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~~うなぎの蒲焼~~

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月刊ボディビルディング1972年8月号
掲載日:2018.03.12
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野沢 秀雄

<読者の質問に答えて>

 地方の知らないかたがたから、思いがけないお便りや、ご意見をちょうだいすることがあるが、筆者としてこれほどうれしいことはない。
 その中の一通に「ビタミンについてあまり心配しなくてもよい、と書いてあるが、本当にそうなのか。最近はビタミンEのように注目されているものがあるではないか」という質問があった。
 詳しく書けば長くなるが、決してビタミンが不要だというのではなく、体を維持・発達させるのにやはり必要であることにまちがいない。ただ、次の3点だけを申し上げておこう。
(1) ビタミンは必要であるが、ビタミンだけでは十分でない。炭水化物やたんぱく質・脂肪をおろそかにしてビタミンだけを重視するのはまちがい。
(2) バランスよく食事するなら、必要なビタミンは自然にとれる。ほとんどのビタミンは、とりすぎても体外に排出されてしまう。
(3) ホルモン料理と同じで、ビタミン剤を飲んだから効くんだ、という暗示にかかりやすい。
 以上のように、ビタミン、とくにビタミン剤はあくまでも「補助手段」と考えておいたほうがよい。

<土用のうなぎの日>

 7月下旬の暑さのまっさかり、土用のうしの日に、うなぎの蒲焼を食べる風習が続いている。うなぎには油がタップリのっており、“夏負け”を防ぐのに具合がいいと説明されているが、実は、これは、商売上手な江戸時代のうなぎ屋があみだしたアイデア商法。
 当時、あちこちの池でうなぎを養殖することが流行していた。ところが、夏になると水温が上がって池の中の微生物が異常繁殖するため、うなぎは息苦しくなりバタバタと死んでいく。
 これに困ったうなぎ屋さんが、チエをもらいに泣きついた先が、いまNHKテレビでおなじみの平賀源内先生。PR上手な源内先生、これでいこうと、うなぎの日の迷信をつくりあげた。
 昨年、紫のフトン・ブームをつくったフトン屋さんが、この源内先生を手本にしたとかしないとか……。

<スタミナの秘密>

 もちろん、うなぎには油が多く、さばやあじに比べて5倍も多い。だからカロリーが高くスタミナがつく。そのうえ、ビタミンAの多いことではナンバー・ワンといっていいだろう。
 やつめうなぎの一切れ(約50g)には12500IUという多量のビタミンAがあり、タマゴの黄味1個(16g)の40倍、にんじん1本(300g)の5倍にも相当する。このため、昔から夜盲症の治療法として伝えられている。
 このビタミンAは、過剰にとっても肝臓にストックされる数少ないビタミンの1つである。

<関西ではマムシ>

 どういうわけか、大阪や京都ではうなぎの蒲焼を“マムシ”という。
 あるお宅に伺ってちょうどお昼になった。「マムシおいしいよって、ぜひ食べなはれ」――ギョギョギョ、そんなゲテ物食いじゃないから、とへきえきしていたら、なんだ、ふつうのうな重らしい。ホッと安心したものの、そういわれてみればみるほどマムシに似ていて気持が悪い。以来、あまりうまいと思わなくなったから不思議なものだ
 さてこのうなぎ、胴をさいて広げるには相当な技術がいる。小骨を抜いて串に刺すのもむずかしい。というわけで、私自身もうなぎばかりは料理したことがない。
 きくところによると“たれ”が極秘で、店ごとに秘伝として代々受けつがれているらしい。砂糖としょうゆで風味を高め、糖質でカロリーをアップさせている点、なかなか合理的といえよう。
 うなぎ料理のメニュー1例とカロリー計算は次のとおり。
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月刊ボディビルディング1972年8月号

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