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‘72全日本パワーリフティング
選手権大会を占う
デッド・リフトが勝敗の分かれ目

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月刊ボディビルディング1972年5月号
掲載日:2018.02.17
日時・・・5月28日 場所・・・東京新宿・スポーツ会館
〔因幡英昭選手〕

〔因幡英昭選手〕

形勢まったく混とん

タイトルに選手権大会を"占う”としたのは、今年に限って、実際に大会が終ってみなければ、誰がどのくらいの記録を出すか見当がつかず、まったく予想ができないからである。
昨年までは、どのクラスでは誰々はこのくらいの記録を出すであろう、という予想が立てられた。さらに、ここ数年間というものは、例外として2~3の有望な新人は出てきたが、それでもいつもの大会で上位を占めてきた常連たちをおびやかすまでにはいたらなかった。
 このことは、次代を背負うべき新人たちに気迫と努力が足りなかったともいえるし、逆に、これら強豪たちの実力が、新人の台頭をゆるさないレベルの高い安定したものだったともいえる
 しかし、今年からは3種目1回挙上方式の国際ルールが採用されることになっている。従来からあったベンチ・プレス、スクワットの2種目についても、新ルールの採用によって、おそらく5~15kgは記録が伸びると考えられる。
さらに、新しく加わったデッド・リフトについては、どのくらいの記録がでるか、これこそやってみなければわからない。しかも、このデッド・リフトは練習量の違い等もあって選手個々の力の差が非常に大きく、試合の最後に行なわれるこの種目によって、優勝が逆転するというスリリングな場面がしばしば見られることと思う。
また、予想がむずかしい理由の1つは、従来の3階級制から7階級制になったことである。誰がどのクラスに出てくるかわからないからである。選手自身が、確実に入賞を狙うには、どのクラスで出場するのが得かを考えて、体重の調節をする場合、従来の大きく分けた3階級制よりも、細分された7階級制の方がはるかに楽になってくるはずである。
以上のようなわけで、各方面から知り得た情報によって、今年の選手権大会を占ってみることにする。
〔岩岡武志選手〕

〔岩岡武志選手〕

バンタム級は因幡の独走、ライト級ミドル級は混戦

♢バンタム級
このクラスは文句なく因幡(東京)の独走と思われる。ベンチ・プレスがいくらか弱いが、スクワット200kg、デッド・リフト220kgを練習中コンスタントに出しており、トータルでは世界的な530kg以上をマークしているのだから、これを破る選手はちょっと見当らない。
つづいて大内(東京)あたりだろうがトータルで480~490kgがせいいっばい。とても因幡には及ばない。

♢フェザー級
このクラスは今野(東京)照井(東京)長谷川(東京)あたりの争いになると思われるが、このあとで述べるライト級からこのクラスに転向する選手がいれば、優勝をさらわれるのではないか。いずれにしても実力は伯仲しており。
トータル500kgが優勝争いの分岐点になると思われる。

♢ライト級
このクラスは、昨年までの軽量級で上位を占めていた、伊集院(大阪)広瀬(東京)花井(東京)富永(神奈川)小笠原(東京)関(東京)といったベテランがひしめいており、おそらく優勝はこのなかから出るものと思われる。いまあげた選手は昨年までの2種目のベスト記録で17kgの差しかなく、今年から新しく加わったデッド・リフトの強いものが優勝候補に浮び上ってくる。おそらくトータルで550~570kgが優勝ラインと思われる。

♢ミドル級
昨年までの中量級の強豪たちが、ほとんどこのクラスで出場するものと思われる。
 近内(東京)がアフリカに出張中で出場できないので、岩岡(東京)市丸(福岡)出川(神奈川)の3つどもえになることはまちがいない。そして、デッド・リフト240~250kgくらいを出し、トータルで630?640kgくらいが優勝ラインと思われる。
聞くところによると、昨年中量級で優勝した岩岡は、すでにベンチ・プレス160kg、スクワット240~250kg、デッド・リフト220~230kg、トータル630~640kgを練習中に出しており優勝候補のナンバーワンと思われるが体重の関係で、あるいはライト・へビー級にまわるかも知れない。

♢ライト・ヘビー
いま述べた岩岡がこのクラスにまわれば優勝候補の筆頭であるが、そのほか上位に入ると思われる選手は後藤(東京)加古川(東京)吉田(京都)峰(東京)吉川(神奈川)磯村(東京)らがあげられる。この中では、デッド・リフトに強い後藤が1歩リードしているようである。
〔伊集院明也選手〕

〔伊集院明也選手〕

♢ミドル・ヘビー級
 このクラスは昨年の重量級から足立(福?)井上(東京)桜井(神奈川)鈴木(神奈川)が出ると思われるが、この中では進境いちじるしい井上が注目される。井上は最近の練習でベンチ・プレス160kg、スクワット235kg、デッド・リフト260kg、トータル655kgをマークしており、しかも、まだまだ伸びる可能性を秘めている。おそらく全日本選手権大会では670kgぐらいを出し、全クラスを通じての日本最高記録さえ期待できる。

♢へビー級
このクラスは宮本(東京)大野(福島)の2人のベテランによって優勝が争そわれそうである。ただ、最も重いクラスの割には記録的にそう抜きんでた選手がいないので、デッド・リフトの強い新人でも現われれば、あるいは番狂わせということも考えられる。
種目別の記録では、ベンチ・プレスで史上初の200kgの大台をマークすることができるかどうか興味のあるところである。スクワットは岩岡、宮本らによって250kgの壁が破られそうである。デッド・リフトは井上が270kgをマークするものと思われるが、歴史の浅い種目だけに300kgの大台に乗るのもそう遠くはあるまい。
 なんといっても、新ルールによる第1回の大会だけに、日本のレベルが果して世界に通用するかどうかも興味深い。(F・S)
〔宮本彰選手〕

〔宮本彰選手〕

月刊ボディビルディング1972年5月号

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