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世界のビルダー●トレーニングの比較③
肩のトレーニング

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月刊ボディビルディング1971年6月号
掲載日:2018.03.16
高山 勝一郎
ワイダー辞典によれば、肩とは、およそ1ヤードの距離に大きな鉄のカボチャを二つのせた如きもの・・・・・・なのだそうである。
 デイブ・ドレイバーの完全なる三角筋の定義は、上部へ充分な盛り上がりがあり、横に厚く、後に美しく、前部に逞しい筋肉がついていること・・・・・・とある。
 ラリー・スコットは語っている。
 普通の体格さえあれば、これに肩の筋肉とカーフを附加するだけで、ヘラクレス・タイプへ変えることが容易である・・・・・・と。
 スティーブ・リーブスを有名にしたのも、生まれつきの広肩プラス三角筋でいやが上にも逞しくなった彼の肩であった。
 フランコ・コロンボがボクサーからビルダーに転向したのも、彼がボクシング・ジムですばらしい肩のボクサーをみたのがきっかけである。
ボイヤー・コーも、ビルダーの体で最初に目をうばうところは、左右シンメトリー(対称)のよくとれた広い肩である・・・・・・と述べている。
 日本のビルダーが、比較的肩を等閑視しがちなのにくらべて、肩こそビルダーの生命と考えている彼等の肩のトレーニングに、スポットをあててみることにしよう。

-デイブ・ドレイパーのトレーニング法-

 ドレイパーは肩のトレーニングにまでカウントレス・システムを採用している。
 これは、主動筋にやけるような痛み(Muscular Ache)を感じるまで、あるいは、これ以上とても続けられないという時点まで、運動を続ける方法で、運動しながらカウントを頭で数えることを避けるのである。
 彼はこの方法で次のトレーニングを3セットから6セット、その日の体調によって増減させながら行なう。
①アップ・ライト・ロー
 バーベルの中心を約6インチはなして両手で軽くにぎり、顎までゆっくりひき上げる。三角筋上部と僧帽筋に著しい効果がある。
②シーテッド・バーベル・プレス
 彼のプレスは普通のプレスではない。上げた時と下ろした時にハーフ・レンジ(半回)のバーン・ムーブメントを附加する方法で、三角筋の著しいパンプ・アップをもたらす。
 ①と②の運動はスーパー・セットに組むとさらに効果的である。
③ライイング・サイド・アーム・ラタラル
 彼の最も好んだ種目である。ベンチに横に寝て、片手でダンベルをオーバー・グリップに握り、体を直角になるまで腕を伸ばしたまま上げる。力をぬかずおろす。体のむきを変えて、左右くり返すのである。
ドレイパーの最も好んだ種目は、このライイング・サイド・アーム・ラタラルである

ドレイパーの最も好んだ種目は、このライイング・サイド・アーム・ラタラルである

④スタンディング・ワンアーム・ラタラル・クランプ
 立ったまま一方の手でバーか、ポールをつかみ、もう一方の手にダンベルを持って、やや体を反対側に倒し、サイド・ラタラル・レイズを行なう、左右むきを変えて交互に行なうが、三角筋の集中的パンプ・アップ法として推薦できる。

-ボイヤー・コーのトレーニング法-

 コーは、三角筋に最もよく効くのは挙上運動(Pressing Movement)だと信じ、プレスを多く採用しているようである。
①ハンド・スタンド・プレス・アップ
 ベンチを平行に壁につけておき、この上に逆立ちする。そして、腕をまげ肩がベンチにつくまで体をおろし、また腕を伸ばして戻す。
②プレス・ビハインド・ネック
 バーベルのカラーからカラーまでのワイド・グリップで、しかもカーリング・バーを用いて三角筋への強い刺激をねらう。
③スタンディング・プレス・ウイズ・ダンベル
 できる限りの重いウェイトのダンベルで、肩の線に直角になるよう交互にプレスする。
④シーテッド・ラタラル・レイズ
 スタンディングよりチーティングを殺すことができるのでベンチに座って行なう。肘は軽く曲げ、肩より高めの位置へダンベルをサイド・ラタラルで上げる。
⑤インクライン・ラタラル・レイズ
 インクライン・ベンチで、手の甲を内側にして、ダンベルを握って行なうと、三角筋の前部や上部によく効く。
⑥リアー・インクライン・ラタラル・レイズ
 斜角45度のインクライン・ベンチにうつぶせにもたれ、ダンベルを持った両手を伸ばしたまま半円を画いて肩より上へ上げ、またゆっくり下ろす。
⑦ダンベル・サークル
 コーの十八番。まっすぐ立ち、両手のダンベルで前後へ円を画くように振る。これは、三角筋の頭をもり上げるのに効果がある。
 彼は上記7種目から通常3種目を選び、一ヵ月に一度はその種目と組合せ方を変えて練習を行なっている。
リアー・インクライン・ラタラル・レイズで肩を鍛えるボイヤー・コー

