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鍋もの料理

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月刊ボディビルディング1972年1月号
掲載日:2018.06.18
野沢秀雄
 雪がちらちらする晩に囲む鍋料理湯気のなかに、肉やトウフや野菜がボーッとかすんでいる。まだかな、まだかなと待つ気分がなんともいえない。

 鍋を囲んでいるグループを観察してるとおもしろい。材料を入れて食べさせる人と、そしらぬ顔してパクパク食べてばかりいる人と、はっきり2つにわかれるようだ。

 一あるひと、たまに気をきかせて魚を鍋に入れたのはよかったが、しばらくするうち、どこにいったかわからない。そこで一声「ボクの魚食べたのダーレ?ファンタスチック!……」

<スタミナの秘密>

 私たちの体は冬でも一定の温度を保つように、食べた食品を体内で燃やして暖めている。もちろん、厚い衣服や暖房もそれを助けているのだが。

 暖かい食事や飲み物は、冷たいものに比べて高い熱エネルギーを持っていて、体にはひじょうにありがたい。ホカホカと体がすぐに暖まって心まで暖かくなる。

 鍋ものは材料として、動植物食品をとりまぜて使用するので、栄養のバランスがよいうえ、ダシに使うコンブ・つけ汁の大根おろし・レモン酢などの小道具が味を引き立て、おいしさを倍増させている。

 材料のうち「しゅんぎく」と「しいたけ」の効用についてちょっと紹介しよう。

 しゅんぎくは特有の香味をもっていて、味を引きしめているが、その香気成分は精油の一種で、胃腸を丈夫にする作用がある。漢方薬の有効成分は、精油であることが多い事実からわかるように、しゅんぎくも中国では昔から強精薬として愛用されている。そのほか、ビタミンAの素であるカロチンやビタミンCが多い。ビタミンCが美容や性ホルモンの分秘、あるいは骨の発達に関係の深いことは一般によく知られている。ビタミンCはまた、傷がなおるときに、大いに働くので、もしケガをしたときにビタミンCが足りないとすると、傷のなおりがずっと遅くなる。

 しいたけは、ビタミンB1・B2が多いほか、太陽に当るとビタミンDに変化するエルゴステリンが豊富にある。ビタミンDは青少年だけでなく、大人になっても骨格を強化するのに必要なビタミンだ。そのうえ、フイトステリンといって、動脈硬化や高血圧を防止する物質を含んでいる。血管をつまらせるコレステリンが体内に吸収されるのを防止するガードマンである。牛肉のオイル焼きといっしよにしいたけを食べるのはこんな理由からである。最近になって「しいたけはガンを防ぐ」という研究発表があり、昔から不老長寿の薬といわれたり、強壮剤として使用されてきた習慣を裏づけているようだ。
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<鍋もの料理の種類>

 石狩鍋・湯どうふ・土手鍋など、全国各地に名物の鍋料理が伝えられているが、大きくわけると

 ① なべの中に煮出汁と材料だけを入れて煮る水だき(ちりなべ・湯どうふ・シャブシャブ)。

 ② しようゆ・砂糖・酒・酢などを同時に入れて煮るもの(寄せ鍋・ちゃんこ鍋・おでん・すきやき)

 ③ みそを入れるもの(土手鍋・たぬき汁)。

 以上の3つに分類できる。どれもうまいので、たまには方法を変えてみるのもいい。
 
 材料は牛肉・豚肉・とり肉・タラ・ふぐ・カキ・ハモ・サケ・ミツバ・しゅんぎく・しいたけ・えのきだけ・白菜・ねぎ・ほうれん草・とうふ・しらたき・・・・・・あなた好みでなんでもいける。

<うまい食べ方>

 豚肉・ハモ・ふぐなど煮えにくいものは「下煮」といって、あらかじめ煮ておくとよい。野菜は煮すぎないうちに食べるとビタミンが生きる。料理を食べたあとの汁にはビタミン・アミノ酸・ミネラルのような栄養成分がたっぶり溶けこんでいる。ごはんを入れて「おじや」にしたり、正月ならモチをほうりこんで、フーフー食べるのが最高だ。

 食堂で食べる鍋料理はタンパク質が少ないので、自分でつくるにかぎる。肉や魚をたっぶり使えばスタミナ満点だ。

 鍋もの料理のカロリー計算をしてみると次のようになる。

♢タ食にタラのちり鍋を使った例♢

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月刊ボディビルディング1972年1月号

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