
精進料理やオカユ腹で、何百貫ものつり鐘を動かす。
“荒坊師”で知られた昔の叡山の僧兵も、別にぜいたくなモノは口にしていなかったはずだが、恐るべき怪力の持主が多かったという。
しかし、これも彼等の食生活をこまかに観察すると「なるほど」とうなずけるのである。
坊さんは、ビフテキのかわりにトウフを食べる。豆を口にする。いずれもタンパク源なのである。大豆は「大地から生まれる牛肉」といわれるほど栄養価が高い。
「納豆は栄養たっぷり」と昔からいわれるのも、当然である。
それに野菜だ。精進料理は野菜料理というほど、たくさん野菜類を利用している。
つぎに、オカユもスープなみの栄養を補給する。体力回復に、もっとも手っ取り早いのは、このオカユである。
変な話で恐れ入るが、セックスのあと元気を取り戻すのは、オカユにかぎるといわれている。液体化した栄養物が胃壁を通じてどんどん体内に流れ込み、たちまち体力復元というわけである。
奨励するわけではないが、一度試されてみてはいかが。
ところが、である。またまた「ところが……」で申訳ないが、われわれ人間がどうにも理解できないものに、動物の世界がある。
熊は、春夏秋に栄養を貯めこんで冬じゅう穴倉にもぐりこんで冬眠する。
栄養というのは、木の幹にある樹脂であり、木の芽である。ハラをすかしたヤツは、時折り人間サマが植えたイモ畑を荒らしたりするが、大体は、人里離れた山野の自然食をあさって腹ごしらえをしている。そして、冬がくると、穴のなかで微動だにせず、体温もわずかな温度で保って眠り続けるのだ。仮りに人間が、おなじマネをしたら一週間も保つまい。
何故か?
熊は生理的な機能が違うせいか1分間にほんのわずかな呼吸で生抜くことができるが、人間は生理的にできないのである。
もし、われわれの体温が36、7度をはるかに下回れば、たちまち「死人」と名が変るのである。こればかりは人間も熊にかなわない。
もし、熊なみの冬眠ができれば、いま問題になっている“冷凍手術”はお茶の子サイサイで、医者は大喜こびするはずである。
まだまだある。
サルは、木から木へユビ先き1つで飛び回るが、人間にあんな軽ワザができるだろうか。そのくせ、チンパンジーあたりの握力はものすごい。鉄のサクをひんまげ、人間のウデをにぎりつぶす。骨がびしびし音を立てて砕けるほどの力なのだ。サルとだけは、握手せん方がよろしい。
こんな例もある。草原に住むトラやライオンを、ジープでどこまでも追いかけるとしまいに舌を出してハアハア息を切らし「どうでもせい」といった格好でへたりこむ。ところが、草食動物のシマ馬やシカを追うと、果てしなく逃げ回る。
つかまらないのである。
何故か?
