デイブ・ドレイパーの日誌
月刊ボディビルディング1971年11月号
掲載日:2018.06.27
ハワイの空は青かった。アーノルドと私は、ワイキキの白砂に身をよこたえて、太陽の光を全身にあびていた。
眼をとじると、打寄せる波の音と、人びとのうち興じる声と、鳥の鳴き声がひとつの音楽となって私の耳をおそってくる。
そこには、まったく別の世界が存在する。私は、この美しい音の世界を楽しみ続けるためなら、盲目になっても悔はない‥‥とさえフト思ったほどである。
突然、シュワルツェネガーの大きな声が耳もとできこえた。「スゲー!!あのカワイコちゃんを見ろよ」
私は眼をとじたままいった。「アーノルド、君は忘れたのかい? 僕は、この世で一番美しいペニーと結婚しているんだ。ペニー以外の女の子など、いくらカワイコちやんでも眼中にないんだよ」
しかし、いつもならすぐハネ返ってくるアーノルドの答えはなかった。
片目をあけてみると、もう彼の姿はそこになかった。
白く光る遠くのなぎさを、1人のビキニの女の子と彼は歩いている。いつもながら、この天心爛漫のミスター・ユニバースは、すぐ誰とでも友だちになれるのであった。
私はもう一度眼をとじた。あたたかい太陽が光の毛布となって私を包み込む。
楽しかった過ぎし日の思い出が、走馬灯のように脳裡に浮んでは消えていった。
師とあおぐジョー・ワイダー氏に、ニュージャージーのジムで会ったのがついこのあいだのような気がする。私がたずねていったとき、彼はたしかにこういった。
「よかろう。君がミスター・アメリカになるまで、私が責任をもって教えてあげよう」
眼をとじると、打寄せる波の音と、人びとのうち興じる声と、鳥の鳴き声がひとつの音楽となって私の耳をおそってくる。
そこには、まったく別の世界が存在する。私は、この美しい音の世界を楽しみ続けるためなら、盲目になっても悔はない‥‥とさえフト思ったほどである。
突然、シュワルツェネガーの大きな声が耳もとできこえた。「スゲー!!あのカワイコちゃんを見ろよ」
私は眼をとじたままいった。「アーノルド、君は忘れたのかい? 僕は、この世で一番美しいペニーと結婚しているんだ。ペニー以外の女の子など、いくらカワイコちやんでも眼中にないんだよ」
しかし、いつもならすぐハネ返ってくるアーノルドの答えはなかった。
片目をあけてみると、もう彼の姿はそこになかった。
白く光る遠くのなぎさを、1人のビキニの女の子と彼は歩いている。いつもながら、この天心爛漫のミスター・ユニバースは、すぐ誰とでも友だちになれるのであった。
私はもう一度眼をとじた。あたたかい太陽が光の毛布となって私を包み込む。
楽しかった過ぎし日の思い出が、走馬灯のように脳裡に浮んでは消えていった。
師とあおぐジョー・ワイダー氏に、ニュージャージーのジムで会ったのがついこのあいだのような気がする。私がたずねていったとき、彼はたしかにこういった。
「よかろう。君がミスター・アメリカになるまで、私が責任をもって教えてあげよう」
海の向うの話
「エッ? この私が?」私は友だちから"白くじら"とアダナされている自分のブクブクの体を考えて、思わずききかえした。
たしかあの頃だった。ワイダー氏が私の体をひにくって"チビッコ・ドレイノパー"とアダナをつけたのは‥‥
暑くなってきた。私は砂の上におきあがり、体にオイルをぬりながら、あたりを見廻す。アーノルドはどこかへ行ってしまって、人びとのざわめきの中に1人いる自分を見いだす。
私は、思い出に沈むために、もう一度砂のうえにねころんだ。
……カリフォルニアのワイダー・ジムで、私はきちがいのように練習をつづけた。ワイダー氏からは1日おきに電話がかかってきて、私を励まし、私のトレーニング内容をチェックしてくれた。遠く3000マイルのかなたからである。
やがて、私の体はそれに応えて、みちがえるように逞しくなった。
テレビ会社から、映画出演の話もあった。映画に出演しながらも、トレーニングだけは必死に続けたあの頃……
そしてミスター・アメリカ・コンテスト……怒号……拍手……優勝……栄光……さらにミスター ユニバース・コンテスト……
「へイ! まだ寝てるのかい?」アーノルドの大きな声が聞えて私は眼がさめた。
いつのまにか寝てしまっていたらしい。あたりにはもう人影もまばらだった。太陽も海のかなたに沈もうとしている。
「さー、タ方のトレーニングの時間だぜ、行こう」
アーノルドは私の手を引っばって立ち上がらせた。そうだ、あの可愛い鉄の塊りたちがジムで私を待っているんだ。
「行こう」私はアーノルドといっしょにジムに向って歩きはじめた。
(高山)
たしかあの頃だった。ワイダー氏が私の体をひにくって"チビッコ・ドレイノパー"とアダナをつけたのは‥‥
暑くなってきた。私は砂の上におきあがり、体にオイルをぬりながら、あたりを見廻す。アーノルドはどこかへ行ってしまって、人びとのざわめきの中に1人いる自分を見いだす。
私は、思い出に沈むために、もう一度砂のうえにねころんだ。
……カリフォルニアのワイダー・ジムで、私はきちがいのように練習をつづけた。ワイダー氏からは1日おきに電話がかかってきて、私を励まし、私のトレーニング内容をチェックしてくれた。遠く3000マイルのかなたからである。
やがて、私の体はそれに応えて、みちがえるように逞しくなった。
テレビ会社から、映画出演の話もあった。映画に出演しながらも、トレーニングだけは必死に続けたあの頃……
そしてミスター・アメリカ・コンテスト……怒号……拍手……優勝……栄光……さらにミスター ユニバース・コンテスト……
「へイ! まだ寝てるのかい?」アーノルドの大きな声が聞えて私は眼がさめた。
いつのまにか寝てしまっていたらしい。あたりにはもう人影もまばらだった。太陽も海のかなたに沈もうとしている。
「さー、タ方のトレーニングの時間だぜ、行こう」
アーノルドは私の手を引っばって立ち上がらせた。そうだ、あの可愛い鉄の塊りたちがジムで私を待っているんだ。
「行こう」私はアーノルドといっしょにジムに向って歩きはじめた。
(高山)
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