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私の食事1週間 1972年9月号

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月刊ボディビルディング1972年9月号
掲載日:2018.06.09
<食事診断>野沢秀雄

<水上選手の食事診断>
総合点 83点

 熱心なビルダーによく見られる食事内容ですが、いくつかの点に無理があります。
 ズバリそれは、炭水化物の少ないことに原因があります。1日に1食だけは、ごはんかめん類かスパゲティーが入っていますが、これだけではカロリーが不足します。
 実際に5月29日の場合を計算すると総カロリー2777、純タンパク質185g(体重1kg当り2.4g)、炭水化物48%となり、メニューの豪華さの割には実質のない内容であることがわかります。すなわち、カロリーとタンパク質が少し不足しています。
 また、その分だけスキムミルクや豆腐、栄養剤にまわった感じですが、食費のかかる割には、タンパク質の量はふえません。むしろ、米やパンにもタンパク質が含まれていて、かつ、運動のエネルギーになることを理解してください。そして、体の発達にもプラスになります。
 なお、トレーニングを休む日曜日はもう少し軽い食事ですませ、そのかわり、6月2日のような、すし30個のみという、栄養の少ない場合には果物やジュースの配慮を忘れないように。
 間食はよいことです。1日3食だけではとうてい不足します。また、タマゴを目玉焼にしていることは、油を使う点で有利です。アジやカツオも網で焼くより、フライパンでオイル焼きにしたり、油で揚げたりするとなお有利です。生野菜、果物の量は申し分ありません。
'71ミスター東京優勝'71ミスター日本6位 水上彪

'71ミスター東京優勝'71ミスター日本6位 水上彪

<吉村選手の食事診断>
総合点 95点

 実によくバランスのとれた食事内容です。総カロリー約6000、純タンパク質210g(体重1kg当り約2.7g)、炭水化物65%は理想的です。
 とくに、朝食が充実している点に感心しました。にぎりめしの効用は、ボリュームが小さくなって、その分だけほかの栄養物が食べられる点にあります。野菜を油いためにしていますが、このためカロリーがアップして、トレーニングのエネルギーの消耗を助けます。
 朝夕2時間ずつの秒速モーレツトレーニングということですが、トレーニングに使うカロリーほど個人差のでるものはなく、ダラダラやっている場合は1時間に約200カロリー、激しく休まずに行うと800カロリーも消耗されます。普通のトレーニングでは1時間に500カロリーを見こめば充分です。
 1日に行うトレーニングの量と食事の量のバランスをとることが大切です。トレーニングをしない日に、いつもと同じ食事をすると、過剰なカロリーの分だけ太ってきます。
 ところで1年中同じ内容はよくありません。なぜなら必要なアミノ酸・ビタミン・無機物が片寄るからです。また、肉ばかりでなく魚や缶詰・ハム・ソーセージなどを食べるようにすればひとりでに変化が出てきます。
 なお、大豆と牛乳のジュースは素晴らしいアイデアです。全国のビルダーの参考になります。
'69ミスター日本優勝 吉村太一

'69ミスター日本優勝 吉村太一

<酒井選手の食事診断>
総合点 88点

 食事内容はなかなか好感の持てるもので、総カロリー約4000、純タンパク質190g、炭水化物58%という数字は見事なバランスを示している。
 とりわけ、ごはん・麺類・パンの炭水化物グループを、多くも少なくもない量ずつ食べており、無理のない食生活だといえます。
 ただし、野菜、とくに生野菜を3倍くらい多く食べ、デフィニションの維持をはかること。および、なるべく献立に種類を持たせ、毎日いろいろのものを食べるようにしたい。
 また、トレーニングのない日は、食べる量を2割~3割落とさないと、余分なカロリーが脂肪に変わり、太ってくる可能性が大きい。間食でそれを調整しているのはいいが、普通の食事もやや軽くして、その分をトレーニングのある日にまわすとよいでしょう。
 表の中に、ピーナッツバターや、きなこドリンクがあるが、なかなか良い健康食品で、これらは良質のタンパク源といえる。
 魚と果物が入っていないが、これらのものをメニューに入れるなら、もっとバラエティーに富んだ変化が出てきます。モヤシや納豆もとり入れるとなおよいでしょう。
 いずれにしろ、一般の人に近い食事で、体を発達維持させている点は高く評価できます。
'71ミスター京都2位 酒井敏夫

