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ボディビルの基本 【その10】 前腕と頸の運動

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月刊ボディビルディング1972年7月号
掲載日:2018.04.24
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竹内威(NE協会指導部長'59ミスター日本)
 全身が調和よく発達している体は、単に体形的な逞しさだけでなく、男の体の機能的な逞しさと美しさをも同時に感じさせる。
 いかに部分的に強度な発達をしていても、それが全体に調和を欠いた発達では、かえって逞しさも美しさも損なわれてしまう。
 多くの場合、トレーニングの成果が高まり、ボディビルダーとしての体形が備わってくると、鍛練する部位も広く、かつ細部にわたるようになる。また、そのように意図して行う必要もでてくる。
 しかし、中にはトレーニングの重点を比較的に見ばえのする部分におき、前腕とか頸の強化を軽視している人も見うけられる。しかし、全身の調和を重んじるならば、ときには前腕と頸の強化種目を行うことも必要である。

前腕の運動

 前腕には、手首の屈伸および回転、手指の屈伸、肘の屈折等に作用する多数の筋肉がある。トレーニングに際しては、手首と握力を強化する運動によって、これらの筋肉の発達を促すことができる。
 なお、前腕を細分した場合のそれぞれの箇所に有効な運動は、次に説明する運動種目等を試みることによって容易にわかる。したがって、これらの種目の中から、各人に必要と思われる運動種目を選択して行うようにすればよい。

○リスト・カール

 バーベルをアンダー・グリップで胸幅くらいの間隔で持ち、両ももを平行にしてベンチに腰かける。手首から先が膝の前に出るようにして、左右の前腕部をそれぞれのももの上におく。
 運動方法は、前腕を両ももの上に固定したままで、手首だけを使ってのカールを可動範囲いっぱいに行う。この場合、手首を下方にそらしたときに、手のひらを伸ばして、バーベルを指に掛けるようにしてもよい。
また、ベンチに腰をかけずに、床に両膝をついて、ベンチの上に前腕部を固定して行なってもよい。

○リバース・リスト・カール

 バーベルをオーバー・グリップで持ち、リスト・カールと同様な姿勢をとり、手の甲を上にして、手首だけの上下屈伸運動を行う。

○ストレート・アーム・リスト・カール

 アンダー・グリップでバーベルを持ち、リスト・カールと同じようにベンチに腰をかける。両腕を伸ばした状態(ストレート・アーム)で手首のやや上の部分を両膝の上に固定して、手首だけのカールを行う。

○スタンディング・バーベル・リスト・カール

 まず、バーベルをオーバー・グリップで握って立ち、上体をやや前傾させ大腿部にシャフトがふれないようにぶら下げる。その状態で腕を下へ伸ばしたまま、手首だけを使ってバーベルを内側へ巻きあげる。(写真参照)
〔スタンデング・バーベル・リスト・カール〕

〔スタンデング・バーベル・リスト・カール〕

○スタンディング・ダンベル・リスト・カール

 左右の手にそれぞれダンベルを持って立ち、体の横で、脚にダンベルがふれないようにして、手のひらを内側に向けてぶら下げる。腕を伸ばしたままの状態で、手首だけを使って左右のダンベルをそれぞれ内側へ巻き上げる。(写真参照)
〔スタンディング・ダンベル・リスト・カール〕

〔スタンディング・ダンベル・リスト・カール〕

○スタンディング・ダンベル・リバース・リスト・カール

 いま述べたスタンディング・ダンベル・リスト・カールと同じかまえからダンベルを外側に手の甲を返すように手首だけで上げる。腕は伸ばしたままダンベルが傾かないように留意して行う。(写真参照)
〔スタンディング・ダンベル・リバース・リスト・カール〕

〔スタンディング・ダンベル・リバース・リスト・カール〕

○リバレッジ・エクササイズ(リスト・ツィスティング)

 ダンベル・シャフトの片方の端にだけプレートをセットし(リバレッジ・バー)、もう一方の端を握る。リスト・カールと同様に大腿部の上に前腕を固定し、左から右、右から左へと手首の回転運動を行う。この場合、片方ずつ行うことはいうまでもない。(写真参照)
〔リバレッジ・エクササイズ〕

〔リバレッジ・エクササイズ〕

○フロント・レイズ

 立った姿勢で、リバレッジ・バーを前方に向けて握る。腕は伸ばしたままで、手首だけを使ってリバレッジ・バーの先端を上下させる。(写真参照)
〔フロント・レイズ〕

〔フロント・レイズ〕

○バック・レイズ

 フロント・レイズとは逆に、リバレッジ・バーを小指の方へ重量がかかるように後ろへ向けて握る。ダンベルを体の横に保持して先端を上下させる。腕は下方に伸ばしたまま、手首だけで行う。

○ピンチ・グリッピング・フラット・エッジ・プレイツ

 2枚の同じ大きさのプレートを床に立て、それぞれ平らな面を外側にして合わせる。上体をかがめた姿勢で、合わせた2枚のプレートを片手の指でつまみ、床から膝の高さまでの上下運動を行う。
 1セットの反復回数は5〜6回ぐらいが適当。落としたときに足に当らないように配慮して行う。(写真参照)
ピンチ・グリッピング・フラット・エッジ・プレイツ

ピンチ・グリッピング・フラット・エッジ・プレイツ

スーパイン・ネック・レイズ 以上が前腕のための強化種目であるが、これらの運動種目は、ピンチ・グリッピング・フラット・エッジ・プレイツを除いて、1セットの反復回数は12〜20回くらいの多回数で行うほうがよい。 ここにあげた運動種目の他では、リバース・カールとヘイ・レピティション(1セット20回くらい)によるベント・アーム・プルオーバーが有効である。また、ハンド・グリッパーやスナッパー等の器具を用いて行う運動も効果的である。