リアー・インクライン・ラタラル・レイズで肩を鍛えるボイヤー・コー

-ハロルド・プールのトレーニング法-

 肩のトレーニングをプレスとラタラルのみと考えるのは誤りだ、と指摘するのがプールである。
 例えば水泳で、とくにクロールと平泳が肩に非常に効果的だという。
 また、通常のトレーニングでも、必ず腕と同程度は肩の運動に力を入れるべきだと説いている。
 彼の通常のトレーニング種目は・・・・・・
 
①スタンディング・ダンベル・プレス
 バーベルよりヘビー・ウェイトのダンベルを用いる方が効果的で、ストリクト・スタイルで、上げる方向が斜めにならないよう注意すること。
 
②シーテッド・プレス
 ダンベルは交互より同時に上げ下げする方がよい。①と合わせてスーパー・セットにし、筋肉をバーンさせる。
 各6回ずつ5セットを行なう。
 
③コンビネーション・プレス
 バーベルを用いたフロント・バック・プレスである。前後の速度は一定したペースであること。6回の6セットを行なう。
 
④シーテッド・ラタラルズ
 背をまっすぐに保ち、肘を少し曲げて行なう。12回の5セット。
プールのすばらしい肩は、こうして生まれた

プールのすばらしい肩は、こうして生まれた

-多セットのサイプス、ウォーラー、シュワルツェネガー-

 チャック・サイプスは、次の各種目を8セットから12セットと非常に多いセット数で行なっている。
①プレス・ビハインド・ネック
②フロント・プレス
③フロント・ダンベル・レイズ
④アップライト・ローイング

 ①と②、③と④はそれぞれスーパー・セットに組む。重量はできるだけ大きくし、低回数である。
 ケン・ウォーラーは、ダンベル種目を多く選び、全体で32セットを肩のトレーニングにあてている。
 また、アーノルド・シュワルツェネガーも、通常次の4種目を8セットから10セット行なっている。
 
①プレス・ビハインド・ネック
②スタンディング・サイド・ラタラル
③ベント・オーバー・サイド・ラタラル
④アップライト・ローイング
 サイプスと同じく、大重量、低回数(6~8回)である。
 バルク・アップには、重量、低回数多セットの原則が如何に効果を生むかということを、彼等が身をもって示しているといえよう。

-ラリー・スコットのトレーニング法-

 ラリー・スコットが肩のトレーニングに特に集中し始めたのは、ビンス・ジロンダから、君の生まれつき狭い肩を広く見せるためには、三角筋のトレーニングを強化すべきだ・・・・・・と教えられてからである。
 彼は、裸になって鏡の前に立ち、三角筋が確実に働いていることをたしかめながら、運動を行なったという。
 しかも、彼はフォースド・レピティション・プリンシプルを採用し、1セット9回を行なったのち、さらに何回かを続いて附加することをみずから強いたのである。セット数は、各種目6セットである。
 
①プレス・ビハインド・ネック
 可能な限りの重量を加えたバーベルで、ゆっくり正確に。
②スタンディング・ラタラルズ
 体をやや前に倒し、腕を軽く前へ曲げて行なうと、肩へ集中できる。
③オールターニット・ダンベル・プレス
 最高重量を用い垂直に拳上、左右交互。
④ベント・オーバー・ラタラルズ
 背を床と並行に倒し反動を使わずに、ゆっくりダンベルを上下する。
 彼の分析によれば、前部三角筋に効くのがインクライン・ベンチ・プレス、バー・ディップス、インクライン・ダンベル・フライズ、三角筋の横側に効くのが、スタンディング・サイド・ラタラルズ、ワイド・グリップ・プレス。後部三角筋に効くのがプレス・ビハインド・ネック、ベント・オーバー・ラタラルズだそうである。
 読者もそれぞれの必要に応じて、上記の種目を試してみられるとよい。
重い重量で、ゆっくり正確にプレス・ビハインド・ネックを行なうスコット