肉食動物は、瞬発力があるが持久力がない。逆に、草食動物は怪力を持たないが、マラソン選手のように永続力があるのである。
マラソン選手が、途中の飲料補給で自分の体に合うジュース類を神経質なほど考えるのも、このためである。
40数キロものコースを走り続けるためには、自分の体内に蓄積した栄養を食いつぶす。
まず糖分そしてタンパク源である。コース途中で飲むジュース類はいわば“生命の水”である。素人がマラソンをやると死ぬ、といわれるのはこの理由である。
話は、ちょっとはずれるが、シカの眼はまことに美しい。朝ツユをふくんだ野草を食べるから、あんなにきれいな目をしているんだろうという人がある。
そのためか、山へ入る猟師はシカの皮をつねに携帯する。山中でケガをしたり、切り傷を作ったりすると、すぐにシカの皮を傷口にはりつけるのだ。すると傷口にウミが集まり、どっと吹出す。そこで、新しいシカの皮を張る。繰返しているうちに、体がすっかり軽くなり、みごとに傷が治って行くのである。
面白い話はまだある。
人間の世界では、捧高とびで5メートルを越えるとたいへんな記録になる。が、動物の世界では、こんな高さは問題にならない。
カンガルーは、ひととび数メートルである。
4メートル以上を軽くマークしたという記録もある。捧なしで、である。
走る方のチャンピオンでは、ヒョウや、ピューマがいる。
ガケの上に立って獲物の走るスピードを目測し、「行ける」となったら、一気に追いかけて食い殺すのである。もっとも、数百メートル以上追いかけてダメとなると、さっとあきらめて戻ってきてしまう。自分の息が続かないのを知っているからである。
オオカミも早い。もっとも、オオカミは徒党を組み、獲物を追いながら逃げ口をせばめ、ガケっぶちなどに追い詰めて集団でおそいかかるズルイやり口だ。“一匹オオカミ”などといわれるが、本当はそんな存在はないのである。これは町のチンピラの手口に似ていて余り感心できない。
ともあれ、動物の世界にはわれわれ人間が想像もつかぬ不可思議なモノがある。
栄養の話から、とんだ話題に入りこんだが、要するに肉食ばかりに頼っても人間は強くならない。逆に、野菜ばかりを食べていても、力持ちにはなれないのである。
バランスの取れた食べ物を口にしてこそ、すばらしい肉体美が生まれる。
そこで、どんな食べ物を取ったらいいのかご参考までに例を挙げるとーー
まず、人間の体は弱アルカリ性が理想的な血液だから、これを保つことができるようなモノを食べることである。
ビフテキを食べたら、欠かさず野菜類をうんと取る。肉は酸性、野菜はアルカリ性である。外人を見てごらんなさい。
彼等は肉もうんと口にするが、野菜の方もたいへんな量を食べる。生理的に体が要求するのである。
酒を飲んだら、付出しもたくさん口に入れること。トウフ、豆、ワラビ、ゼンマイ、なんでもよろしい。酒は酸性だからである。
相撲取りは大酒を飲む。1升、2升は軽い。しかし、翌朝ケイコですっかりアルコール気を流し、チャンコナベですっかり栄養のバランスをはかっている。酒ばかり飲んで、ケイコをさぼるとてきめんに体がおかしくなる。シコを踏んでも足があがらなくなる。
登り坂の、げんきのいい関取は体操選手そこのけに両足を頭上高くあげるが、下り坂のベテラン力士は見ていても、はがゆいくらい動きが小さい。もう体がいうことを利かないのだ。酒は飲んでもケイコを忘れるな、野菜類を忘れるなである。
チョコレート、ケーキ、キャンディ……といった糖分も、酸性である。
余り甘いモノを食べると、長生きしないといわれるのは道理なのである。
ヤレお菓子だ、ヤレおしるこだと、親の偏愛で育った子は神経質で、根気がなく短気。おまけにひよわである。
逆に、オヤツ代りに干しイモをしゃぶり、ツケモノを食べる農山村の子供は頑丈である。粗食が健康を保つ例である。
あるスキヤキ屋のオジさんがいった。
「近ごろの若い人たちときたら、肉ばかり食べて、ちっとも野菜類を食べようとしない。スキヤキはちゃんと栄養のバランスを考えて肉といっしょにトウフやネギ、コンニャク類を入れてあるのだ。あんな食べ方をしたら病気になってしまう」。
その通りである。
もっとも、最近の食料品は有害色素や害毒になる薬品を使っているので、うっかり口にすることができない。ラーメンをすすっても、ウドンを口にしても、体に悪い薬が使われている。
そこで、自然食品をぜひ……とおすすめしたい。ショウユ、ミソ……すべて自然に作られたモノを食べることである。
砂糖のかわりに、できればハチ蜜を使う方がよろしい。
