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● て ん ぷ ら ●

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月刊ボディビルディング1971年8月号
掲載日:2018.02.03
天ぷらはうまい。日本料理の傑作だとほめられている。夏バテを乗りきるのにも最高。今回はこの天ぷらについて徹底調査してみよう。

<天ぷらの歴史>

 焼く・煮る・蒸す・・・・・いろいろの料理法のなかで、揚げる方法はもっとも後に発明された方法で、ローマ時代、あの豪華をきわめた宮廷料理に出されたのがはじめてという。食べては吐いて胃の中のものを出し、次の料理をまた食べる---こんなぜいたくで無茶な毎日をおくったローマ人にふさわしい発明である。

 このすばらしい料理法が日本に入ってきたのは江戸時代。直接ヨーロッパとの貿易がはじまってからだ。当時の外国人たちが肉や魚をフライにしているのを見た船員たちのあいだでまず流行した。「てんぷら」という名前をつけ大衆的なメニューにしたのは、食いだおれの大阪商人、利助どん。どんな材料を使用してもおいしさが倍加し、その人気はたちまち全国にひろがった。

 あの徳川家康の死因は天ぶらの食べすぎだといわれている。

<スタミナの秘密>

 まず、油をタップリと使っていること。油はもともとたいそううまいものだ。そのうえカロリーが大きい。

 第二はころもの役割だ。天ぶらの中味はエビ・アナゴ・メゴチ・ハゼ・イカ・小アジ・キンボウ・・・・・たいてい動物性のタンパク質だ。これに対して外側のころもは小麦粉やタマゴ。だから栄養のバランスがすばらしい。

 第三は瞬間的に処理するので、熱によって破壊される栄養分はごくわずかである。野菜を揚げても、いきいきした緑色がのこっており、当然ビタミンも多い。
スタミナ メニュー

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<天ぷらをつくるコツ>

 小麦粉とタマゴを水にとかし少量の砂糖を加えればころもの水溶液ができあがる。かたさはペンキぐらいとみてよい。この中に、揚げようとする魚や野菜を浸す。油をフライパンで煮たぎらせ、その中に落としていく。パチパチという音をたてて表面に浮いてきたらすくいあげ、紙の上に並べて油をよくきる。おいしい天ぷらをつくるには、新しい油を使うこと。ころもをなるべく薄くすること。180°Cぐらいの高温でサッとあげること。

 一流の専門店でみていると、油の中にパラパラと塩を落として温度をみているが、しろうとにはむずかしい。温度計1本を新調し160~180度くらいであることを確認したほうが安全。

 古い油を使うと油切れが悪くべトべトした感じになってしまう。そればかりではない。ビタミンがこわれやすく、胃の粘膜をおかしたり、肝臓障害をおこしたりする。ご用心ご用心。

<うまい食べ方>

 天ぷらは水分を吸収しやすいので揚げたてを大根おろしと天つゆにつけすぐに食べる。大根おろしは天ぷらのくどさを中和し、さっぱりさせるためだ。天つゆは煮出汁る,しょうゆ1,みりん1の割合で混ぜてつくる。天どんをつくるには、この天つゆで天ぷらを煮て、ご飯の上にのせればできあがり。天ぷらうどん、天ぷらそばも簡単にできあがーり、おまちどう! 天どん一杯で580カロリー。たんぱく質13g。天ぷらそば一杯381カロリー。たんぱく質12.8g。

 あるバレーボール選手。天ぷらが好物で激しい練習をしては天ぷらを食べていた。年令も若かったせいもあるがみるみる身長がのび1年間で7センチも背が高くなったという。いかにすぐれたスタミナ料理であるかわかるだろう。
(野沢秀雄)
月刊ボディビルディング1971年8月号

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