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三職場訪問三
手づくりのボディビル・ジム

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月刊ボディビルディング1972年10月号
掲載日:2018.03.08
明治製菓川崎工場
ボディビル・クラブ
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<川崎はヤングの街>

東京駅から国電で20分。多摩川を越えるともう川崎市だ。日本最大の工業都市、全国から若者たちが集まって若いエネルギーが街にあふれている。
電車が川崎駅につくちょっと前に、目指す明治製菓川崎工場の建物が見えていた。
正門に案内をこうと、ニコニコしながら白い作業服を着た野沢さんがあらわれた。
野沢さんは、本誌の栄養シリーズで読者の皆さんとはすでにおなじみだが本職は、ここ明治製菓食品研究所の職員である。そしてまた、京都大学の学生時代に始めたボディビルを職場に持ち込み、明治製菓ボディビル・クラブの実質的なコーチでもある。

<みんな自分でつくっちゃえ>

早速案内してもらうことにした。
練習場は、工場のいちばん奥の柔道場の中にあった。さして広くはないが器具はピカピカと手入がよくゆき届いている。建物の前には土俵もこさえてある。工場従業員1100名。体育活動は盛んで陸上競技や相撲部から国体選手が何人も出ているという。
ボディビル・クラブは、昭和43年、野沢さんが大阪工場からここに転勤してきてからできたのだそうだが「会社も健康と体力づくりの必要性をよく理解してくれているので、同好会の申請をしても、すぐOKになり、あまり苦労なしでクラブづくりができました」と野沢さんは語っていた。
このクラブの自慢は、ここにある器具のほとんどが、手づくりの器具だということだ。ベンチ台、腹筋台、バー・ディップス、鉄棒、それに2.5kgと5kgのプレートが何枚も、これらがすべて手づくりだという。そのうえ、いまシャフトの製作も考えているとか。鏡や時計なども知らないうちに集まってしまったということだ。
野沢さんは「どれも工務課の人たちが、廃物の材料でこさえたものばかりです。だから愛着がこもっていて、みんな熱心なんですよ」と、誇らしげに語っていた。
もちろん、強度もちゃんと計算してあり、重さも精密に調整してあり、市販のものとまったく変わらない。

<みんなにどう広げていくか>

現在のホープは、工務課の木村君、菓子検査課の森君で、それに薬品包装課の神蔵君、菓子の鈴木君、薬品の小曾根君、食研の槍田君たちが続いている。そのほかにベテランの玉村、水野谷両君がいる。
木村君は23才。工務課の所属で、ここにある多くの器具をつくった青年だ。顔や体つきがどこかフランク・ゼーンに似ている。木村君の体を見て入会してきた人も多いという。良い体は何を言わなくても良い宣伝になる。
また森君は、先日社内報に「ボディビルの良さは、必ず報われるところにある。青年時代に体をきたえ、体力をつくっておけばあとになってもへこたれない――」このようなことを書いたら、すぐ採用され、あとで冷や汗をかいたと笑っていた。
野沢さんは大阪工場時代にもボディビル・クラブをつくった経験がある。
そして、「多くの人たちは一応普通並みの体をもっていて、とくに筋肉を強化しようとは思わないようです。良い体になることはわかっていても、バーベルは重いし時間もかかる。むしろ逞しい体をつくるというより、健康のためと割り切った方が長続きするのかも知れません。
良い体をつくったらどんないいことがあるのか、そのあたりの方策ができていないので、つまらないと感じてしまう。コンテストに出ることも1つの励みになりますがそのあともう少し社会的に何か認められることがあっていいのじゃあないかと思います。たとえば、ミスター〇〇が映画やTV・CMに出たり、化粧品会社のモデルになったりするように……。また、コーチとして高給が保証されたり、健康食品の宣伝販売員になったりするように。
自分の体を鍛えあげるのに成功した人は、どこの分野に出ても必ず成功しますよ。いい加減な気持ではやれないことですから。そしてなるべくボディビルに関連した健康な仕事に従事してほしいですね」と述懐されていた。
いままでにこの道場でトレーニングした人は100人を越え、そのうち、一定期間バーベルと取り組んだ人は40人くらい。これは、男子従業員の約10%になるという。
会費の徴収や練習の出席についてはいっさい強制せず、健康になりたいという人が、任意に集まり自由に練習するという雰囲気が、現代の若者にはうけているようだ。

× × ×
いつのまにかタやみがせまり、工場のネオンもつき出した。
ミルクチョコレートやカール、それに医薬品などが我々の仲間たちの手でつくられている。社長さんは常に「健康をつくり出している会社だ」と語っている明治製菓。会社の発展とボディビルの仲間たちの成功を祈りつつ帰途についた。
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月刊ボディビルディング1972年10月号

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