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ボディビルの基本〔その2〕トレーニング・スケジュールとコースのつくり方

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月刊ボディビルディング1971年11月号
掲載日:2018.06.25
竹内 威 (NE協会指導部長'59ミスター日本)
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採用したスケジュールの適・不適を判定する方法

 せっかく苦労してつくったトレーニング・スケジュールも、それが必ずしも自分に適しているとは限らない。では、この適・不適の判断のしかたについて述べてみよう。

◇適していると思われる場合◇

イ:生気があり、体調も良い。

ロ:トレーニングが待ちどおしく感ずる。

ハ:トレーニング日ごとに、スケジュールどおりに意欲的に行なえて、少しずつ能力が高まっている気がする(適したトレーニング度では、根性をあえて必要としない)

二:トレーニング後に、爽快な疲労感があり翌日の生活にも意欲的である


ホ:食欲があり、気分が安定している

 以上のような場合には、そのスケジュールは適していると判断してよい。しかもなお、体力的に余裕が感じられる場合は、使用重量、セット数の増加によって、トレーニング度を少しずつ強くするとよい。しかし、増加するについては、気持の上で、あまり抵抗なく行なえる範囲にとどめ、それも好調な状態が長く持続するのを見はからってからにしなければならない。

 1回や2回のトレーニングが調子よかったからといって、すぐにトレーニング度を強めては危険である。

 '66ミスター日本の遠藤光男氏ですらかって、調子にのってトレーニング度を急に強めたために、体調をくずして筋肉が細くなり、筋力も低下したことがあるくらいだから、充分注意しなければならない。

◇不適当と思われる場合◇

イ:生気がなく、体調が悪い。

ロ:トレーニングをするのに負担を感じ、ジムに行くのがイヤになる。

ハ:負荷と体力に調和が得られなくなり、所定のスケジュールをこなすのに義務感が生じる。

二:能力がトレーニングごとに低下しトレーニングの効果に希望がもてなくなってくる。

ホ:使用重量は低下しなくても、気分的にツラサが高まってくる。

ヘ:トレーニング後、疲れが激しく、倦怠感を覚える。疲れが翌日までのこり、生活に気力がなくなる。

 以上のような状態になったら、そのスケジュールは不適当だと判断してもよい。そして、その原因はたいてい、トレーニング度が強すぎるか、休養が不充分の場合が多い。

 初心者のなかには少しでも早く効果をあげたいばかりに、よく自分の体力の極限に近いトレーニング度で行なう人を見かけるが、一度、体調をくずすとなかなか元に戻らないので、決してあせることのないように十分注意しなければならない。

 また、トレーニング度は適切であると思われるのに、体調をくずし、スムーズに回復しないことがあるが、これは、トレーニング後の回復処置に問題がある場合が多い。仕事、勉学などを含む日常生活との折り合いをよく考えて、睡眠と栄養を充分にとるように心がけることが大切である。

 先月号からひき続いて述べてきたように、トレーニングの成果をあげるためには、あくまでも正しいスケジュールにしたがってトレーニングしなければならないことが理解できたと思う。

 もし、誤ったスケジュールだと感じられたときは、すなおな気持で、ただちにそのスケジュールを改めなければいけない。そして、いままでの疲労をいやすために、思いきって7〜10日間ぐらいの休養をとってから、新しいスケジュールでトレーニングするようにするのがよかろう。

トレーニング・コースのつくり方

 身体の強化と発達の傾向は、トレーニングの内容によってきまるといっても過言ではない。腕を強くするには腕の運動を、肩巾を広くするには肩巾を広くする運動を行なう必要がある。したがって、トレーニング・コースは、いろいろな各自の要望を上手に盛り込んで作ることが大切である。しかし、ただ要望するままに、単純に運動種目を並べればよいというものではなく、充分な効果を期待できるトレーニング・コースを作るためには、つぎに述べるような点を考慮しなければならない

コースを作るにあたり考慮すべきことがら

イ:1日のトレーニング量は、どのくらいがよいか。
ロ:全身を胸・肩・腕・背・腰・脚・首の部分、あるいは、それ以上に細かく分けて、各部分の運動を何種目ずつ行なうようにしたらよいか。
ハ:各部分の運動種目の選択と、組み合わせをどのようにしたらよいか。
二:どのような順序で行なえばよいか
ホ:回数(レピティション)は何回ぐらいがよいか。
ヘ:各種目のセット数は何セットくらいがよいか。

