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海の向うの話 1971年12月号

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月刊ボディビルディング1971年12月号
掲載日:2018.05.29
欧米の著名ビルダーといえども、自分にあったトレーニング方法をつかむためには大変な苦労をしている。
今月は、その中のいくつかを紹介してみよう。

-サイクル・トレーニングのすすめ-

お天気に晴雨があるように、トレーニング時の体調にも、当然よしあしがあってしかるべきである……と語っているのがフランク・ゼーン。

この快調と不調の波には一定のサイクル(周期)があり、これを自身で敏感に感じとって、それに合わせたトレーニング方法をとらねばならない……と彼は考えている。

ダウン・タイムズ(不調時)には、無理にトレーニングを押し進めず、量をおとし、軽いウェイトで、1時間ぐらいできりあげるのである。

これがよい気分転換にもなり、やがて好調の波が自分に押し寄せてくるのがわかる。

これには、やや迷信めくが、いま日本でもはやりのバイオリニズムの曲線を活用することの可能性を、考えてみる必要性もあろうかと、フト思ったことであった。

-ハリー・マッドの広背 トレーニングのコツ-

逆三角形の美しい広背をもって知られるハリー・マッドは、それを得るまでの人知れない苦しみを永年味わってきている。

ベント・オーバー・ローイングとエンド・オブ・バー・ローの正しい姿勢と方法を知るのにさえ、彼は2年以上をついやしたという。

では、彼が体得した広背トレーニングのコツをお教えしよう。

広背筋を上・中・下の三部門に分けて、ねらいとする部分を鍛える種目を2つだけ選び、これをスーパー・セットに組んで、できるだけ多セット行なうのである。

彼自身には、広背の幅と厚みを増すのにベント・オーバー・ローとラット・マシーン・プルダウンが最も効果が早かったというが、とにかく、少種目を7セットから15セットぐらいまで、多セット続ける。

そして、4〜5カ月に一度その種目を変えていくのである。

広背トレーニングの壁にブツかったビルダーは、一度この方法を採用してみるのも試行錯誤の一端であるかもしれない。
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-ショート・マン・クラスのトレーニング-

ミスター・ユニバースのコンテストで、ショート・マン・クラスを代表して万丈の気を吐いているのが、フランコ・コロンボ。

彼の5フィート5インチ(約165cm)という背の低さは、日本人にも共通の身体上の悩みであったろう。

彼は、数年前、ドイツのミュンへンでアーノルド・シュワルツェネガーと一緒にトレーニングしていたことがある。そして、2人ともまったく同じトレーニング方法を採用していた。

しかし、2人が並んだところは、背の低いコロンボに不利で、彼はいつも劣等感になやまされていた。

この劣等感を吹きとばすためにも、彼はバルクの増大に必死となった。

ある日、アメリカからミュンへンのジムを訪れた大御所ワイダーは、このコロンボの姿を見て、デフィニションとプロポーションこそ君の生命だとアドバイスしたのである。

それから彼の練習方法は変わった。そして、劣等感もなくなった。

のちに彼がミスター・ユニバースの栄冠をつかんだとき、「私の今日あるは、あのアドバイスのおかげである……」と述懐したという。
(高山勝一郎)
月刊ボディビルディング1971年12月号

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