● 第4回全日本記録挑戦会詳報 ●
月刊ボディビルディング1969年8月号
掲載日:2018.04.04
この日東京YMCA体育館は早朝から出場選手や、会場設営に動きまわる協会役員でにぎわっていた。
9時、そろそろ計量が始まる頃に八田一朗日本ボディビル協会々長が早くも姿を見せる。
厳密な計量をすませた選手達は、佐藤審判部長から競技規定の細かい注意をうける。
選手達は真剣に審判長の説明に聞きいる。長年鍛え上げた筋力を今日1日に賭けて、思い切り力を発揮しようとしている選手達にしてみれば、紙一重の差で成功、不成功になる審判の判定に気をつかうのは当然のことだろう。
「選手諸君は立派な体をボディビルで鍛えあげているが、その立派な体の実力をこの記録挑戦会で大いに発揮してもらいたい」と八田会長が挨拶を述べる。いよいよ競技開始、まずベンチ・プレスの熱戦が始まる。
9時、そろそろ計量が始まる頃に八田一朗日本ボディビル協会々長が早くも姿を見せる。
厳密な計量をすませた選手達は、佐藤審判部長から競技規定の細かい注意をうける。
選手達は真剣に審判長の説明に聞きいる。長年鍛え上げた筋力を今日1日に賭けて、思い切り力を発揮しようとしている選手達にしてみれば、紙一重の差で成功、不成功になる審判の判定に気をつかうのは当然のことだろう。
「選手諸君は立派な体をボディビルで鍛えあげているが、その立派な体の実力をこの記録挑戦会で大いに発揮してもらいたい」と八田会長が挨拶を述べる。いよいよ競技開始、まずベンチ・プレスの熱戦が始まる。
●ベンチプレス軽量級
新記録を期待された昨年の覇者伊集院選手(大阪ナニワ・クラブ)は肩を痛め140kgにとどまったが、最近グングン力をつけてきた花井選手(東京峰岸商店)が140kgの同記録にこぎつけ、計量の結果2kg程軽い花井選手の優勝ときまった。
例年すさまじい気合で伊集院選手と優勝を争う富永選手(東京)が不出場だったのは淋しかったが、高橋選手(神奈川富士通)あたりが135kgと成長しているのは将来が楽しみだ。
例年すさまじい気合で伊集院選手と優勝を争う富永選手(東京)が不出場だったのは淋しかったが、高橋選手(神奈川富士通)あたりが135kgと成長しているのは将来が楽しみだ。
●ベンチ・プレス中量級
杉田(大阪ナニワ・クラブ)、小沢(東京警視庁)、市丸(福岡福岡BC)、糸井(京都中心体育館)の大激戦となったが最後は市丸と小沢の一騎討ちがみものだった。
市丸はミスター・ユニバース2位の小笹和俊選手と同じ福岡ボディビル・センターの所属。太田福岡県ボディビル協会理事長が自信をもって送り込んできた選手だけにフォーム、マナー、闘志等申しぶんのない堂々たる強豪だった。
小沢は市丸と同記録となり計量の結果やや軽かった市丸に惜しくも優勝をさらわれた。しかし小沢の健闘も立派だった。多くの地方勢を相手に東京勢として唯一人迎え討ち、最後まで気力のこもった試合を読け、中量級の最高記録を出した根性は賞賛に値する。
市丸はミスター・ユニバース2位の小笹和俊選手と同じ福岡ボディビル・センターの所属。太田福岡県ボディビル協会理事長が自信をもって送り込んできた選手だけにフォーム、マナー、闘志等申しぶんのない堂々たる強豪だった。
小沢は市丸と同記録となり計量の結果やや軽かった市丸に惜しくも優勝をさらわれた。しかし小沢の健闘も立派だった。多くの地方勢を相手に東京勢として唯一人迎え討ち、最後まで気力のこもった試合を読け、中量級の最高記録を出した根性は賞賛に値する。
●ベンチ・プレス重量級
ベンチ・プレス重量級は、記録挑戦会では新人だがボディビル、重量挙げ両界の大ベテランである中大路(神奈川電源開発)、鈴木(神奈川BC)の2人の決戦になったのは面白かった。
中大路は過日の実業団記録挑戦会でも160kgをあげ、まさに絶好調で大会にのぞんできた。鈴木邦久選手も第1回ミスター日本に出場し優秀な成績をおさめ、その後数年コンテストや重量挙げに選手として活躍したベテランだ。しかも2人ともYMCAバーベル・クラブで一緒に練習にはげんだ間柄である。