アメリカで知られるバーモント飲料は、ハチ蜜にりんご酢をまぜるのである。これを飲むと、血液が浄化され、疲労が薄れてぐっすり眠ることができる。
ウソと思う方は、近くのスーパーマーケットでりんご酢を買い求め、ハチ蜜を入れて水か湯で薄め飲まれるといい。酢は酢でもりんご酢でござるよ。普通の酢は薬品でできているからダメ。
自然にできるモノは何でも結構。
果物、牛乳大いによろしい。
外人が大きいのは、ミルクが理由といわれる。
外人の子供を見ていると、たしかに水代りに牛乳をがぶがぶ飲んでいる。
日系二世、三世に百数十キロもの大男が多いのも、4、5歳ごろまで外人なみにミルクを飲んでいるからといわれている。
お子たちのある人たちは、せいぜい牛乳をたくさん飲ませることである。成人したら、おそらく180センチ近い大男になるんじゃなかろうか。もっとも、これもおカネがかかる話だ。せいぜい粗食をモットーに、時折りうまいモノを食べる楽しみを持つのが、われわれ庶民の暮しといえようか。
しかし、ボディビルダーのみなさんは、お茶漬けさらさらではダメである。安くてうまい栄養物をできるだけ食べることである。
筋力が大きくなる過程を見ると、筋肉を構成する筋繊維のなかのアクチンとか、ミオチンというタンパク質がふえている。
こうしたタンパク源を補給しないと、どんなにトレーニングを積んでも筋のタンパク質は古びるばかりで筋力はふえない。
日本人の栄養は1日平均2100カロリーぐらいといわれているが、このうちタンパク質は1日約70グラム。70キロ程度の体格の人で、体重1キロあたり1グラムということになる。
筋力をふやそうとする場合、理想としては体重1キロ当り2グラム以上必要だからだいぶ足りない。実際タンパクの摂取量を1キロ当り0.8グラムに落すと、はっきり増加率が減るという実験結果が出ている。
スポーツ選手が肉食に重点を置くのも、この理由からである。
国立栄養研究所の鈴木慎次郎栄養生理部長も「肉類、それから豆、野菜類をうんと食べなさい」といっている。
鈴木博士がトレーニング中の選手を対象に実験したところ、肉類などの栄養価の高い食べものを取っている場合と、そうでないときは2、3カ月ではっきり発達の違いが出てきたという。
プロ・レスラーの故力道山が1日1万円の食費をかけて体力の保持に努めたというウワサも、なるほどとうなずけよう。
重量あげの三宅義信選手は、1日に牛乳を6、7本飲み、ニンニク漬けのビフテキ(400グラム大)を欠かさず食べるというが、これも栄養面を考えての献立である。
まったく、カネのかかる話である。
われわれサラリーマンが、毎日400グラムものビフテキを食べたり、やれ野菜だ、やれチーズだ、バターだとやっていたら、月給は食費分だけで吹っ飛んでしまう。
ビフテキ1枚で軽く千円は越えようし、バター、チーズ、野菜ときたら日に2、3千円はかかる。たまったものではない。
ところが、である。
粗食で、たいへんな力持ち、という例がいくらでもあるのである。
禅宗の坊さんを見てみよう。
精進料理やオカユ腹で、何百貫ものつり鐘を動かす。
“荒坊師”で知られた昔の叡山の僧兵も、別にぜいたくなモノは口にしていなかったはずだが、恐るべき怪力の持主が多かったという。
しかし、これも彼等の食生活をこまかに観察すると「なるほど」とうなずけるのである。
坊さんは、ビフテキのかわりにトウフを食べる。豆を口にする。いずれもタンパク源なのである。大豆は「大地から生まれる牛肉」といわれるほど栄養価が高い。
「納豆は栄養たっぷり」と昔からいわれるのも、当然である。
それに野菜だ。精進料理は野菜料理というほど、たくさん野菜類を利用している。
つぎに、オカユもスープなみの栄養を補給する。体力回復に、もっとも手っ取り早いのは、このオカユである。
変な話で恐れ入るが、セックスのあと元気を取り戻すのは、オカユにかぎるといわれている。液体化した栄養物が胃壁を通じてどんどん体内に流れ込み、たちまち体力復元というわけである。
奨励するわけではないが、一度試されてみてはいかが。
ところが、である。またまた「ところが……」で申訳ないが、われわれ人間がどうにも理解できないものに、動物の世界がある。
熊は、春夏秋に栄養を貯めこんで冬じゅう穴倉にもぐりこんで冬眠する。
栄養というのは、木の幹にある樹脂であり、木の芽である。ハラをすかしたヤツは、時折り人間サマが植えたイモ畑を荒らしたりするが、大体は、人里離れた山野の自然食をあさって腹ごしらえをしている。そして、冬がくると、穴のなかで微動だにせず、体温もわずかな温度で保って眠り続けるのだ。仮りに人間が、おなじマネをしたら一週間も保つまい。
何故か?