 等のことがらについて、とくに考慮しなければならない。では、イ:から順に説明することにしよう。

イ:トレーニング量について

 トレーニング量をきめるにあたっては、先月号で述べた「消耗と超回復」の関係についてとくに留意しなければならない。

 まず、次のトレーニング日までに十分回復してること。欲ばりすぎて、次のトレーニング日になっても疲れが残っているようでは、超回復も十分ではないと考えられ、効果が期待できないばかりか、ときにはマイナスになることさえある。(このことは、全体のトレーニング量だけでなく、部分的な運動量についても同じことがいえる)。
 では、適当なトレーニング量はどのくらいかというと、これは、体力・経験・生活状態など個人差があるので。具体的に示すことはできないが、外国の一流ビルダーで、1日に行なうセット数が40〜60セットであるから、このことを目安にして、各人の立場で考えてもらいたい。(先月号で述べたことがらが、そのままトレーニング量を決めるのにも参考になる)

ロ:とくに発達させたい部分と種目数

 筋肉を発達させるには、まず、運動に必要なエネルギーの獲得、運動により生じた疲労素や老廃物の除去、筋組織における栄養分の同化作用など、からだの働きがスムーズになされなければならない。このようなからだの働きは、筋肉が太くなり重い物でトレーニングするようになればなるほど、より必要とされ、身体素質の向上にともなって強化されてくる。
 しかし、強化されるといっても、それには限度があり、筋肉が発達し、トレーニング度が強度になってくると、急速にあらゆる部分を同時に発達させることは困難になる。したがって、各部分を均等に鍛えるより、とくに発達させたい部分に重点をおき、各部分の運動量に強弱をつけてトレーニングを行なう方が効果的といえよう。

 このため、まず現在の自分のからだの発達状態からみて、トレーニングの重点を、どの部分の運動におくか考えて、運動種目の配分をするのである。
 では、その配分のしかたを参考までにあげてみよう。

◎……もっとも発達を要望する部分
3〜5程重目

□……2番目に発達を要望する部分
2〜4種目

△……他の部分(現状維持程度)
1〜2種目


〔例〕
◎胸部 3〜5種目
□肩 2〜4種目
△胸 1〜2種目
△背 1〜2種目
△脚 1〜2種目
△腹 1〜2種目

 このように配分するのであるが、全体の種目数は10〜15種目ぐらいが妥当と考えられる。

 上級者においては、ときには自分で十分満足のいくほどに発達を得た部分の運動を、トレーニング・コースから除外して、まったく行なわない方法をとる場合もある。

 一度得た筋肉の発達は、トレーニングの中止により、いくらか減退してもトレーニングを再開すれば、短期間で容易に元の状態に戻るものである。このような筋肉の性質を考慮に入れて、ある部分の運動を除外してトレーニングを行なうことは、運動中のエネルギーの分散と疲労を少なくし、また、運動を行なった筋肉への栄養分も多く送られるので、同化作用も高められ、均等にトレーニングを行なった場合よりも、より多くの効果をあげることができるのである。

ハ:運動種目の選択と組み合わせ

 同一部分のための運動種目でも、バルク(筋量)を増すための運動種目と
どちらかというと、形をととのえるための運動種目にわけられる。したがって、運動種目の選択と組み合わせにあたっては、これらのことを十分考慮しなければならない。

発達を強く要望し、数種目の運動を行なおうとする部分には、まず、バルクを増すための大きな運動種目を選び次いで、その種目をおぎなうための種目を必要に応じて選ぶようにすればよい。

 胸部を例にとるならば、最初にベンチ・プレスを行ない、次いで、それをおぎなうためのダンベル・ベンチ・プレスを行なうというようにし、必要に応じてインクライン・プレスや、ディップスをこれに加えるようにするのである。

 運動種目の組み合わせについては、同一部分について同じような傾向の種目を選ぶよりも、異なった傾向の種目を選ぶ方が効果的であることはいうまでもない。

 たとえば、背の部分についていえばベント・オーバー・ローイングとバー・ローイングの組み合わせよりも、ベント・オーバー・ローイングとチンニングの組み合わせのほうが、異なった方向から広背筋を刺激できるので、より効果的であるといえよう。

