フィジーク・オンライン

海の向うの話 1972年4月号

この記事をシェアする

0
月刊ボディビルディング1972年4月号
掲載日:2018.03.10
記事画像1

猛烈男の猛烈トレーニング

「モーレツ」という言葉は一時日本でも流行った。
モーレツにかせぎすぎて、エンキリでがっくりといった例もある。
しかし、トレーニングの場合は、モーレツなことはいいことである。少なくとも、一定の水準を越えた上級者にとっては。
ここに紹介するのは、世界の猛烈ビルダーの猛烈トレーニングの様子である。

――172階段の男――

海岸の砂の上を毎朝ランニングして脚を鍛えたオーストラリアのフランク・コロンベラ、重い自転車で坂を上って脚を鍛えた日本の武道選手等々、脚をトレーニングするには、ただバーベルによるにあらず。
かのフランク・ゼーンなどは、カリフォルニアの海岸近くの坂にある172段の石段を毎日、5回から8回登り降りして下半身を鍛えあげているそうだ。
それもスピードをつけ、すごい勢いで走り、リズムをつけて上下する。
しかも、これは通常の脚のバーベル・トレーニングをやったのちのフィニッシュとして行なうのだ。
この同じ階段を、同じ方法で登り降りし、何と1時間で23回半、ブッつづけに走ったビルダーがいる。
アート・ゼラーである。
今のところ、これがステップ・クライミングの最高記録となっている。
四国のコンピラさんの石段を10回くらい登り降りできるビルダーが日本にいればお目にかかりたい。

――ペナルティ・トレーニング――

一流ビルダーでも、その日の調子が悪くて、自分でたてた一定のトレーニングの予定をこなせなかった、ということはよくある。
その時、あなたならどうする?
次の回のトレーニングに、前回できなかった分を上のせして行なうといういわゆるペナルティ・トレーニングをみずから課しているビルダーがアメリカにいる。
代表的なところでは、アーノルド・シュワルツェネガー、フランコ・コロンボ、デープ・ドレイパーといった面々である。
これは実に厳しいもので、次の回には一定のスケジュールをこなしてからさらに前回の不足分を続けてこなさなければならない。
シュワルツェネガーなどは、一度ならず、途中で吐き気をもよおし、断念しようとする自分と戦いながら、歯をくいしばって全量を終ったという。
「もし1週間も病気をしたら、いったいどうなることか」と、ジムの中では気をもむ人は多いときく。
読者諸兄にみならって欲しいのは、このペナルティ・トレーニングそのものではなく、己を持する彼等のメンタリティである。

――100回連続のチンニング――

完全なチンニングを何回連続して行なえるだろうか?
これは、ビルダーの広背筋や腕の発達状況によって差があるが、アメリカのモンティ・ウォルフォードは56回の完全なチンを記録している。
首がチンニング・バーの上に出ることが完全なチンの条件だが、もし、不完全なものまで含めれば大変な数になるだろう。
現在、彼はこのチンニングに集中トレーニングをかけ、2~3ヵ月以内に完全なチンを100回やれるようにすると豪語している。
同じジムの連中が「100回はムリだ。なんだったら1万ドルかけてもよい」とヤジっているが、さてこのカケはどちらの勝ちになることやら。
我と思わん日本のビルダー諸君、ひとつ挑戦してみは如何。

――ビルダーの回復力――

フレディ・オーチィスが大病にかかった。やせほそって130ポンドに落ちた体で、死人のような顔をしてジムにあらわれた彼に、周囲の同情の眼が集まった。
彼は軽いウェイトでフラフラと練習を始めたものである。
次の日、そして次の日と彼はウェイトをふやし、トレーニング時間も長くしていった。
1ヵ月のち、彼はなんと190ポンドに回復し、逞しい体に戻っていた。
おそるべき回復力とその精神力。これこそビルダーの資産であると、彼は身をもって示したのである。
(高山勝一郎)
172段の石段を毎日登り降りして下半身を鍛えたフランク・ゼーン

172段の石段を毎日登り降りして下半身を鍛えたフランク・ゼーン

月刊ボディビルディング1972年4月号

Recommend