熊は生理的な機能が違うせいか1分間にほんのわずかな呼吸で生抜くことができるが、人間は生理的にできないのである。
もし、われわれの体温が36、7度をはるかに下回れば、たちまち「死人」と名が変るのである。こればかりは人間も熊にかなわない。
もし、熊なみの冬眠ができれば、いま問題になっている“冷凍手術”はお茶の子サイサイで、医者は大喜こびするはずである。
まだまだある。
サルは、木から木へユビ先き1つで飛び回るが、人間にあんな軽ワザができるだろうか。そのくせ、チンパンジーあたりの握力はものすごい。鉄のサクをひんまげ、人間のウデをにぎりつぶす。骨がびしびし音を立てて砕けるほどの力なのだ。サルとだけは、握手せん方がよろしい。
こんな例もある。草原に住むトラやライオンを、ジープでどこまでも追いかけるとしまいに舌を出してハアハア息を切らし「どうでもせい」といった格好でへたりこむ。ところが、草食動物のシマ馬やシカを追うと、果てしなく逃げ回る。
つかまらないのである。
何故か?
肉食動物は、瞬発力があるが持久力がない。逆に、草食動物は怪力を持たないが、マラソン選手のように永続力があるのである。
マラソン選手が、途中の飲料補給で自分の体に合うジュース類を神経質なほど考えるのも、このためである。
40数キロものコースを走り続けるためには、自分の体内に蓄積した栄養を食いつぶす。
まず糖分そしてタンパク源である。コース途中で飲むジュース類はいわば“生命の水”である。素人がマラソンをやると死ぬ、といわれるのはこの理由である。
話は、ちょっとはずれるが、シカの眼はまことに美しい。朝ツユをふくんだ野草を食べるから、あんなにきれいな目をしているんだろうという人がある。
そのためか、山へ入る猟師はシカの皮をつねに携帯する。山中でケガをしたり、切り傷を作ったりすると、すぐにシカの皮を傷口にはりつけるのだ。すると傷口にウミが集まり、どっと吹出す。そこで、新しいシカの皮を張る。繰返しているうちに、体がすっかり軽くなり、みごとに傷が治って行くのである。
面白い話はまだある。
人間の世界では、捧高とびで5メートルを越えるとたいへんな記録になる。が、動物の世界では、こんな高さは問題にならない。
カンガルーは、ひととび数メートルである。
4メートル以上を軽くマークしたという記録もある。捧なしで、である。
走る方のチャンピオンでは、ヒョウや、ピューマがいる。
ガケの上に立って獲物の走るスピードを目測し、「行ける」となったら、一気に追いかけて食い殺すのである。もっとも、数百メートル以上追いかけてダメとなると、さっとあきらめて戻ってきてしまう。自分の息が続かないのを知っているからである。
オオカミも早い。もっとも、オオカミは徒党を組み、獲物を追いながら逃げ口をせばめ、ガケっぶちなどに追い詰めて集団でおそいかかるズルイやり口だ。“一匹オオカミ”などといわれるが、本当はそんな存在はないのである。これは町のチンピラの手口に似ていて余り感心できない。
ともあれ、動物の世界にはわれわれ人間が想像もつかぬ不可思議なモノがある。
栄養の話から、とんだ話題に入りこんだが、要するに肉食ばかりに頼っても人間は強くならない。逆に、野菜ばかりを食べていても、力持ちにはなれないのである。
バランスの取れた食べ物を口にしてこそ、すばらしい肉体美が生まれる。
そこで、どんな食べ物を取ったらいいのかご参考までに例を挙げるとーー
