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私の食事1週間 1972年11月号

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月刊ボディビルディング1972年11月号
掲載日:2018.02.05
<食事診断> 野沢秀雄

'71ミスター三重2位 金森隆機

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<金森選手の食事診断>
総合点 78点
 金森選手は筋肉のデフィニションがきれいなビルダーですが、やや線が細く、いまひとつ迫力に欠ける感じがします。そして、食事の内容にそれがよく表われています。

 すなわち、総カロリー3900、純タンパク質120g(体重1kg当り1.7g)、炭水化物79%、脂肪80%という数字は普通の人なら申し分ないのですが、激しいトレーニングの続くビルダーには大きく不足します。

 淡白な、あっさりした食事のビルダーは体つきもサラリとしているし、重厚な食事のビルダーは、重い迫力のある体つきになるようです。完全にそうだといいきることは無理ですが、一応の関係はあるようなので、自分の体の欠点をなおすために食事方法を変えてみるのはいいことだと思います。

 さて金森選手の場合、1日に140gの純タンパク質が必要です。これは体重1kg当り2gを標準目標におくためです。

 そのためには、卵・牛乳・納豆・缶詰のうち、どれか2つを加えるといいでしょう。また、脂肪をアップさせるために、油いための料理をふやしたりハムやベーコンを献立に加えることをおすすめします。

 炭水化物が多いのにデフィニションがきれいな点について、羨ましく思うビルダーが多いと思いますが、79%はやや多いので朝食・昼食はごはん1杯に減らすことができます。

 火曜日の夕食は改良の必要があります。サラダの内容にもよりますが、これでは「タンパク質が足りないよ」と谷啓にいわれそう。

 新鮮なさざえ・タコ・イカ・トマトなどが手に入る地域は大へん恵まれていますね。同じ内容のメニューでも材料が新しいのと古いのとでは、栄養効果がまるでちがってきますから。

 梅酒ドリンクもスタミナの増強に効果があります。また、のりを欠かさず食べている点にもデフィニションの秘密があるのかも知れません。

 食事のバラエティーや価格の点については申し分ありません。

'71ミスター石川2位 森本 巌

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<森本選手の食事診断>
総合点 61点
 総カロリー約2100、純タンパク質約100g(体重1kg当り1.7g)
 普通の人とまったく同じ食事でトレーニングしている典型的な例ですが、やはりこれでは無理があります。食欲がなくて、食べようとしても食べられないのかも知れませんが、そういうときの解決方法は間食をとることです。何度にでも分けて食べると、胃袋は意外に入るものです。

 2100カロリーというと、サラリーマンでも机に向って1日中書類とにらめっこといった、軽労働の職種のカロリーにすぎません。ビルダーのトレーニングとして、もう1000カロリーくらいは上積みしないと、赤字決算ばかりで体がまいってしまいます。

 森本選手の食事で気づくことは、油分が少ないことです。料理に油を使うとカロリーはずっと増加します。豆腐を油揚げに、焼魚をフライに、卵を目玉焼に、生野菜を野菜いために変えるのです。食べる分量は同じでも、カロリーがアップし、腹もちがいいので一挙両得です。

 また、魚は2切れに、肉は200gというように、いま少し多く食べるといいでしょう。

 感心な点は朝食の充実度です。朝これだけの食事ができることが健康の秘訣と思われます。みそ汁は牛乳やジュースよりも高い栄養価をもっており、中身の具を変えるだけで変化に富んだ内容ができます。2000年の民族の知恵のおかげで……。

'72ミスター大阪2位 宮畑 豊

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<宮畑選手の食事診断>
総合点 96点
 総カロリー約4500、純タンパク質約170g(体重1kg当り2.2g)、炭水化物56%。

 宮畑選手は昼食が会社の食堂ということで、わざわざ食堂の栄養士さんの分析表を同封してくれましたが、さすがに全体の内容もよく、すぐれたものといえます。

 パン4枚とごはんどんぶり1杯とはだいたい等しいと考えていいのですがこの点もよく使いわけています。炭水化物の量はこれ以下では少ないので普通のトレーニングのときは、この線をくずさないように。

 タンパク源を、納豆・牛乳・焼肉・タマゴ・魚と好き嫌いなく広範囲からとっている点に好感を持ちます。ただ外食でこれだけの質と量を確保するには相当のお金がかかるはずです。ぜひ自分の部屋で食べられる工夫をすることです。

 缶詰食品やハム・ソーセージ・タマゴなどは、ガスやコンロがなくてもそのまま食べられるし、納豆も皿1枚あればOK。さしみなども魚屋で買うと2倍くらい多く食べられそう。もっとも、仲間で飲みながら食べる刺身や寿司ほどはおいしくないかも知れませんが……。

 宮畑選手のメニューで不足するものは野菜と果物です。外食するとどうしても不足するので、気をつけてもう少し補充するようにしたいものです。レタスなどは丸1個(約80g)食べてもいいのです。

 トレーニングの無い日に、食事内容をへらすことは、前から指摘しているとおりです。

 いずれにしろ、全体的にみてよく気の配られたよいメニューといえます。活躍を期待します。

'72ミスター大分3位 小野幸利

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<小野選手の食事診断>
総合点 91点
 なかなかよく工夫された食事です。総カロリー3600、純タンパク質190g(体重1kg当り2.7g)、炭水化物65%という数字は、ビルダーとしてよく研究されていることを示しています。

 まず麦飯。玄米と並んで栄養価が高いといわれる理由は、精製米にくらべてミネラルとビタミン類が豊富なことです。カルシウムや鉄は10倍くらい多いし、ビタミンB1も10倍前後多く含まれています。だから足の疲れにも効果があります。食事は習慣に左右されやすいので、白米を食べていた人が急に麦飯に変えると抵抗がありますが、一度やってみると意外にいいものです。

 朝食がよく充実している点、大いに結構です。朝の基本ができている人はきまって健康です。

 昼食はふつうのおかずということですが、社員食堂や外食とちがって弁当を持参する幸運に恵まれたなら、そのチャンスを絶対に生かすべきです。タンパク質の多い食品や、のり・梅干・ちりめんじゃこ・たらこなどをたっぶり詰こむことができますから。

 夕食もバラエティーに富んでいます。独身で下宿しているなら、とてもこんなふうにはいきません。カレーライスやシチューも、おそらく肉のたっぶり入った小野家特製料理だと思います。トレーニングの無い日が軽目になっていることも立派です。

 間食がやや物足りません。牛乳・チーズ・納豆など、もう少し重くするといいでしょう。野菜類ももうちょっと増やすとさらによくなります。

 特殊栄養剤を工夫していますが、これもいいことです。とくに、ハチミツを使っている点がすぐれています。ハチミツは砂糖より早く吸収され、糖尿病をおこす心配もないので、安価に手に入るならぜひおすすめしたい食品です。
月刊ボディビルディング1972年11月号

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