結果は日本新記録樹立の中大路に軍配が上がったが、さすがに両べテラン他の選手の模範になる見事な戦いぶりだった。
なお、福島から参加した大野も大いに将来が期待される選手だ。
中大路は過日の実業団記録挑戦会でも160kgをあげ、まさに絶好調で大会にのぞんできた。鈴木邦久選手も第1回ミスター日本に出場し優秀な成績をおさめ、その後数年コンテストや重量挙げに選手として活躍したベテランだ。しかも2人ともYMCAバーベル・クラブで一緒に練習にはげんだ間柄である。
結果は日本新記録樹立の中大路に軍配が上がったが、さすがに両べテラン他の選手の模範になる見事な戦いぶりだった。
なお、福島から参加した大野も大いに将来が期待される選手だ。
●ディープ・ニー・ベンド軽量級
伊集院と広瀬(東京恒陽社)が同記録の180kgの新記録を樹立したが、計量の結果広瀬がチャンピオンになった。斎藤(福島BBC)や花井も160kgを出しているので今後が期待される。
●ディープ・ニー・ベンド中量級
ベテラン後藤(東京後楽園)が195kgを出して優勝。YMCAの岩岡も同じく195kgを出したが体重がやや重く2位となった。狩野も実業団では断然強味を発揮するがやはり全日本ではまだ力不足の感はまぬがれない。
●ディープ・ニー・ベンド重量級
吉田(京都BBC)、磯野(東京YMCA)、鈴木(神奈川)、大野(福島BBC)の対戦となった。
大野が200kgに2回挑戦しながら2度とも膝の曲げが浅く失格になったのは残念だった。もし200kgが成功していたら総合でも日本記録になったので、まことに措しいことである。
結局、吉田が昨年のチャンピオン磯部と同記録になり、計量の結果優勝をものにした。
大野が200kgに2回挑戦しながら2度とも膝の曲げが浅く失格になったのは残念だった。もし200kgが成功していたら総合でも日本記録になったので、まことに措しいことである。
結局、吉田が昨年のチャンピオン磯部と同記録になり、計量の結果優勝をものにした。
’69全日本記録挑戦会記録表(3位まで)
◎は日本新記録 東ー東京 大ー大阪 神ー神奈川 福ー福岡 京ー京都
吉田はフォームの見事さと、きびきびした動作、マナーの正しさ等一点の非のうちどころのない立派な試合ぶりであった。
●総合軽量級
伊集院が新記録の320kgで優勝、ベテランの貫録をみせた。2位の広瀬、3位の花井も300kgに手がとどいているのは立派だ。軽量級でもすでに300kgを越えなければ入賞できないところまで記録が向上してきたことを示している。
●総合中量級
21歳の新進岩岡(東京YMCA)が優勝した。期待された市丸がベンチ・プレスの強さの割にディープ・ニー・べンドの力が弱くふるわなかった。もう20kgディープをのばすのは市丸選手の力からみてさして難かしいことではないと思われるので、来年の活躍が期待される。
●総合重量級
最後まで優勝の行方のわからない混戦だった。中大路がディープ・ニー・べンドが180kgに止まり345kgの新記録を樹立したが、鈴木と大野は190kgに成功。200kgに挑み、それが成功すれば中大路の新記録は破れるので満場かたずをのんで見守る緊張した雰囲気だった。しかし両者とも惜しくも190kgにとどまり中大路の優勝が決定した。
ーー 総 評 ーー
まず記録面からいうと、数々の新記録の生まれた大会だった。軽量級のディープ・ニー・ベンド、総合、中量級のべンチ・プレス、重量級のべンチ・プレス、総合等がそれぞれ更新された。9部門のうち5部門まで記録が書きかえられたわけである。
また昨年まではほとんど関東と関西の選手で争われる大会であったが、今年は九州や東北からも選手の参加がみられたことは非常によろこばしいことであった。