'71ミスター京都2位 酒井敏夫

<宇戸選手の食事診断>
総合点 79点

 宇戸選手は、バルク型の代表選手といわれており、デフィニションをつけるのに苦労されていると思いますが、その努力がよくあらわれている食事内容です。
 総カロリー2200、純タンパク質200g、炭水化物24%と数字の上ではっきりそれを示すことができます。
 だが待ってください。大きな誤りが3つあります。
 第1の誤りは、タンパク質を重視するあまり、米飯やパン・うどんなどのエネルギー源が不足していること。このメニューでは、きっとバテやすく、体がまいってしまいます。
 多くのビルダーがまちがいやすい点は、バルク型のビルダーは筋肉の発達が不足している。だから食事にもタンパク質がまだまだ必要だと、やたらにとりすぎることです。
 はっきり申しましょう。バルク型のビルダーでも、筋肉は充分に発達しているのです。パワーのあること、さわって硬いことはその証拠です。ただ、表面に脂肪の層がおおってしまって、外面からクッキリ見えないだけです。だから必要以上のタンパク質をとる必要はいっさいありません。
 第2の誤りは、野菜の少ないことです。新鮮な生野菜は、ビタミンやミネラルを自然な割合で含んでいるうえ、体内の反応を促進する酵素が生きています。
 これらの点が、ビタミンの錠剤と比べて数段すぐれているのに、宇戸選手は無視しています。「野菜を食べると太る」などという迷信はすぐに捨て、肉やさしみを半分に減らして、生野菜を食べることです。生野菜や海藻こそデフィニションをつける最も重要なポイントです。本誌46年7月号の「スタミナ・メニュー欄」をぜひ見てください。
 第3の誤りは、トレーニングをする日と、休みの日の食事内容に差のないことです。食べ物ほど習慣に影響されるものはありません。トレーニングを休んでも、つい同じ量だけ食べてしまいます。そして、意外なくらいに早く余分なカロリーは体内に吸着されるのです。とくに、バルク型の選手の場合は、日ごろからこういった細かい調整をお忘れなく。
'71ミスター日本7位 宇戸信一

'71ミスター日本7位 宇戸信一

<岩切選手の食事診断>
総合点 83点

 私と同じ神奈川県なので岩切選手を知っていますが、実に切れのよいデフィニションと、色の黒さが印象に残るビルダーです。
 その食事内容が、ごはんを1日に10杯も食べ、副食が普通の人と同じか、それ以下なので驚いたビルダーが多いと思います。
 とくに、6月12日の夕食は、レタス5枚だけでごはんを3杯食べていたり、6月14日の昼食は、生野菜1皿でごはん2杯食べていたり、筋肉の発達を無視したような食事にもかかわらず、総合点が高い理由は、1日をトータルすると、総カロリー約4000、純タンパク質140g、炭水化物75%と、それほど貧弱でもない数字が出るためです。
 この秘密は「米」にあるのです。すなわち、米のタンパク質が役に立っているほか、体内で炭水化物からタンパク質への組み立てが行われていることを示しています。実際われわれの体はよくできたもので、タンパク質が必要な場合は、炭水化物や脂肪からタンパク質が合成されます。
 岩切選手の場合、これだけ多くの炭水化物をとっても、毎日の仕事と運動ですっかり消耗してしまうので、体に余分な脂肪が着かないのだと思います。また、わかめが大切にされている点を注目したい。
 なお、トレーニングが休みの日は、食事を3/4くらいに落とすこと。また、もう少し生野菜とタンパク質を強化すれば、さらに迫力が出てくるでしょう。それには納豆・もやし・さばの缶詰などをおすすめしたい。
 食事の量が多いなら、間食や夜食にとるようにすればいいでしょう。
'71ミスター神奈川優勝 岩切正名

'71ミスター神奈川優勝 岩切正名

月刊ボディビルディング1972年9月号

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