スーパイン・ネック・レイズ 以上が前腕のための強化種目であるが、これらの運動種目は、ピンチ・グリッピング・フラット・エッジ・プレイツを除いて、1セットの反復回数は12〜20回くらいの多回数で行うほうがよい。 ここにあげた運動種目の他では、リバース・カールとヘイ・レピティション(1セット20回くらい)によるベント・アーム・プルオーバーが有効である。また、ハンド・グリッパーやスナッパー等の器具を用いて行う運動も効果的である。

頸の運動

 頸には頭部を動かす種々の筋肉がある。僧帽筋の上部も後頭隆起より起こっているが、僧帽筋の運動だけでは頸のサイズを増加するのには不充分である。
 日本のビルダーは外国のビルダーに比較して、平均して頸が細いように思われる。安定した逞しさを得るためには、日常のトレーニング・スケジュールの中に、次にあげるような頸のための運動種目を組入れる必要がある。

○スーパイン・ネック・レイズ

 頸から上をベンチの端から出して仰臥する。額にダンベルかプレートをのせて両手でおさえ、頭だけの上下運動を行う。この場合、額を傷つけないようにタオルを当てて行う。頸の前と横の部分を強化する。(写真参照)

○プローン・ネック・レイズ

 頸から上をベンチの端から出るようにして、うつ伏せに寝る。後頭部にプレートをのせて、頭だけの上下運動を行う。頸の後ろの部分を強化するのに効果がある。

○マニュアル・レジスタンス・エクササイズ(シーテット・リア)

 ベンチに腰をかけ、トレーニング・パートナーに後頭部を手で押してもらいながら、頭だけの前後上下運動を行う。このとき、トレーニング・パートナーは、運動を行うものの頭の動きが損なわれないよう、かつ、充分な抵抗が頸に与えられるように加減しながら押す。この運動は、頸の後ろの部分を強化する。(写真参照)
〔シーテット・リア〕

〔シーテット・リア〕

○ライイング・フロント

 頸から上をベンチの端から出して仰臥し、パートナーにアゴを押してもらいながら頭の上下運動を行う。パートナーはマニュアル・レジスタンス・エクササイズのときと同様に、加減しながら押し、もう一方の手で、練習者の腹部をおさえて、運動がしやすいように協力する。頸の前と横の部分に効果がある。(写真参照)
〔ライイング・フロント〕

〔ライイング・フロント〕

○ライイング・バック

 頸から上をべンチの端から出して、うつ伏せに寝る。後頭部をパートナーに押してもらいながら、頭の上下運動を行う。パートナーは、もう一方の手で練習者の体をおさえて運動が行いやすいようにする。頸の後の部分に有効である。(写真参照)
〔ライイング・バック〕

〔ライイング・バック〕

○ライイング・サイド

 肩から上をベンチの端からのり出して横向きに寝る。下になった方の手を床について体を支える。この状態で、パートナーに頭の横を押してもらいながら、頭の左右上下運動を行う。パートナーは練習者の腰のあたりをおさえて、運動がしやすいように協力する。
 この運動は、左右、体の向きを変えて同回数ずつ行うようにする。頸の横の部分に有効。(写真参照)
〔ライイング・サイド〕

〔ライイング・サイド〕

○ネック・ツイスティング

 まず、ダンベルにタオルの一方の先端を結びつける。次に、ダンベルから30〜40cmの間隔をもたせて、タオルを横(左右どちら側からでもよい)から頭にかける。頭にタオルをかけたならダンベルを結びつけてない側を握って頭の横でおさえる。つまり、左側からタオルをかけた場合なら、頭の右側でおさえる。
 運動方法は、両膝をいくぶんまげ、上体を前方へ90度近くまで倒した姿勢でダンベルを吊り上げ、頸を軸にして頭部を左右にひねる。この運動も左右両方の側から同じ回数を行うのであるが、左右の筋力に差がある場合は、弱い方の側に回数を合わせる。頸の後ろと横の部分を強靭にするのに有効である。(写真参照)
〔ネック・ツイスティング〕

〔ネック・ツイスティング〕

○レスラー・ブリッジ

 マットに仰臥し、両膝を立てる。両足を肩幅くらいに開いて殿部の近くに位置させる。頭と両足で体重を支えながら体を上方にそらし上げる。つまり体で橋(ブリッジ)をつくる。
 ブリッジの状態になったならば、両足で調子をとりながら、後頭部から額の方へ体重が移動するように、徐々にそらしていく。慣れないうちは、両手をマットについて補助しながら行うとよい。
 後頭部で体重を支える状態では頸の後ろの部分、額で支える状態では頸の前と横の部分に効く。

○フロント・ブリッジ

 うつ伏せになって行うブリッジである。額で体重を支えれば、頸の前と横の部分に特に効果があり、頸を深くまげて後頭部で体重を支えるようにすれば後ろの部分に効く。

 以上が、頸を強化するための運動であるが、これらの運動を行うにあたっては、決して無理な抵抗をかけないように注意しなくてはならない。無理をすると、頸の筋を痛めたり、ときには頸椎がずれることにもなりかねないから、くれぐれも慎重に行ってもらいたい。とくに、マニュアル・レジスタンス・エクササイズにおいては、トレーニング・パートナーも、この点をわきまえて、急激に強い力で押さないように留意しなければならない。
撮影協カ 平井ボディビル・センター
モデル 熊岡健夫コーチ
月刊ボディビルディング1972年7月号

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