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ビルダー教養講座 やさしいボディビル英語⑥

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月刊ボディビルディング1972年7月号
掲載日:2018.06.03
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高山勝一郎

~英語の種目名~

「やさしいボディビル英語」も今月号で半年になる。
 ずいぶん上達されたのではないかと思うが、これからもトレーニング同様たゆまず続けていただきたい。
 さて、先月号では「いい体をしていますね」という表現を中心にして「いい体」を表わす言葉を学んだ。
 この「いい体」を得るためには、もちろんtraining(トレーニング)がたいせつだが、body-buildingのトレーニング種目は、すべてといっていいほど英語である。
 英語をカタカナでおきかえて種目名にしているので、なかには何のことやらワケのわからないものもでてくる。
 シーティット・ワンアーム・トライセプス・プレス・ウイズ・パートナーズ・レジスタンスなどと長いのが出てきたら、眼を白黒させて必死に考えねばならない。
 英語にするとSeated Oe-Arm Tri-ceps Press with Partner's Resistanceである。
 英語にした方が判り易いという人もいるだろう。
 英語のほんとうの意味を知っていると、その種目の正しい意図が判断できて、トレーニングも正しくできるようになるものである。このような意味から、今月は少しトレーニング種目の英語を研究してみたいと思う。

~ボディビルはトイレから~

 スクワットという種目を知らないビルダーはいまい。
 英語でSquatである。発音はスクウオットが正しくスクワットではない。
 このSquatは、そもそもが便所用語であるから面白い。
 トイレにしゃがむことを意味するときけば、諸君はあの格好を想像して、なるほどとうなずくに違いない。
 先年、私がアメリカの婦人団体をバスにのせて奈良見物をやったとき、ある婦人、田舎道の途中で尿意をもよおし、たまらず農家の便所を借りてかけこんだものである。
 ところが、10分たてど20分たてど出てこない。心配になって外から「どうした?」とたずねたら、中から声あり「どうしても立てないの。日本の便所はなぜ腰かけ式でないの?」
 あの状態がまさにsquatであったといま思い出して苦笑した次第。
 ただし、ボディビルのsquatで立ちあがれないのでは困る。しゃがみっぱなしでは脚を鍛えることはできないのである。
 フラッシングというのがある。
Flushing すなわち、血液がトレーニングで一定筋肉群に流れこむ状態をいう。これは、もともと水がどっと流れ出るさまをいい、flush-toilet(フラッシュ・トイレット)といえば水洗便所のことである。
 Flushing Course(フラッシング・コース)とかFlushing System(フラッシング・システム)とかは、その原理を応用したやり方で、筋肉肥大に欠かせないものである。

~立ったり座ったり~

 Standing は立ったままで……という stand(スタンド…立つ)の現在分詞であることはごぞんじのとおり。
 standing press(スタンディング・プレス)は、プレスを立ったまま行なうことで肩の運動である。
 press(プレス)は圧するとか押すという動作をあらわすが、ボディビルでは押し上げであり、挙上である。
 イキなところではpress a kiss(プレス ア キス)が接吻することであり、press drink upon her(プレス ドリンク アポン ハー)といえば、彼女に酒を無理にのませることである
 (座ったり立ったり)
したがって、このpressをベンチの上にねて行なえばbench press(ベンチ・プレス)となる。
 ベンチに座ってやる種目も多いが、このときは頭に seated(シーティット)がたいていつくことになる。
 seated press は standing のかわりにべンチに座って行なうプレスだし、前述の seated one-arm triceps press も座ったまま、片手ずつ行なう上腕三頭筋の運動である。
 これに with partner's resistance(ウイズ パートナーズ レジスタンス)とつけば、パートナーがいてタオルか何かを持たせて、これをひっぱり resistance(抵抗)を与えるやり方をいう。
 座るは sit (シット)だから seated のかわりに sitting(シッティング)を用いてもよさそうなものだが、やはり腰かけるという意味から seated を使う方が妥当なのである。
 (筆者は政府公認通訳、科学技術翻訳士、株式会社国際交流サービス社長)
月刊ボディビルディング1972年7月号

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