次に選手の試合態度にふれたい。記録挑戦会はスポーツ競技である。スポーツ競技であるならば、記録や勝ち負けにこだわるあまり見苦しい試合態度になることはつつしまなければならない。スポーツマンシップとはルールを守り、正しいフォームで、気迫にみちて、しかもマナーを失わず力一杯闘い抜くことにあるのだ。その点をよく考え他のビルダーの模範になるべく立派な試合態度に終始してもらいたい。
2、3よい例をあげると、京都の吉田選手、福岡の市丸選手、東京の小沢選手、神奈川の中大路選手、鈴木選手等はいずれの点からみても立派だった。
次に判定の問題にうつろう。今年は審判打ち合わせ会で、ルーズなものや甘いものにはきびしく臨もうと定めていただけに、あいまいなものにはどんどん赤旗があげられた。
将来の記録会の発展のためにも、平常の練習のためにも大いにプラスになることだろう。
陪審制度を正式に設けたので抗議があったが、その内容は「審判の判定のきびしいのは結構だが、同じ審判の判定の基準が一定でないのは不公平だ」というものであった。これは見る角度によっても異なるし、人間の目だから人によって判断の違いがあるのはやむを得ないだろう。ただしできるだけ正確かつ公平に判定できるよう審判の訓練も今後必要なことだろう。しかし今回の審判に関しては見方の相違はあっても一切の私的感情を入れず冷静に判定を下していたことを私は賞賛したい。
運営面の問題だが、今回は東京YMCA体育館の好意で会場をお借りすることができたのであらゆる面でスムースにいったと思っている。ただ次回からは観客に対するサービスとして重量表示板を作成したい。
最後に記録挑戦会はコンテストに比べて参加者が少ないが、ともすれば体の誇示のみに流れる傾向のあるトップ・ビルダー達にスポーツマンシップを体得してもらうためにもどんどん参加することを希望したい。
(玉利 斉)
また昨年まではほとんど関東と関西の選手で争われる大会であったが、今年は九州や東北からも選手の参加がみられたことは非常によろこばしいことであった。
次に選手の試合態度にふれたい。記録挑戦会はスポーツ競技である。スポーツ競技であるならば、記録や勝ち負けにこだわるあまり見苦しい試合態度になることはつつしまなければならない。スポーツマンシップとはルールを守り、正しいフォームで、気迫にみちて、しかもマナーを失わず力一杯闘い抜くことにあるのだ。その点をよく考え他のビルダーの模範になるべく立派な試合態度に終始してもらいたい。
2、3よい例をあげると、京都の吉田選手、福岡の市丸選手、東京の小沢選手、神奈川の中大路選手、鈴木選手等はいずれの点からみても立派だった。
次に判定の問題にうつろう。今年は審判打ち合わせ会で、ルーズなものや甘いものにはきびしく臨もうと定めていただけに、あいまいなものにはどんどん赤旗があげられた。
将来の記録会の発展のためにも、平常の練習のためにも大いにプラスになることだろう。
陪審制度を正式に設けたので抗議があったが、その内容は「審判の判定のきびしいのは結構だが、同じ審判の判定の基準が一定でないのは不公平だ」というものであった。これは見る角度によっても異なるし、人間の目だから人によって判断の違いがあるのはやむを得ないだろう。ただしできるだけ正確かつ公平に判定できるよう審判の訓練も今後必要なことだろう。しかし今回の審判に関しては見方の相違はあっても一切の私的感情を入れず冷静に判定を下していたことを私は賞賛したい。
運営面の問題だが、今回は東京YMCA体育館の好意で会場をお借りすることができたのであらゆる面でスムースにいったと思っている。ただ次回からは観客に対するサービスとして重量表示板を作成したい。
最後に記録挑戦会はコンテストに比べて参加者が少ないが、ともすれば体の誇示のみに流れる傾向のあるトップ・ビルダー達にスポーツマンシップを体得してもらうためにもどんどん参加することを希望したい。
(玉利 斉)
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