重い重量で、ゆっくり正確にプレス・ビハインド・ネックを行なうスコット

コロンボは重いダンベルで、シーテッド・オールターニット・ダンベル・プレスを行う

コロンボは重いダンベルで、シーテッド・オールターニット・ダンベル・プレスを行う

-フランコ・コロンボのトレーニング法-

 肩だけで6種目、各4セットから6セットを続け、しかも、セット間に休みなしという猛烈トレーニングを行なっているのがイタリーの生んだビルダー、フランコ・コロンボである。
①シーテッド・ビハインド・ネック・プレス
 グリップを肩幅よりやや広くとり、バーベルを下ろした時、肩に触れるのみにして休ませないこと。8回4セットののち、ウェイトを増やして6回2セットを附加する。
②ワンアーム・プーリー・サイド・ラタラルズ
 プーリー・マシーンに直角に立ち、グリップを甲を上にして握り、下部から手を伸ばしたまま引き上げる。
 8回の4セット。
③シーテッド・オールターニット・ダンベル・プレス
 重いダンベルを用い、パームを前にむけてプレス。8回4セット。
④ベント・オーバー・フライ
⑤スタンディング・ラタラルズ
 ④と⑤はスーパーに組む。同じ重量のダンベルを用い、ゆっくりサイド・ラタラルを行なう。それぞれ8回の6セットを重ねる。
⑥スタンディング・バーベル・フロント・レイズ
 軽いバーベルをオーバー・グリップで握り、腕を伸ばしたまま胸の前まで持ち上げる。前部三角筋に効果的である。
 1セット8回で5セットを行なう。
 
 さて、最後に日本のビルダーと比較してみよう。各年のミスター日本コンテストの3位以内に入賞した選手で、肩のトレーニングは大体3種目から5種目を採用、セット数も平均すると20から24セットぐらいは行なっているようである。
 欧米の選手に比べてやや少ない練習量ではあっても、不充分というほどではない。
 これらの優秀な日本ビルダーに、カボチャ型の肩が少ないのは、つまるところ、食生活の違いに起因するのであろうと思われる。
記事画像6
 すしづめの満員電車。となりの男からプーンとあのにおい。「こいつ昨夜はスタミナをつけたな・・・・・・。こんちくしょう、おかげでえらいめいわくだ」・・・・・・こんな経験は誰でもあろう。
 実際イザ・・・・・・というときに、ニンニクを愛用する人は多い。
 あるスポーツ選手。大切な試合の前にニンニクのバター焼きを必ずとる。そうすると、口といわず、手といわず、身体のアチコチからニンニクの臭いが発散する。そのために対戦相手はタジタジ。「これも作戦のひとつだよ」とはおそれいりました。

<ニンニクの歴史>

 古代エジプト。あの壮大なピラミッドを築いた人夫に、体力保持のため、たっぷり与えたという記録がある。もちろん、中国や朝鮮の王侯・貴族が愛用したことはいうまでもない。日本は紫式部の源氏物語にこんな話が出ている。「魅力ある女性はいろいろあるが、体のためにいいからといって、ニンニクを食べるような女性はいかさない。そんな女に接するくらいなら、鬼を抱いたほうがまだましだ・・・・・・」
 スタミナはつけたし、においはこわし・・・・・・どうも両立しないようだ。

<ニンニクの効果>

炭水化物が20%。その中にアリシンという刺激ある物質が含まれる。これがビタミンBと結合してアリチアミンとなる。アリチアミンは体内によく吸収され、体内でおこる化学反応を促進する作用を持つ。また強い殺菌作用を持っていて、アノイリナーゼというビタミンBを破壊する酵素をやっつける正義の味方でもある。タケダのアリナミンもこういうところから命名されたのだろう。アリチアミンは本来、臭いのない物質だという。分解したときに硫化アリルという物質に変化する。これが臭いの正体だ。

<うまい料理法>

 なんといってもぎょうざ。肉が入り油で焼くので、質も量もすぐれている(8個食べると約500カロリー。たんぱく質15グラム)おまけにうまいときている。
 肉屋でぎょうざの皮を買う。25枚で30円。この中にブタ肉・キャベツ・ニンニクを細かくきざんでつめこむ。ネギやニラ、しいたけを入れることもある。あらかじめごま油やしょうゆで味つけをするといっそううまい。こうしてできた生ぎょうざを、そのまま蒸したり、ラードで焼いたり、めんつゆに入れたりして賞味することはご存知のとおり。おもったより簡単にできあがる。君もひとつやってみたら?

<臭いを消す方法>

 最後に臭いをなるべく早く退散させる方法を二、三紹介しよう。
(1)ビール・日本酒などアルコールとともに食べる。かなり早くきえる。
(2)牛乳を飲む。かなりやわらぐ。
(3)うめぼしを食べる。消化が早くすすんで一晩のうちに”さいなーら”
(4)臭いの強いものを同時に食べる
たとえばしょうが・セロリ・レモン・バナナなど。
 ある人いわく。「ニンニクが安く手に入るのは臭いがあるからだ。臭いが完全になくてこんなに効果があるとすれば、とてもわれわれ大衆の口にははいってくるまい・・・・・・。」
 読者諸兄!臭いを消す極秘のいい方法があれば編集部まで知らせてください。待ってるよ。
-野沢-
月刊ボディビルディング1971年6月号

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