 1〜2種目程度しか行なわない部分の運動としては、バルクを増すための大きな運動種目を採用するようにするのがよい。

二:トレーニングの順序

 トレーニングの順序については、どのように行なってもよいと思われるフシもあるが、運動の能率と効果をあげるためには、この順序を無視することはできない。
 まず、からだの部分のうち、脚・腕・腹の3部分の順序をどのように行なうかが大きなポイントとなる。

〈腹の運動〉
 腹の部分の運動は、ウォーム・アップを兼ねて最初に行なうか、あるいは一番最後に行なうようにするのがよい。

〈脚の運動〉
 脚の部分の運動は、上半身の運動の前か後に行なうようにして、上半身の運動の中間にいれて行なうのは避けたほうがよい。脚の運動を上半身の運動の中間に行なうことは、下半身に血液が多く吸収されるので、上半身の運動の能率を低下させるおそれがあると思われるからである。

 また、下半身の運動から上半身の運動に移るとき、あるいは、逆に上半身の運動から下半身の運動に移るときはいくぶん長く休息をとり、ある程度パンプ・アップから解放された後に行なうようにするのがよかろう。

〈腕の運動〉
 腕の部分については、上体のほとんどの運動が腕を使用するので、他の運動にさしさわりのないように、上体の運動の最後にもってくるようにするのが理想的である。

 他の部分については、とくに規定する点はないが、発達を要望する部分から順に行なうようにするのがよい。

 同一部分の運動を数種目行なう場合は、消耗の大きい種目から小さい種目へと移るのが効果的と考えられる。

 なお、デッド・リフトなど腰の運動を行なうときは、安全性から考えて、スクワットやスタンディング・プレスなどのように、腰にかなりの負担がかかる運動の前には行なわないほうがよい。また、スクワットや高重量を使用してのクリーンなど、筋作業の激しい運動を最初に行なう場合は、ウォーム・アップを十分に行ない、しかも、使用重量は軽いものから徐々に増量するのが安全である。

トレーニング・コース(例) 隔日、週3日 合計43セット

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ホ:運動の反復回数について

 運動の反復回数は、運動種目や目的によって異なるので、一概にはいえないが、筋肉の発達をうながすには5〜20回、持久力を養成するには20回以上がよいといわれている。また、筋力を強化するには、5回以下の反復による運動を、筋肉の発達のための運動と合わせて行なうのがよいと考えられている。

 運動種目の面から考えると、使用する筋肉が広範囲にわたる種目とか、大まかなバルクを増すための種目は、低回数で行なってもさしつかえないが、主用筋肉が小さな部分に限られる種目では、低回数は不向きであると考えられる。

 運動種目によっては、重量を重くして低回数で無理に行なうと、筋肉を痛めることがある。たとえば、ベンチ・プレス、スクワット、デッド・リフトバーベル・カール、ネック・ビハインド・プレスなどは比較的低回数で行なってもよいが、スタンディング・ラタラル・レイズ、レッグ・カール、コンセントレーション・カールなどの場合は、低回数は不向きで、高回数のほうが筋肉に与える刺激も強くなり、より効果的といえよう。

 高回数と低回数のどちらが効果があるかということは、一概には断定できない。したがって、各人の好みの回数で行ない、のびなやんだら回数に変化をもたせて、筋肉に与える刺激を変えるようにするのが賢明であろう。

ヘ:セット数について

 大きな筋肉のための運動であるベンチ・プレスとかスクワット、その他,とくに発達を要望する部分の主な運動については4〜6セットが適当と思われ、ときには、それ以上のセット数を行なってもよいが、他の種目については、ふつう2〜4セットぐらいが適当といわれている。

 外国の一流ビルダーの場合、全体のセット数が40〜60セットくらいであるから、そのことを考えて、全体のセット数が多くなりすぎないように、各種目ごとのセット数を決めるのがよかろう。いたずらにセット数を多く行なうより、念入りに運動を行ない、上手に刺激を与えるように心がけることが肝要である。
 なお、消耗の激しい運動種目のセット数を多く行なう場合は、そのことをよく考えて、全体のセット数は少な目におさえるようにしなければならない。
月刊ボディビルディング1971年11月号

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