まず、人間の体は弱アルカリ性が理想的な血液だから、これを保つことができるようなモノを食べることである。
ビフテキを食べたら、欠かさず野菜類をうんと取る。肉は酸性、野菜はアルカリ性である。外人を見てごらんなさい。
彼等は肉もうんと口にするが、野菜の方もたいへんな量を食べる。生理的に体が要求するのである。
酒を飲んだら、付出しもたくさん口に入れること。トウフ、豆、ワラビ、ゼンマイ、なんでもよろしい。酒は酸性だからである。
相撲取りは大酒を飲む。1升、2升は軽い。しかし、翌朝ケイコですっかりアルコール気を流し、チャンコナベですっかり栄養のバランスをはかっている。酒ばかり飲んで、ケイコをさぼるとてきめんに体がおかしくなる。シコを踏んでも足があがらなくなる。
登り坂の、げんきのいい関取は体操選手そこのけに両足を頭上高くあげるが、下り坂のベテラン力士は見ていても、はがゆいくらい動きが小さい。もう体がいうことを利かないのだ。酒は飲んでもケイコを忘れるな、野菜類を忘れるなである。
チョコレート、ケーキ、キャンディ……といった糖分も、酸性である。
余り甘いモノを食べると、長生きしないといわれるのは道理なのである。
ヤレお菓子だ、ヤレおしるこだと、親の偏愛で育った子は神経質で、根気がなく短気。おまけにひよわである。
逆に、オヤツ代りに干しイモをしゃぶり、ツケモノを食べる農山村の子供は頑丈である。粗食が健康を保つ例である。
あるスキヤキ屋のオジさんがいった。
「近ごろの若い人たちときたら、肉ばかり食べて、ちっとも野菜類を食べようとしない。スキヤキはちゃんと栄養のバランスを考えて肉といっしょにトウフやネギ、コンニャク類を入れてあるのだ。あんな食べ方をしたら病気になってしまう」。
その通りである。
もっとも、最近の食料品は有害色素や害毒になる薬品を使っているので、うっかり口にすることができない。ラーメンをすすっても、ウドンを口にしても、体に悪い薬が使われている。
そこで、自然食品をぜひ……とおすすめしたい。ショウユ、ミソ……すべて自然に作られたモノを食べることである。
砂糖のかわりに、できればハチ蜜を使う方がよろしい。
アメリカで知られるバーモント飲料は、ハチ蜜にりんご酢をまぜるのである。これを飲むと、血液が浄化され、疲労が薄れてぐっすり眠ることができる。
ウソと思う方は、近くのスーパーマーケットでりんご酢を買い求め、ハチ蜜を入れて水か湯で薄め飲まれるといい。酢は酢でもりんご酢でござるよ。普通の酢は薬品でできているからダメ。
自然にできるモノは何でも結構。
果物、牛乳大いによろしい。
外人が大きいのは、ミルクが理由といわれる。
外人の子供を見ていると、たしかに水代りに牛乳をがぶがぶ飲んでいる。
日系二世、三世に百数十キロもの大男が多いのも、4、5歳ごろまで外人なみにミルクを飲んでいるからといわれている。
お子たちのある人たちは、せいぜい牛乳をたくさん飲ませることである。成人したら、おそらく180センチ近い大男になるんじゃなかろうか。もっとも、これもおカネがかかる話だ。せいぜい粗食をモットーに、時折りうまいモノを食べる楽しみを持つのが、われわれ庶民の暮しといえようか。
しかし、ボディビルダーのみなさんは、お茶漬けさらさらではダメである。安くてうまい栄養物をできるだけ食べることである。
月刊ボディビルディング1969年5月号
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