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やさしいボディビル英語⑦

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月刊ボディビルディング1972年8月号
掲載日:2018.06.04
高山勝一郎
記事画像1

~~~スクワットいろいろ~~~

 先月号でsquatやpress等の基本的な種目英語のもつ意味について漫談風に述べてみた。
 squat にもいろいろある。今回はもう少しつっこんでみよう。
 先ず full squat(フル・スクワット)。これはスクワットのフル運動である。
 full(フル)は、完全のとか、いっぱいのとかいう意味である。
 full speed (フル・スピード)は全速力だし、full marks(フル・マークス)は満点であり、full age(フル・エイジ)といえば成年である。
 full squat はあまりやりすぎると、buttocks(パトックス)(殿部)が出て恰好が悪くなるといわれている。
 deep knee bend(ディープ・ニー・ベンド)も同じこと。deep(深く)knee(ひざ)をbend(曲げる)運動ということだから、full squat と同じ種目を指している。
 これを半分ぐらいの動作でやると、half squat(ハーフ・スクワット)になる。half は、もちろん半分という意味である。
 partial squat(パーシャル・スクワット)というのもある。partial は部分的なという意味だから、full でなくhalf でない squat は、みなこの部類に入ることになる。
 front squat(フロント・スクワット)は、バーベルの持ち方でつけた名前である。front は前だから、両肩の前でウェイトを支持して行うスクワットということになる。
 single leg squat(シングル・レッグ・スクワット)は、single が1本のとか、片方のという意味で、leg が脚だから、片足ずつ行う squat であることはすぐわかる。
 Hindoo squat(ヒンドゥ・スクワット)などと変わった名もある。
 Hindoo はインド人のという意味だが、インド人にあんな恰好をする習慣があるのかどうかわからない。
 Hindoo とか Hindu と書くが、Hindo と書くのは間違い。

~~~前後左右~~~

 front(フロント)は前、back(バック)はうしろ、side(サイド)は横とか、側とかいう意味だということは誰でも知っている。
 press(プレス)ひとつとっても、front press、back press、side pressとくっつけて、どんなプレス運動かはすぐわかる。
 raise(レイズ)をくっつければ、front raise、side raise 等という種目の名前になる。
 raise は、上げるとか起こすとかいう意味だから、腕を前や横に上げる肩の運動だということがわかる。腕は後ろへは上がらないから back raise などという種目がないのは当りまえである。
 calf raise(カーフ・レイズ)はふくらはぎの運動、leg raise(レッグ・レイズ)は脚を上げるのだから、腹筋の運動というふうに、チャンと理屈にあってくるから面白い。
 lateral raise(ラテラル・レイズ)はどうだろうか。これは胸の運動だがlateral は side と違って、同じ横でも、横の方へ伸びたとか、側面でという意味があり、side より範囲がやや広いのである。
 だから、横へ伸ばした手を胸の上にもってくる……すなわちラテラル・レイズなのである。

~~~お説教はやめて~~~

 さきほど Hindoo squat の話が出たが、同じような人名に関係のある種目に preacher's bench curl(プリーチャーズ・ベンチ・カール)というのがある。
 preacher(プリーチャー)とは、牧師のように人々の前で説教をする人をいい、たいてい1本足の小机に聖書などをおいて話をした。
 それが preacher's bench で、この上でカールを行うから preacher's bench curl と名づけたのだが、後年ラリー・スコットが好んでこれを行なったことから Scott curl(スコット・カール)とよばれるようになった。
 ついでに、説教をするという動詞はpreach(プリーチ)で easier to preach than to practice(イージア トゥ プリーチ ザン トゥ プラクティス)といえば、実際に行うより説教することの方が易しい……すなわち“言うは易く行うは難し”ということわざになるのである。
(筆者は政府公認通訳、科学技術翻訳士、株式会社国際交流サービス社長)
月刊ボディビルディング1972年8月号

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