POSING~ 遠藤光男選手のポージング解剖 ~
1●ボリューム感のあふれたおちついたポーズである。しかし、総体的にいって、上体にくらべて脚に迫力がとぼしいようだ。遠藤君の今後の課題は、脚のトレーニングに重点をおくことである。
たまたま、茶の間でそれを見ていたわたくしは、画面でたくましい筋肉のもりあがりを見せる遠藤君に、いずれは近い将来の日本ボディビルディング界を代表するであろう実力を感じとったものだ。
それから数カ月。大学で後輩にあたるやはり日本の代表的ビルダーの1人である磯部君の紹介で、わたくしは彼、遠藤君と早稲田大学のウェイトリフティング練習場で初めて会った。これが彼との出合いである。
それ以来、これまでに彼とは10回ほど会っただろうか。そして、会うたびにすご味を増していく彼の底知れぬバイタリティには、わたくしも脱帽のほかはないのである。
さて、このページを飾る12葉の写真は、つい最近、彼の経営する錦糸町ボディビル・ジムで撮ったものだが、一昨年のIFBB主催のミスター・ユニバース・コンテストで第3位を獲得した当時よりも、さらにいちだんと力強さを増し、とくに肩から胸そして上背部の筋肉の充実した様子には目をみはらされる。
2●上体をわずかに前にちぢめるような感じで腹筋を緊張させ、両肩を前内側にしぼるようにして大胸筋と三角筋、そして広背筋を誇示したポーズ。胸から肩にかけての筋肉の充実ぶりに注目。
ポージングの要件
このように、ポーズをとるときには、かならず自分のからだ全体のバランスについて考慮する必要があるのだ。
次に大切なことは、見る人に自分がもっとも得意とするからだの角度を向けるということである。これを写真撮影にたとえれば、その見る人の役が、すなわちカメラのレンズということにもなろう。しかも、ポージングでは、からだの各部分にあたるライトの効果をなおざりにするわけにはいかないのだ。もっとも、このライティング効果ということは、コンテストでは基本的にはその主催者側が十分に配慮すべき問題なのだが……。また、写真撮影のためにポーズをとっているときには、カメラマンあるいはその助手かつねに気をくばっておかなくてはならない重要な仕事内容の1つでもある。
そして、最後に……。ポーズをとる人は、筋肉を緊張させたとき背筋力測定時のように顔をしかめたり、あるいはまた顔をこわばらせたりして、照れたりすることのないように、ぜひとも心がけたいものである。相手に不快感をあたえないような、すなおな表情で力強いポーズや優美なポーズがとれるよう、ふだんから十分な練習をつんでおくことこそ、ポージング技術完成への不可決の要件だといえるだろう。
3●往年の大スター、ジョン・グリメックの好きなポーズの1つ。これは肩幅が広くて腹部の細いタイプのビルダーでなくては、なかなか様にならないものだが、遠藤君はうまくそれをまとめあげている。
4●遠藤君の得意のポーズの1つ。ふだんは顔を斜め横上に向けていたはずだが……。しかし、全体としてうまくまとまっている。とくに、彼の右腕の前腕部の発達に注目されたい。
5●1952年度AAUミスター・アメリカのジム・パークが得意とするポーズの1つ。これはなかなかうまくとりにくいポーズだ。この写真でも、むしろ、右足を左足のカカトの横あたりにおいたら、全体のバランスがもっとうまくとれるのではなかろうか。
6●このポーズはよくまとまっている。とくに上体の逆三角形がたくましさを助長している
7●このポーズは文句なしに立派。上体と下体のバランスもじつにうまくいっている。
8●これもうまくまとまり、なかなか迫力のあるポーズの1つである。とくに、弓状にはいった背筋の陰影と上背部の筋肉の明暗とがおりなすコントラストがすばらしい。
9●広背筋の発達ぶりを示すばあいのもっともポピュラーなポーズ。全身のプロポーションもなかなか立派だ。
10●このポーズは、かならずしも成功したものとはいえない。頭の位置と右足のおき方にいまひとつの工夫があってよいのではないか。しかし、彼の上体の発達ぶりを知るには貴重な写真の1つ。
11●このポーズは顔の小さい遠藤君には適している。とくに、左右のわきの下にノコギリ状にあらわれている前鋸筋の発達がすばらしい。
12●両腕をまげて肩の高さに上げると、広背筋や大胸筋の発達が未熟なビルダーではまったく様にならないというのが通例である。このポーズはじつによくまとまっているが、最後にもう1度、遠藤君に脚のトレーニングをおこたらないよう忠告しておきたい。
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