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ビルダーの長命度

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月刊ボディビルディング1971年9月号
掲載日:2018.03.02
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 およそ3年前、アメリカのある有名なボディビル雑誌の表紙を、ミスター・アメリカになった某氏(特に名を秘す)のすばらしい筋肉美の写真が飾ったことがある。
 人々は、これこそ健康と体カの理想像としてもてはやしたものである。
 ところがつい先頃、このミスター・アメリカは心臓病でポックリ逝ってしまった。これを知ったときのビルダーたちのショックは実に大きかった。しかも、彼はこのときわずか37歳だったのである。この健康美のシンボルが、そう簡単に死んでしまうなどと誰が考え得たのであろうか。
 やがて、彼の早死には、過度の飲酒とタバコが原因だったという噂がたった。そしてこのととが、かの有名なビルダー、レイ・バン・クリーフを思い出させるよすがとなった。
 彼は54歳で死んでいる。しかし、彼は酒もタバコも全然たしなんでいないのである。原因はやはり心臓病であった。
 ひょっとして、ボディビルはビルダーを若くして殺す電気椅子ではないだろうか……。多くのバーベル愛好者が顔色を失ったのも無理はない。
 そんな折も折、ある雑誌の手によって面白いデータが集められた。
 保険会社から借り受けた資料によって、日頃バーベルに親しんでいるボディビルダー、ウェイト・リフターを無作意に抽出して、その死亡年齢を調べたものである。
 それによると、65歳で死亡した者19名(27%)、56歳から79歳まで、いわゆる平均寿命内で死んだ者20名(28%)、80歳以上、すなわち長寿といわれる人たちがなんと31名(45%)もいたということがわかったのである。しかも、この中には、88歳を超えた者10名、100歳を超えた者2名を含んでいた。
 ちなみに一般人では、65歳までが55%、75歳までが35%、80歳以上になるとわずか10%であるから、いかにビルダーたちが長寿であるかがおわかりであろう。
 ロシアの虎と呼ばれたリフター、ハッケンシュミットが90歳、20世紀前半の著名ビルダー、アンソニー・バーカーが103歳、アメリカのロイ・ホワイトが108歳まで生きている。
 彼等のいずれにも共通していることは、食生活に気をつけ、とくに脂肪分を過取せずコレステロールをおさえていること、ランニングやジョギングを適度に行ない心臓を鍛えていること、心身の休養をたくみにとっていることであろう。
 逆に早や死にしたビルダーやリフターに共通している点は、熱心に続けていたトレーニングを急にやめてしまっていること、食生活がアンバランスでとくに脂肪と糖分のとり過ぎがめだつこと、ロードワーク等の心肺のトレーニングを怠っていたこと等である。
 前述のレイ・バン・クリーフの友人は語っている。「そういえば、彼は食事には結構気をつけていたが、どういうわけかチーズには眼がなかった。脂っこいチーズをいつも食べていたからな」
 上記のデータだけで、すべてを語っているとはいえないにしても、適正なトレーニングをつづけ、食生活に気をつけることが、長寿の秘訣であることはまちがいない。
一一高山一一
月刊ボディビルディング1971年9月号

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